ナイアシン(ニコチン酸)についてPUBMEDで検索をかけると、公表されている論文は45,000を超えています。
ナイアシン(ビタミンB3)の素晴らしい健康効果 vol.2
〜寿命延長、花粉症、二日酔い、統合失調症、うつ、不眠、脂質異常症、ダイエット、アンチエイジング〜
ナイアシンの働きと健康効果
この膨大な数を見ても、どれだけナイアシンが注目を集めているかがよく理解できると思います。
1)寿命の延長
心疾患の患者さんを対象にしてナイアシンを投与した研究では、ナイアシンを5年間投与した後、15年間の長期追跡調査を行いました。ナイアシンを摂取したのは5年間だけであったにもかかわらず、ナイアシン投与群は全死因による死亡率が低いことが明らかにされました(1)。
ナイアシンは以下にご紹介するさまざまな健康効果により、寿命を延長する効果があると考えられています。
2)補酵素として酵素の働きを助ける
ナイアシンは体内ではニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)となってエネルギー産生やアミノ酸、糖質、脂質代謝に関わる活性型補酵素として働きます。
NAD(P)を補酵素としている酵素は400種類以上にもなります。人の体内の酵素の約20%がNADを必要としているのです。ですから、体内で多くの量が必要になるのです。ナイアシンが足りないとこれらの酵素が正常に働かなくなりますので、様々な不調が生じることになります。
現在アンチエイジングのためのサプリメントとしてNMN(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド)が注目を集めています。実は、NMNの前駆体はナイアシンアミドですし、ナイアシンもNMNもともにNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を作り出します。NADは様々な代謝に関わる大切な補酵素であり、これが減少すると、核の損傷やミトコンドリアの活性が低下してエネルギー生成能が低下し、老化につながると考えられています。
NMNの方が効率よくNADを作り出すと言われていますが、ナイアシンの摂取でも同じ効果が期待できるのです。
3)エネルギー代謝
補酵素の働きの中でも、特に、エネルギー産生は非常に重要です。ナイアシンはコエンザイムQ10とともに、ミトコンドリアのエネルギー産生能を高めることがわかっています。
解糖系、脂肪酸のβ酸化、TCAサイクルで水素を取り出してエネルギー産生をするための働きを持っている脱水素酵素の補酵素としてNADとFAD(ビタミンB2の活性型)が必要となります。これが水素と結合するとNADH,FADH2となって、次の電子伝達系に入ることができ、さらに効率よくATPを産生することになります。
エネルギー産生効率が良いことは、生体にとって非常に重要です。これが、健康の基礎となると考えられています。
4)血液循環の促進・血圧降下作用 高血圧治療
ナイアシンの血管拡張作用によって血液の循環を促進する働きを持っています。これは、ナイアシン活性化プロスタグランジン経路によってもたらされる反応であり、決して有害なものではありません。
また、血管を拡張させますので、血圧低下作用を発揮します。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の予後を改善することもわかっています。血流促進作用により、偏頭痛やメニエール症候群の症状を改善することも期待できます。
5)皮膚・粘膜を健全に保つ 美肌、アンチエイジング
ナイアシンは細胞の分化に関わり、皮膚や粘膜を健康に美しく保つ働きをしています。ナイアシンは細胞の新陳代謝に必要となるNADPを作り出していますので、これが不足すると皮膚炎、消化管の粘膜の炎症、潰瘍などになります。この皮膚症状がペラグラの特徴の一つであるわけです。
肌の老化の原因に紫外線があります。老化の機序としては細胞内DNAが紫外線によって異常なピリミジン二量体を形成することです。これを取り除くためにDNA修復が必要となります。ナイアシンはDNA修復に必要な酵素を活性化して、異常なピリミジン二量体の除去を促進します。
さらに、ナイアシンはコラーゲンやセラミドの合成を促進する働きがあります。肌の弾力性を保つためにナイアシンは必須です。ナイアシンにより血流を促進することは老廃物を除去して栄養を肌の細胞に届けます。ナイアシンは抗酸化物質とともに活性酸素を取り除く作用を持ちますが、これによってくすみのない若々しい肌を保つことができるのです。さらに、皮膚、粘膜の炎症を抑えたり、皮脂をコントロールする働きや菌の繁殖を抑える働きもあるため、ニキビ肌を改善する効果も期待できます。最近ではナイアシン入りの基礎化粧品も多く販売されるようになってきました。
ナイアシンは美肌、アンチエイジングのために欠かすことができないビタミンなのです。
6)性ホルモンの生成に関与
ナイアシンはエストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどの性ホルモン生成にも関わっています。ナイアシンが男性の勃起障害に効果がるということもわかっています(2)。
7)高脂血症(脂質異常症)脂質代謝に関与
ナイアシンは脂質異常症を改善して動脈硬化、心血管疾患を予防、予後の改善に関係しています。中性脂肪を下げる効果により肥満の予防にも役立ちます(3)。
【ナイアシンの脂質への効果】
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を下げる
- 中性脂肪を下げる
- 善玉コレステロール(HDLコレステロール)を上げる
ナイアシンは冠動脈疾患、脳出血、脳梗塞の発生率を下げることがわかっています(1,3)。
ナイアシンによる脂質異常症の予防効果は、プロスタグランジンを介して生じることがわかっています。代謝は肝臓で行われます。
脂質異常症の治療には現在スタチン製剤がメインに使われています。たしかにこれらの薬はとてもよく効きますが、副作用が無いわけではありません。LDLコレステロールを下げる目的であれば、ナイアシンの方がよほど安全で、効果も高く、そして安価だということになります。クリニックに通う必要もありません。現在は医療費の自己負担額が低く抑えられていますから受診費用も負担にはならないかもしれませんが、もし医療費の自己負担額が上がったら、多くの患者さんが安価で効果の高いナイアシンを選ぶようになるでしょう。
国民医療費の高騰を抑えるために様々な取り組みが行われています。医師が患者さんに自費のビタミン剤をすすめることによって処方料のような収入が得られるようになるとするならば、脂質異常症の患者さんは全員ナイアシンを飲むことになるのではないでしょうか。
日本は特殊な医療制度のために、世界の製薬業界においてずっとドル箱となっていました。最近では日本市場の力の低下から、日本はもはや魅力のある市場ではないとみなされるようになってきていますが、それでも毎年多額の薬剤費を支出しています。薬の処方は医学的な必要性からだけではなく、しばしば経済的な理由から決められていることに国民は気がつかなければいけません。
自分自身で勉強して、どのような治療を選択するのか、しっかりと考えるようにしてください。
8)解毒作用 アルコール分解に関与、二日酔い、アルコール依存症
ナイアシンには解毒作用があります。上述の脂質異常改善とも関係していますが、チトクローム450、プロスタグランジンを介してアルコールや薬を体外に排出させる働きを持っているのです。
アルコールについては、ビタミンB1と一緒にアルコールの分解にも使われています。アルコールがアルコール脱水素酵素でアセトアルデヒドになり、その後アセトアルデヒド脱水素酵素で酢酸に分解されます。この脱水素酵素の補酵素としてナイアシンが働くのです。ですから、二日酔いの予防にもナイアシンは有効です。
さらに、ナイアシンはビタミンB1とともにアルコール依存症の治療にも効果を発揮します。アルコール依存症は非常に治療が難しく、一度断酒できたとしてもまた飲酒を再開してしまう、麻薬のようなものです。効果のある薬はあまりないのですが、これをビタミンで治療できることをホッファー博士が実証したのです(4)。
アルコールだけではなく、あらゆる薬の依存症(睡眠薬など)の治療にも効果があると考えられています。依存症に苦しんでいる方はぜひナイアシンをお試しください。
9)抗酸化作用
細胞は細胞膜によって覆われています。この細胞膜は不飽和脂肪酸でできています。
活性酸素は不飽和脂肪酸を酸化させて老化を進行させたり、がんを誘発したりします。
細胞内の過酸化脂質はグルタチオンペルオキシダーゼによって水とアルコールに分解されますが、これに伴って抗酸化物質であるグルタチオンが酸化型グルタチオンとなります。ナイアシンは酸化型グルタチオンをグルタチオンに還元します。
ナイアシンの抗酸化作用により、細胞の障害が予防できるのです。
10)抗アレルギー作用
ナイアシンはヒスタミンを放出させます。アレルギー反応はヒスタミンの放出によって鼻水やかゆみが出ますので、このヒスタミンを頻繁に放出させるとアレルギー反応が出にくくなります。細胞のヒスタミンを少なくしてしまえば、症状が出ないわけです。
ぜんそく発作なども緩和されます。
ナイアシンフラッシュはまさにヒスタミンによって起きるものですから、かゆみ、肌の発赤などが症状として現れます。
11)大腸の炎症、大腸がんの予防
ナイアシン不足が腸の炎症を起こすこと、そしてナイアシンが腸の炎症を抑えることは知られていました。
けれども、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。
最近の研究で、その仕組みが解明されつつあります。
マウスを使った実験では、大腸において、Gpr109aを活性化させることがわかりました(5)。この研究では、ナイアシン受容体マウスを用いた実験で、ナイアシンが酪酸塩とともに、結腸において、Gpr109aを介してインターロイキン(IL-18:IFN-y産生を誘起するサイトカイン)を誘発、また、APCs(抗原提示細胞)においてインターロイキン10(IL-10)とアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ADH1a)を誘発することが示されました。
IL-18は結腸の炎症および炎症に関連する癌の抑制に重要な役割を果たしています(6)。また、インターロイキン10は潰瘍性大腸炎や、炎症性腸疾患のリスク増加に関係しています(7)。
つまり、ナイアシンと酪酸塩は一緒に働いて、腸の炎症を抑え、大腸がんを予防する働きを持つと思われます。
ナイアシンはアルコールをアルデヒドデヒドロゲナーゼ(酵素)で分解するときの補酵素ですが、さらに酵素自体を誘発するということで、アルコール代謝に深く関わっているのです。
12)睡眠障害
ナイアシンは肝臓でトリプトファンから作られます。ナイアシンの摂取が減って、体内で不足すると、必須アミノ酸のトリプファンからの合成が進みます。
すると、脳内でトリプトファンから作られるセロトニンが減ってしまいます。
セロトニンは精神を安定させるホルモンですから、心が落ち着かなくなり、うつになったりいらいらしたりするのです。
また、セロトニンからメラトニンが合成されるので、メラトニンも不足します。
メラトニンは睡眠ホルモンとも呼ばれていて、不足すると寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなるなど、睡眠の質が低下してしまうのです。
ナイアシンをしっかりと摂取することによって、セロトニン、メラトニンを十分に供給することが出来るようになりますから、眠りが改善されるのです。
不眠症の方はしっかりとナイアシンを摂りましょう。
13)統合失調症
ホッファー博士は、統合失調症はペラグラである、と言っています。
統合失調症患者にナイアシンを与え、非常に好成績の治療結果を発表しています。
統合失調症をはじめとする精神障害は糖質摂取による脳神経の変性が原因と考えられているため、糖質制限も加えて行うことが大切です。
統合失調症の患者さんはナイアシンフラッシュが出ないことが多いのですが、これはナイアシンが欠乏している証拠です。これを利用して、統合失調症の検査にナイアシンを経口摂取したり、皮膚に塗布したりする方法を用いることもあるそうです。
14)うつ病
ナイアシンが十分にないとセロトニンの量を増やすことができません。上述したように、トリプトファンがナイアシンとセロトニン、両方に変換されるためです。
ナイアシンが不足するとうつ状態となります。
逆にナイアシンが十分であれば、セロトニンがたくさんできて、心が安定します。うつの改善にはナイアシンが必須なのです。うつに対するナイアシンの効果については、後述のソウル博士のビデオの中でもご紹介しています。
15)アルツハイマー病のリスク低下
65歳以上のシカゴの市民6158名についてナイアシン摂取量とアルツハイマー病の発症リスク、認知機能の低下について調べた大規模なコホート研究があります(8)。
食事によるナイアシン摂取量とアルツハイマー病発症率、認知機能低下との間に負の関係がみられました。ナイアシンの1日の摂取量が最も多いグルーブでは、最も少なかったグループに比較して、アルツハイマー病の発生率減少と認知機能の低下の遅れが認められたのです。
ナイアシンはこのように体内で多くの重要な役割を果たしているため、必要とされる量は非常に多く、各種ビタミンの中でも特に必要量が多いと言われています。不足しないように気をつけなければいけません。
【参考文献】
- Canner PL et al. Fifteen year mortality in Coronary Drug Project patients: long-term benefit with niacin. J Am Coll Cardiol, 8(6): 1245-1255.1986
- Chi-Fai Ng. et al. Effect of niacin on erectile function in men suffering erectile dysfunction and dyslipidemia. J Sex Med 8(10):2883-93.2011 DOI: 1111/j.1743-6109.2011.02414.x
- Carlson LA. Nicotinic acid: the broad-spectrum lipid drug. A 50th anniversary review. J Intern Med, 258(2): 94-114. 2005
- Hoffer A, Saul AW, Foster HD Niacin: The Real Story: Learn about the Wonderful Healing Properties of Niacin. Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202752.2012
- Singh N et al. Activation of Gpr109a, receptor for niacin and the commensal metabolite butyrate, suppresses colonic inflammation and carcinogenesis. Immunity. 2014 Jan 16;40(1):128-39. doi: 10.1016/j.immuni.2013.12.007. Epub 2014 Jan 9.
- Chen GY et al. A functional role for Nlrp6 in intestinal inflammation and tumorigenesis.J Immunol. 2011 Jun 15;186(12):7187-94. doi: 10.4049/jimmunol.1100412. Epub 2011 May 4.
- Glocker EO et al. N Engl J Med. 2009 Nov 19;361(21):2033-45. doi: 10.1056/NEJMoa0907206. Epub 2009 Nov 4.Inflammatory bowel disease and mutations affecting the interleukin-10 receptor.
- M Morris et al. Dietary niacin and the risk of incident Alzheimer’s disease and of cognitive decline. J Neurology neurosurgery and psychiatry. 2004, 75(10), 1093-1099
※本記事は宮川路子先生のホームページ『宮川路子の水素栄養療法』にて掲載された『ナイアシン(ビタミンB3)の素晴らしい健康効果』を、許可を得た上で転載しております。https://eiyouryohou.com/?p=2718
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