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ビタミンCに関する「誤情報」を一刀両断!

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

国際オーソモレキュラー医学会ならびに傘下にある各国の学会は、新型コロナウイルス感染(以下コロナと略)の予防・治療にビタミンCを始めとする栄養療法が有用であることを世界中に伝えてきました。2020年12月7日にはイギリスや各国の栄養療法の専門家らが集まり、各国政府ならびに関係機関に請願する署名活動「VITAMIN C FOR COVID」(https://www.vitaminc4covid.com)が発足しています。(「VITAMIN C FOR COVID 」の詳細についてはこちらの記事で取り上げています)

「VITAMIN C FOR COVID」の活動の中でも大事な役割の1つは、世の中に広まっているビタミンCに対する誤解を解き、流布しているフェイク情報を改めることです。そこで、本稿では「VITAMIN C FOR COVID」で発信している情報をご紹介します。

誤った情報①「風邪の時にどんなにビタミンCを飲んでも意味はない」

この情報を訂正するには、フィンランドのヘルシンキ大学公衆衛生学のヘミラ教授がコクランレビューに掲載した総説が参考になります。 (1) ヘミラ教授は「ビタミンCを常時補充した試験で、風邪の罹病期間および重症度に対するビタミンCの一貫した効果が認められました。さらに低コストで安全です。風邪の患者に対して個別にビタミンCを治療薬として投与し、有益であるかどうかを検討する価値はあるでしょう。今後、治療薬としての効果を検討するランダム化臨床試験をさらに実施する必要があります」と結論付けています。

次に、カナダのトロント大学疫学部門のアンダーソン教授は、風邪の初日にビタミンCを経口で4g摂取した群と8g摂取した群に分けて比較しました。プラセボ群の有症状期間が3.52日、ビタミンCの4g摂取群は3.17日、8g摂取群では2.86日と有意な期間の短縮がみられ、高用量のビタミンCの効果を認めています。(2)

1975年、アメリカ国立衛生研究所のカロウスキー博士は1日1gのビタミンCを9ヶ月間摂取したグループで風邪に罹患したのは34%と、プラセボ群の44%よりも有意に少なかったことを米国医師会雑誌(JAMA)に発表しています。(3) また、風邪の罹病期間に関しては、ビタミンC 1gでは6%しか短縮しなかった一方、倍の2g投与により約4倍となる26%も罹病期間が短縮しています。

これらの研究から、風邪に対してビタミンCが効果的であること、状態によっては3g〜6gの摂取が推奨されるということが示されます。

誤った情報②「ビタミンC12g飲んでもすぐに尿として出るから無意味だ」

さて、2つ目には「ビタミンCを過剰に摂取しても身体から全部排泄される。だからビタミンCをたくさん摂っても意味がない」という誤解について取り上げましょう。健康なボランティアでビタミンCの薬物動態を調べたところ、1日200mgのビタミンCの摂取によりビタミンC血中濃度を70〜90μmol/Lに維持できます。1日1g〜3g以上に増量して摂取すると220μmol/Lの濃度まで上昇します。さらに、点滴であればその10倍の濃度に達するのです。

一方、ウイルス感染時にはビタミンの必要量が増えるので、ビタミンCの摂取量を増やす必要があります。感染中に正常な血漿レベルを60〜80μmol/Lに維持するには1日2g〜3gのビタミンCの摂取が必要となります。ビタミンCを2.5g補給すると、ほとんどの人において過剰分は最終的に排泄されますが、1日栄養摂取基準と比較して血中ビタミンC濃度は2倍以上になります。

こうした事実から導き出される答えは、ビタミンCを多く摂ってもその全てが排出されるわけではなく、一定量を体内に保持するということです。

誤った情報③「ビタミンCの大量摂取は腎臓結石の原因になる」

ビタミンCを摂り過ぎると腎臓結石になる。この情報はネット上でかなり流布しているため、目にしたもしくは耳にしたことのある方もいるかもしれません。南アフリカのケープタウン大学にある腎臓結石研究所では、ビタミンCと腎臓結石の形成に関する研究を行いました。10名のボランティア被験者に1日あたり4gのビタミンCを5日間摂取させ、彼らの尿から腎臓結石を形成する多くの物理化学的危険因子について分析したのです。その結果、大量のビタミンCを摂取しても腎臓結石を形成するリスクを増加させないと結論付けました。(4)

さらに、腎結石の病歴がない女性 計85,557人の14年間の追跡調査を行ったところ、1078件の腎結石が発見されました。しかし、ビタミンCの摂取は腎結石の発症リスクとは関連がないと報告されました。(5)

ビタミンCと腎臓結石に関する系統的レビューでは、男性においてはビタミンCの補給と腎臓結石の発生率に相関関係があるようですが、女性の場合はないことが示されました。慎重に考えるなら、過去に腎結石または腎機能障害を患ったことがある人には経口または点滴による高用量ビタミンCの投与は避けることです。しかし、健康で正常な腎機能の人々にとって、短期間の高用量ビタミンC投与(1日2〜8g)が重大な懸念となる可能性は低いと言えるでしょう。

誤った情報④「遺伝性疾患のG6PD欠損症、ヘモクロマトーシス、サラセミアに短期間でもビタミンCを投与するのは危険」

確かに、鉄過剰症を起こすヘモクロマトーシス※1 やサラセミア※2 の患者が、ビタミンCを大量に摂取すると鉄の吸収が高まり、こうした病気の進行を早めてしまいます。

また、赤血球膜の遺伝性疾患であるG6PD欠損症は、高用量のビタミンCにより溶血を起こします。しかし、上記疾患の重症感染症患者でも、短期間であれば経口または点滴による6gのビタミンC投与については問題ありません。アメリカで新型コロナウイルスの重症患者治療プログラムを提供しているグループは、G6PD欠損症患者に3gのビタミンCを6時間毎に点滴投与するのは安全であると報告しています。(6)

 

※1:全身の臓器に鉄が沈着することで皮膚色素沈着、糖尿病などを引き起こす疾患。
※2:ヘモグロビンの合成障害による遺伝性の疾患。重症化すると溶血性貧血をきたす。

誤った情報⑤「ビタミンCの大量摂取は副作用を招く」

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の栄養部門では、幅広い文献を集めて徹底的に検証を行った末、ビタミンCの最大安全摂取量は1日2gであると結論付けました。また、欧州食品安全機関(EFSA)は、胃腸への影響に関連する有害作用レベルは1日3〜4gであるとしました。しかし、1日3g未満で下痢が発生することはごく稀です。ウイルス感染時はこれ以上の量を摂取したとしても下痢にはまずなりません。

実際、病院ベースのビタミンC経口治療の合併症として下痢は報告されておらず、ビタミンCの点滴においても発生していません。主にガン・感染症そして倦怠感のためにビタミンC点滴(4日毎24g)を受けた計9328人の患者の調査でも、報告されたのは101人(1%)における無気力または倦怠感、静脈刺激/静脈炎といった軽微な副作用だけでした。

誤った情報⑥「そもそも、ビタミンCには新型コロナに効果があるというエビデンスはない」

ビタミンC 2〜8gの経口および静脈内投与は、一般的な風邪・肺炎・敗血症患者の入院期間の短縮と重症度を軽減するという潜在的な利点があります。これはつまり、早期の経口補給が新型コロナの感染防止、死亡率の低減、そして感染した場合においては回復を早める可能性があるということです。

アメリカ国立衛生研究所に現在登録されているビタミンCと新型コロナに関する臨床試験は45件あります。アメリカ、カナダ、イタリアにおいても現在臨床試験が進行中です。中国の武漢大学では、重度の新型コロナウイルス感染患者に24gのビタミンCが点滴投与されました。そして、呼吸状態の改善、炎症性サイトカインの減少、重症度スコアの改善と死亡率の低下が報告されています。

英国のチェルシー・アンド・ウェストミンスター病院では、重症の新型コロナウイルス感染患者にビタミンC(1g)を12時間毎に静脈内投与しました。その結果、英国全土の平均死亡率41%と比較し、死亡率29%と有意な減少がみられたと発表しています。

また、米国救急医療の専門医グループの研究は、1日6gのビタミンC点滴(6時間毎に1.5g)にステロイドおよび抗凝固剤を併用すると死亡率が低くなると報告しています。この治療を採用したテキサス州ヒューストンのユナイテッド・メモリアル医療センターとバージニア州ノーフォークのノーフォーク総合病院の集中治療室における新型コロナ感染者の死亡率は5%であり、その地域で最も低い死亡率となりました。これらの治療報告を踏まえた上でも、ビタミンCは新型コロナウイルス患者にとって、まさに救世主となる可能性があります。(6)

おわりに

現在、世界各国の科学者が自国の政府に対して、直ちにビタミンC、ビタミンD、亜鉛などを新型コロナウイルスの予防・治療に使うべきと請願しています。皆さんもご存知の通り、東京ではパンデミックの第3波の真っ只中です。私たちも世に出回っているフェイクニュースに対してエビデンスを示した上で正しい情報を伝え、栄養療法による新型コロナウイルス感染予防と治療の普及に努めていきたいと考えています。





<参考文献>

(1)Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;(1):CD000980.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23440782/

(2) Can Med Assoc J. 1974 Jul 6; 111(1): 31–36.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1947567/

(3) JAMA. 1975;231(10):1038-1042
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/360168

(4) Medical Hypotheses (1999) 52(2), 171-178
https://www.mv.helsinki.fi/home/hemila/H/HH_1999_MH.pdf

(5) Clin. Chem. Lab. Med. 1998, 36, 143–147.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10203369/

(6) Front Line COVID-19 Critical Care Alliance
https://covid19criticalcare.com

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