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ホワイトハウスが「新・食事ガイドライン」を発表〜なぜ米国は食事基準を根本から変えたのか

この記事の執筆者

スピックメディカルパートナー 鎌倉元氣クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学医学部内科助教授を経て、2000年〜2008年同大学保健学部救 ... [続きを見る]

2026年1月7日、米国ホワイトハウスで年初の記者会見が行われ、今後のアメリカ人の食と健康の重要な政策が発表されました。プレスルームに登壇したのはロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官、ブルック・L・ロリンズ農務長官、マーティン・マカリ 米食品医薬品局(FDA)長官らで、この場で「2025〜2030年版 米国食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans)」が正式に公表されました。

このガイドラインは、単なる栄養指針の更新ではなく、米国の医療政策そのものを方向転換する内容として、大きな注目を集めています。

■なぜ今、米国はこの大転換が必要だったのか

米国は今、深刻な健康の危機に直面しています。医療費の約90%が慢性疾患の治療に費やされ、成人の70%以上が過体重または肥満、青少年の約3分の1が前糖尿病(尿病予備軍)という状況です。これらの病の多くは遺伝的なものではなく、「標準的なアメリカの食事」、すなわち高度に加工された食品への依存と座りがちなライフスタイルの結果であると指摘されています。

過去数十年、米国の栄養政策は「低脂肪・カロリー制限」を中心に組み立てられてきました。その結果、脂肪を減らした代わりに、砂糖や精製炭水化物、人工甘味料、超加工食品が大量に使われるという矛盾が生じました。国民は「健康的」とされる食品を選んできたにもかかわらず、実際には代謝異常、慢性炎症、インスリン抵抗性が広がり、慢性疾患社会が形成されていったのです。

米国保健福祉省と農務省は、この危機的状況に対処するために「新・米国食事ガイドライン」<写真1>を公表しました。

<写真1>2025〜2030年版 米国食事ガイドライン

ロバート・F・ケネディ・ジュニア厚生長官とブルック・L・ロリンズ農務長官は、「この指針は、連邦栄養政策における最も重大なリセットを示す」とし、メッセージは「本物の食(Real Food)への回帰」であると強調しています。<写真2>

<写真2>新・米国食事ガイドラインを発表するケネディ保健福祉長官

高度に加工された食品を減らし、タンパク質、健康的な脂質、野菜、果物、乳製品、全粒穀物といったホールフード(栄養密度の高い本物の食品)を中心に据えるという、きわめて明確なメッセージが打ち出されました。

■「食は医療であるFood is Medicine」という国家的イメージ

今回の発表を貫く中心思想は「食事は医療であり、最も基本的な予防策である」と明確です。そもそも「薬を必要としない体をつくる」ことが、最も効果的な医療費抑制策であると強調されました。

これは、がん医療や慢性疾患治療に携わる立場から見れば、きわめて現実的な視点です。がん患者においても、低栄養、サルコペニア、慢性炎症、インスリン抵抗性は、治療効果や予後に大きく影響します。食事を「補助的な生活指導」ではなく、「治療の土台」として位置づけ直す――今回の食事基準は、その考え方を国家レベルで正式に採用したものと言えます。

■新・米国食事ガイドラインの主な内容

以下は、2025〜2030年版ガイドラインの中でも、特に重要なポイントです。新しい指針は、アメリカの食生活の中心に栄養密度の高い「本物の食品」を据えることを求めています。

1.食事の基本原則:栄養密度の高い「本物の食品」を優先する

新しい指針は、アメリカの食生活の中心に「本物の食品」を取り戻すことを呼びかけています。これは、体を養い、健康を回復させ、エネルギーを供給し、強さを築くための食品です。

(1) タンパク質を食事の中心に

タンパク質は毎食優先されるべき食品群です。健康的な食事パターンの一部として、質の高い栄養密度の高いタンパク質食品を優先することが求められています。

  • 摂取源の多様化: 卵、家禽肉、魚介類、赤肉などの動物性タンパク源に加え、豆類、レンズ豆、ナッツ、種子、大豆などの植物性タンパク源を多様に摂取します。
  • タンパク質の目標量: 個人のカロリー要件に基づいて調整しつつ、体重1kgあたり1.2~1.6グラムのタンパク質摂取を目指します。

(2) 乳製品と腸内環境

乳製品を摂取する際は、無糖の全脂肪乳製品を推奨します。また、健康的な食事は腸内細菌叢(マイクロバイオーム)のバランスをサポートします。野菜、果物、発酵食品(キムチ、ケフィア、味噌など)、高繊維食品が多様なマイクロバイオームをサポートする一方、高度に加工された食品はこのバランスを崩す可能性があります。

(3) 野菜、果物、全粒穀物、健康的な脂質

栄養密度が高く、彩り豊かな野菜と果物を多様に食べること、また、ホールフードとしての形で食べることを推奨しています。

  • 色とりどりで栄養密度の高い野菜・果物を推奨する
  • 冷凍・乾燥・缶詰も、砂糖や添加物が少なければ可である
  • 100%ジュースは量を制限するべきである
  • 健康的な脂質は肉、魚、卵、乳製品、ナッツ、種子、オリーブ、アボカドなどに含まれる
  • 調理油はオリーブオイルを基本とし、バターや牛脂も選択肢として容認する
  • 問題視されるのは脂質そのものではなく、超加工食品由来の脂質である
  • 全粒穀物: 繊維質の豊富な全粒穀物を優先し、白パン、加工済みの朝食用シリアルといった高度に加工された精製炭水化物の摂取を大幅に減らすよう求めています。
2.制限すべき食品:高度加工食品と添加物の回避

この指針の最も強力なメッセージの一つは、高度に加工された食品と、それに含まれる添加物、精製炭水化物、添加糖、過剰なナトリウムの摂取を厳しく制限することです。

  • 高度加工食品の回避: チップス、クッキー、キャンディなど、添加が多く含まれるパッケージ食品、調理済み食品を避け、栄養密度の高い食品や家庭で調理された食事を優先する
  • 人工香料、人工着色料、人工保存料、非栄養性甘味料を制限する
  • 健康的な食事に加える砂糖は「ゼロ」が理想である
  • 1食あたりの添加糖は10g以下とする
  • ナトリウムの推奨摂取量: 14歳以上の一般集団は、1日あたり2,300mg未満(食塩相当量で約6g)のナトリウムを摂取すべきです。
  • 全体的な健康のため、アルコール摂取量を減らす
3.慢性疾患は「代謝の問題」として対応
  • 肥満、糖尿病、心血管疾患、がんを生活習慣と代謝の問題として捉える
  • 慢性疾患のある人では、低炭水化物食が有効な場合があることを明記する
  • 食事は画一的でなく、個別化するべきとする
4.すべての連邦食事プログラムの基盤に

公立学校給食、軍・退役軍人病院の食事、子どもの教育と栄養支援プログラムなど、すべてが新基準に基づいて見直される。

おわりに

今回の米国食事ガイドラインは、オーソモレキュラー医学や統合医療の現場で長年実践されてきた考え方が、国家政策として正式に認められたものと言えます。最後にホワイトハウスのプレスルームでの発言を紹介します。

「外国の敵がわが国の子供たちの健康を破壊しようとした場合、超加工食品に依存させることほど、優れた戦略はないでしょう」―ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官

「健康な国でなければ豊かな国にはなれない」――メフメット・オズ医師(公的医療保険責任者)

「この問題は、大人が子供たちにしたことであり、子どもたちの意志ではありません。私たちはそれを正します」 -- マーティン・マカリ 米食品医薬品局(FDA)長官

「私たちはついに、本物の食品をアメリカの食事の中心に戻そうとしています」―ブルック・L・ロリンズ農務長官

参考

米国食事ガイドライン(2025〜2030年版)https://cdn.realfood.gov/DGA.pdf

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