自閉症や発達障害など子供の脳のトラブルに対して、従来の行動療法や薬物療法のみの治療だけでなく、食事療法、サプリメントを用いた栄養療法、腸内環境の改善、デトックス療法などが1990年代から欧米では行われている。1995年に設立されたAutism Research Institute(ARI)では、これらの治療法に対して、エビデンスに基づいた内容を紹介している。
発達障害と栄養療法
近年、発達障害と診断される子供が増えていると言われている。平成18年から従来は情緒障害とされていた子供がADHD,ASD,LDへ細分化され集計されるようになっているが、明らかな絶対数の増加が指摘されている。日本では、特別支援級などの環境を整備し周囲の理解を高めることが行われ、児童精神科医による診断と投薬治療などが行われている。海外でも同様に行動療法や薬物療法が主流であるが、自閉症および発達障害の子供たちに対して、積極的な栄養素の補充や食事方法の介入などが行われてきた。食事方法の変更や栄養療法、腸内環境の改善などについては、個々の子供の遺伝的、生化学的特性を理解し個別化された介入で対応することが中心となっている。
また、2011年には英国の科学雑誌であるThe Lancetに、ADHDと食事の関係について特定の食材の除去によってADHD症状で有意な改善が得られ、問題となる食材の再導入によって症状が再発することが報告された。
(2:The Lancet, vol. 377, no. 9764, 5 Feb. 2011, pp. 494-503)
このような、海外での子供の脳のトラブルに対するとらえ方と異なり、日本では特別支援級などによる対応と児童精神科医による薬物療法が中心であり、通常の医療機関から積極的に栄養療法を推奨される状況ではない。
2003年にオーソモレキュラー栄養療法の専門クリニックである新宿溝口クリニック(現みぞぐちクリニックhttps://mizoclinic.tokyo/)を開設以来、筆者は子供の脳のトラブルに対して積極的な食事の変更とサプリメントを用いた栄養療法を行ってきた。また医師向けの栄養療法の勉強会を開催し、臨床へ応用する医療機関を増やすべく活動し、一般向けには書籍や講演会などを開催し情報を提供した。最近では、多くの医師からも、発達障害にたいする栄養療法の書籍が発刊され、子供の脳に対する栄養の重要性が知られるようになった。一方では、それらの書籍で推奨されるサプリメントの利用によって、重篤な鉄過剰状態となった症例も報告された。
(3:Cureus, 17(1), e77251. https://doi.org/10.7759/cureus.77251)
また前述のARIが2011年まで推奨してきたプロトコルでは、自閉症の子供へのキレーション療法が含まれていたが、効果の不確かさと安全への懸念より推奨されなくなった。これらの問題点は、各種検査などによって患者の状態を評価せず、一般化された情報で治療が行われたことが原因であると思われる。
現在では、個々の子供に対する遺伝的、生化学的な特性を理解し、それに基づいた個別化された介入を行うことが推奨され、統合医療、機能性医学などと標榜されるようになった。
いずれにおいても患者個々の消化器機能の把握、適切な食事指導、さらに必要な栄養素の安全な補充と定期的なフォローアップが重要である。
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