この検査は、被験者に分子量の異なる2種類の糖質を経口投与して、それぞれが尿中にどれくらい排出されるかによって腸管透過性を調べるものです。具体的には、ラクツロース(分子量約340)10gとマンニトール(分子量約180)5gを同時に内服し、液体クロマトグラフ質量分析などの手法により、尿中のラクツロースとマンニトールの濃度比(L/M比)を測定することで腸管透過性を評価する方法です。被験者が健常である場合には、分子量の小さいマンニトールはタイトジャンクションを通過し血管内に移行するため尿中に検出されますが、分子量の大きいラクツロースはタイトジャンクションを通過しにくいため、尿中にはそれほど検出されません。LGSのように腸管透過性が亢進している場合には、尿中でラクツロースも多く検出されるようになるため、L/M比が高くなります。
折れない心身を育む~レジリエンス医学入門~ CASE6 ボディのレジリエンスを高める方法~腸内環境(その④)
今回は、腸管壁浸漏症候群(Leaky Gut Syndrome:LGS)の診断法や治療法、予防法について詳しくみていきましょう。LGSは、概念自体が比較的新しいこともあり、同症候群の診断法はまだ確立されているとはいえませんが、以下に述べるような検査を行い、臨床症状と照らし合わせながら診断されているのが現状です。
ラクツロース・マンニトール試験
ゾヌリン検査
小麦に含まれるグルテンは、腸の粘膜細胞においてゾヌリンというタンパク質をつくります。このゾヌリンが腸管粘膜から分泌されると、腸管上皮細胞の緻密な構造であるタイトジャンクションを維持しているタンパク質が切断されてしまうことで、リーキーガットの原因となります。
ゾヌリン検査はリーキーガットの有無や重症度を判定する指標となり、血液中のゾヌリン濃度が高い場合、具体的には血中ゾヌリン濃度が40ng/㎖以上の場合は要注意、45ng/㎖以上の場合はリーキーガットである可能性が高いと判定します。
遅延型フードアレルギー検査
一般的に食べ物によるアレルギーというと、食事に含まれるアレルゲン(アレルギーの原因物質)により、じんましんや皮膚の痒み、ひどい場合には呼吸困難や血圧低下などの症状が生じることを想像されるかと思います。このように原因物質の摂取後、比較的すみやかに症状の出るアレルギーは即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)と言われ、免疫反応としてIgE抗体が関係しています。
即時型アレルギーは、アレルゲンである食物を摂取してから症状が出るまでの時間が短いため、比較的原因がわかりやすいアレルギーです。
一方で、食物を摂取してから数時間から数週間後に症状が出現する食物アレルギーが、「遅延型フードアレルギー」です。遅延型フードアレルギーには、免疫反応としてIgG抗体が関係しているといわれ、頭痛、めまい、肩こり、慢性疲労などのいわゆる不定愁訴のほか、抑うつ感などの精神的な症状など、一見アレルギーとは関係がないような多彩な症状を起こします。
遅延型フードアレルギー検査では、96種類あるいはそれ以上の食べ物についてIgG抗体を調べることができますが、ある特定の食べ物が主な原因物質である場合には、その食べ物に対しての強い陽性反応がみられるものの、そのほかの食べ物に対しては、ほとんど反応はみられません。
一方、リーキーガットが原因である場合には、特定の食べ物だけでなく、ほかの多くの食べ物に対しても陽性反応が認められることが多いのです。これは、リーキーガットのように腸管透過性が亢進すると、本来ならば血管内に入れないはずの分子量の大きいタンパク質がたくさん侵入するようになり、免疫細胞がそれらを異物と認識しアレルギー反応が起こる可能性があるからです。
ビーツ(赤カブ)を用いた簡易検査
これは日本における栄養療法のパイオニア、故・佐藤章夫先生から教えて頂いた方法です。スーパーフードとして知られるビーツ(赤カブ)に含まれる色素・ベタレイン(Betalains)は、分子量が比較的大きいため通常であれば吸収されません。 ベタレインは非常に強固な色素であるため、吸収された場合には、尿の色調がうっすらとピンク色になります。1〜1.5gの赤ビーツパウダーを100㎖の水に溶かして空腹時に飲み、2〜3時間後の尿の色を観察し、尿がピンク色をしていた場合には、本来透過するはずのないベタレインが血管内に侵入したことを意味するので、LGSの状態である可能性があります。
LGSの治療法
腸内細菌叢のバランスが崩れディスバイオーシス、あるいはその典型としての小腸内細菌異常増殖SIBOはLGSの原因となり、両者が混在している場合も少なくありません。したがって、前回詳述したSIBOに対するアプローチはLGSの治療としても重要になりますので、ご参照ください。
前述した遅延型フードアレルギー検査でLGSが疑われる場合、原因と考えられる食物を一定期間除去して経過を観察しますが、ここからはより積極的に、亢進した腸管透過性を改善させるうえで有用と考えられる方法について述べます。
胃薬として臨床の現場でもよく用いられるレバミピドには胃粘膜を保護する作用がありますが、アスピリン投与により誘発された中等度〜高度の小腸粘膜障害に対しても有効であるという報告があります。動物実験にはなりますが、人に対しても有効である可能性があります。
また、便秘薬として使われているルビプロストンが、タイトジャンクション機能を回復させるという論文があります。ルビプロストンは、腸管内の浸透圧変化を介して腸液の分泌を促進しますが、LGSが疑われ、かつ便秘がちの方は試してみる価値があるかも知れません。
さらに、ファスティングなどによるカロリー制限も、タイトジャンクション機能を改善させるという報告があります。炎症反応や腸管透過性に関与するリポ多糖類に高い親和性を持つタンパク質が、カロリー制限によって著明に抑制されることがわかっています。
乳酸菌などのプロバイオティクスは、腸内細菌叢のバランスを改善させるだけでなく、腸上皮バリア機能を強化することがわかっています。アトピー性皮膚炎の小児における胃腸症状および小腸透過性に対するプロバイオティクスの効果を検証した研究では、ラクツロース・マンニトール試験において、L/M比と湿疹の重症度との間には正の相関を認めること、プロバイオティクスによる治療後、L/M比はコントロール群に比べ有意に低くなったことが明らかにされています。
また、ラクトバチルス・ラクティスという乳酸菌に、遺伝子操作で炎症抑制性サイトカインIL-10を導入し、粘膜局所で亢進した腸管透過性を改善させるという研究も行われています。
最後に
最後に、意外に思われるかも知れませんが、歯周病菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌)は腸管粘膜の透過性を亢進させ、全身性の炎症を引き起こすことがわかっており、口腔内細菌叢を適正化することでディスバイオーシスや腸管透過性が改善する可能性があります。こうしたことから当院では、歯周病菌を抑制する効果を持つ、天然成分により作られた歯みがき剤の使用を推奨しています。
※本記事は「統合医療でがんに克つ」(株式会社クリピュア刊)にて掲載された松村浩道先生執筆の「折れない心身を育む」より許可を得た上で転載しております。
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