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白金パラジウムによる間質性肺炎の新しい治療法の開発~改善例、研究例と関連させて~第8報:白金パラジウムによる血中KL-6低下の検討

この記事の執筆者

尚絅学院大学健康栄養学群健康栄養学類

目次
    間質性肺炎の患者においては肺胞が線維化されてしまっているために肺胞が破壊されて血中にKL-6が多く確認される。KL-6は、主として肺サーファクタントの産生・分泌に強く関係するII型肺胞上皮細胞が含有する高分子シアル化糖蛋白質であり、慢性呼吸器疾患の活動性(重症度)と相関して、肺胞の炎症性傷害により血中に逸脱することから、重症度の判定に広く臨床応用されている。そこで今回は実際の間質性肺炎の患者に対して白金パラジウムを服用させ、KL-6の変化について検討を行った。その結果、有意にKL-6の値が低下したので報告する。

    今回は間質性肺炎の重症度の指標としても使用されているKL-6について、間質性肺炎と診断された患者について十分なインフォームドコンセントを得て白金パラジウム服用前後にて統計学的な処理を行った。KL-6が血中に多く出てきてしまっているということはそれだけ肺胞が破壊されているということが言えるために、この値が低下すれば肺胞の破壊の停止・休止、もしくは改善しているという可能性が考えられる。そこで試験には、日野厚生クリニックに受診し、試験に同意した16名(以下 被験者と表記)を対象とした。各被験者には、28日間(4週間)白金パラジウムを服用させた。服用量は、最初の1週間は3バイアル、2週目は2バイアル、最後の2週は1バイアルを服用させ、服用前後のKL-6の測定を行い比較検討した。また、その評価は統計処理ソフト(IBM SPSS Statistics Ver.26)を用いて対応のあるt検定にて統計的な評価をした。KL-6の測定は、定法通り、EIA(酵素免疫法)によって施行し、500U/mL未満を基準値とした。

    なお、本研究においては日野厚生クリニック倫理委員会にて倫理承認された。(倫理審査番号:HKC_N10033001)

    以下にその結果を記す。

    n=16の被験者において下記表2、図2のようにKL-6の値に対して減少傾向が見られた。また統計処理を行った結果、有意水準5%にて有意に減少が見られた。これにより肺胞からのKL-6の逸脱が抑制されていると考えられ、肺胞機能が改善している可能性が示唆された。(表、図)

    (表) 白金パラジウム投与前後でのKL-6比較(n=16)、KL-6 (IU/ml)

    (図) 白金パラジウム投与前後におけるKL-6の変動(Paired-samples t-test. P<0.05)

     

    KL-6は、主として肺サーファクタントの産生・分泌に強く関係するII型肺胞上皮細胞が含有する高分子シアル化糖蛋白質であり、慢性呼吸器疾患の活動性(重症度)と相関して、肺胞の炎症性傷害により血中に逸脱することから、重症度の判定に広く臨床応用されている。間質性肺炎の重症度と強く相関するが、肺癌、混合性障害(肺気腫との合併)の重症度とも相関することが報告され、臨床応用されている。本実験においてKL-6の値が有意に低下したため、その重症度が改善されたことが示唆された。今後、体内動態においてどのような作用によって、KL-6の逸脱が抑制されているかの検討を行う予定であるが、仮説として間質性肺炎患者における肺胞の機能が改善したと言うことが考えられる。

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