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【第51回 国際オーソモレキュラー医学会カンファレンス開催報告】殿堂入り受賞者のご紹介

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

2022513、14日に、カナダのトロントより第51回国際オーソモレキュラー医学会がオンライン開催されました。1日目のフィナーレはオーソモレキュラー医学殿堂入り授賞式で締め括られ、今年は2名の殿堂入り受賞者が発表されました。

本年度の受賞者であるリチャード・チェン博士、デイビッド・スミス博士の略歴をご紹介し、本学会開催のご報告とさせていただきます。

 

第51回 国際オーソモレキュラー医学会

2022年5月13日から2日間、第51回国際オーソモレキュラー医学会(Orthomolecular Medicine Today Conference)がカナダのトロント市からオンライン開催されました。そして、学会1日目の最後にはオーソモレキュラー医学名誉の殿堂入り授賞式がライブで行われ、スティーブン・カーター氏(学会本部事務局長)が選ばれた2名の殿堂入り受賞者を発表しました。

<画像1>受賞者に贈られるクリスタル・トロフィー

リチャード・チェン博士

リチャード・チェン(Richard Cheng)博士は、上海医科大学を卒業後に渡米しアーカンソー大学で生化学、がん遺伝学で博士号を取得したのちサウスカロライナ州でクリニックを開設しました。

彼は中国で新型コロナのパンデミックが起きた時、「新型コロナの感染予防と治療のために、すぐにでも高濃度ビタミンC点滴が必要だ」と考えました。リチャード博士は直ちにオーソモレキュラー医学に精通している専門家に声をかけ、高濃度ビタミンC点滴で中国をサポートする国際チームInternational IVC Medical support team for China against Covid-19 epidemic”を立ち上げました。

<画像2>リチャード・チェン博士


このチームには、ビタミンC研究で著名な米国のトーマス・レヴィ博士、カンザス大学医療センターのジーン・ドリスコ教授とキ・チェン助教授、国際オーソモレキュラー医学会の柳澤 厚生、そして中国の医師らが加わり、米中日3カ国の国際チームになりました。

同チームは武漢市や上海市健康局の医師らと連携し、情報提供を開始しました。チェン博士はさらに武漢市にある複数の病院を訪問し、新型コロナウイルス感染における高濃度ビタミンC点滴の臨床試験へのアドバイスをしました。

こうしたチェン博士と国際チームの活動は、202031日に発行された上海市の新型コロナウイルス治療ガイドラインの中で正式に高濃度ビタミンC点滴が加わることで実を結ぶこととなります。

彼の中国へのオーソモレキュラー医学を用いた新型コロナウイルス感染対策という人道的支援が評価され、2022年の国際オーソモレキュラー医学会名誉の殿堂入りに選出されました。

デイビッド・スミス博士

デイビッド・スミス(A.David Smith)博士は、生化学を学ぶ学生として1963年にオックスフォード大学に入学しました。以来、彼はそのキャリアの全てをオックスフォード大学で過ごし、1984年から2005年に同大学薬学部長を務めました。また、1976年から2001年まで国際脳研究機関の公式ジャーナルである『Neuroscience』誌の初代編集長を務め、1979年には英国薬理学会のギャダム賞を受賞しました。

1998年、スミス氏の研究グループは、血漿ホモシステインの上昇とビタミンB群(葉酸、ビタミンB12、およびビタミンB6)の濃度の低値が、病理学的に確認されたアルツハイマー病および脳血管性認知症の発生に重要な危険因子になることを発見しました。

これは、血漿ホモシステイン濃度を低下させる高用量のビタミンB群(葉酸、ビタミンB6およびB12)をサプリメントとして2年間投与した無作為化二重盲検プラセボ対照試験により、認知症の予測因子である高齢被験者の脳萎縮率が遅くなるという発見につながります。

この研究では高用量のビタミンB群の投与によって軽度認知障害のある高齢者の脳萎縮の加速率を53%以上も大幅に減少させることが可能であるとわかったのです。

<画像3>デイビッド・スミス博士


昨今のスミス氏と共同研究者らの関心は、血漿システイン濃度と肥満との関連に関するものです。 2008年、彼らはノルウェー人5,000人を対象とした研究で、血漿システイン濃度の増加が脂肪量の増加と関連していることを発見しました。そして現在、システインを低くする特定の食事あるいは治療によって脂肪量を減らすことができるかについての研究を続けています。

スミス氏は、オーソモレキュラー医学の分野において秀でた先見の明がある学者であることから、2022年度オーソモレキュラー医学名誉の殿堂入りを受賞しました。

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