がんについては、以前から海外ではビタミンDががんの予防に効果があるという研究結果29,30)が報告されており、抗がん効果は確実であろうとみなされています。具体的には肝臓がん31,32)、結腸直腸がん33)、前立腺がん34)、肺がん35)、膵臓がん36)、卵巣がん37)などのリスクを下げることが示唆されています。ビタミンDは酸化ストレスを減少させるため38)、DNA損傷による発がんを抑える抗がん作用を有すると考えられます。また、ビタミンDの活性型であるカルシトリオールは腫瘍のアポトーシス(自死)を引き起こし、腫瘍への血流を制限して腫瘍を縮小させると言われています。
ビタミンDの健康効果vol.2
ビタミンDは、がん、感染症、骨粗鬆症、糖尿病、メタボリックシンドロームなど多岐にわたる疾患リスクを低下させる重要な栄養素です。免疫調整作用や抗炎症作用、細胞の恒常性維持に関与し、特に呼吸器感染症では発症や重症化を抑える可能性が示されています。また、骨の形成や修復、代謝調整にも寄与し、肥満や炎症性腸疾患、慢性関節リウマチとの関連も報告されています。日照不足や生活習慣により不足しやすいため、適切な補給と血中濃度の維持が健康維持に重要です。
各種疾患に対する効果
1)ビタミンDの抗がん効果
最近、日本人においてもビタミンDの抗がん効果について同様の研究結果が発表されました39)。これは国立がんセンターが行った大規模なコホート研究によるもので、ビタミンDの濃度が高いほど全がんの危険性が25%も低いことがわかったのです。肝臓がんについてはビタミンD濃度が高いと肝臓がんのリスクが最大で55%も下がるという強い逆相関の関係を認めました。また、卵巣がんにおいては、ビタミンDとカルシウムを一緒に摂取することでよりリスクが下がることが報告されました。
この研究結果は非常に信頼性の高い疫学調査によるものであり、ビタミンDの抗がん効果は日本人においても確実であるといえるでしょう。ただし、がんになった場合にビタミンDを摂取することが抗がん効果につながるかどうかはまだわかっていないようです。
2)各種感染症の予防
ビタミンDと感染症についての研究は数多く行われています。ビタミンDは細胞の増殖、免疫、代謝機能に重要な役割を果たしています。このため、血中濃度が低下すると感染症のリスクが増加し、重症度が上がるのです。小児、および成人において急性呼吸器感染症のリスクをビタミンDが下げることが確認されています40)。また、活動性結核の患者ではビタミンDの濃度が低いことが認められています41,42)。
最近、ビタミンDが感染症を防ぐ働きは細胞のオートファジーに関係していることがわかってきました34)。オートファジーは、ストレス下における細胞のホメオスタシス(恒常性)を維持するとともに、結核菌を含む多くの微生物の制御に重要な役割を果たします。HIV患者におけるビタミンD欠乏症についても多くの研究が行われていますが43)、最近の研究では、HIVが細胞のオートファジーの作用を低下させるため、ビタミンDなどオートファジーを誘発する薬剤はHIVの増殖を抑えることができることが判明しています44)。
3)風邪・インフルエンザの予防と治療
感染症の中でも、前述した呼吸器感染症(風邪、インフルエンザ)に焦点をあててみましょう。これらの疾患は冬になると急に罹患率が上昇します。この理由をビタミンDの血清濃度によって説明できる可能性があるのです。
冬場は日照時間が短く、外で陽に当たる機会も少なくなるため、ビタミンDの血中濃度が下がることが一つの要因であると考えることができるかもしれません。ビタミンDのインフルエンザ予防効果については、すでにいろいろな研究がありますが40,45,46)、妊娠中の女性はとくにビタミンD濃度が低いため、インフルエンザに罹りやすくなることが知られています46)。妊婦においては積極的にビタミンDのサプリメントを摂取することが望まれています。
また、カナダのある病院では、多くの患者に常にビタミンDを投与しており、インフルエンザに罹る患者が非常に少ないことが報告されています40)。インフルエンザに罹患した患者には彼らが「ビタミンDのハンマー治療」と呼ぶ次のような治療を行っているのです。(表1)
表1ビタミンDのハンマー治療
.png)
彼らが提唱するこのビタミンD治療によって、インフルエンザの症状は48〜72時間で完全に抑えられるとのことです。副作用の心配がある高価な抗ウイルス薬を使用せず、10000IUが約10円と非常に安価で安全なビタミンDで効果を得ることができていることにはびっくりです。
ちなみに日本はインフルエンザのための抗ウイルス薬の消費量が世界で第一位であり、なんと世界の消費量の75%を使用しています47)。インフルエンザに罹ったら抗ウイルス薬を服用するのが当たり前だと思っている人が多く、また医師も当然のように高価な薬を処方するのが現状です。保険によって3割負担となれば実質的な出費が抑えられているため、費用について気にする人はほとんどいないのだと思われます。右肩上がりで上昇を続けている国民医療費のことを考えると、この状況は是正しなければいけものでしょう。一国で消費している薬の割合として、世界の消費量の75%は異常事態といわざるを得ません。日本におけるインフルエンザの罹患率が他国と比べて高いわけではなく、また、抗ウイルス薬を使わない国におけるインフルエンザによる死亡率が高いかといえば決してそのようなこともありません。もちろん、慢性疾患にかかっていたり、幼児や高齢者の場合には抗ウイルス薬を服用する必要があるかもしれませんが、日本では多くの必要ない人達が抗ウイルス薬を使用している状況なのです。
インフルエンザに罹患した場合、普通の健康な人であれば、抗ウイルス薬が出る以前の治療法、つまり「安静、水分補給、場合によって解熱鎮痛薬を用いる」程度の治療で充分であると思われます。これらに追加してビタミンDを高容量で摂取することをぜひとも推奨したいと考えています。
ご参考までに、高ウイルス薬が必要な人は次のような人であると言われています(米国疾病管理予防センター48)による)。(表2)
表2 インフルエンザ罹患時に高ウイルス薬を必要とするケース
.png)
4)骨粗鬆症、骨折の予防、治療、骨のトラブル(関節炎など)、腰痛、関節痛
ビタミンDが骨を強化して骨粗鬆症、骨折、関節炎などの骨のトラブルを予防する効果を持つことはすでに明らかとなっています。腸管内でカルシウムの吸収を促進することによって、骨を強くするのです。最近では骨折した際の回復をビタミンDが助けることが報告されました49)。
腰痛とビタミンD欠乏との関係は繰り返し様々な研究が行われていますが、はっきりとした因果関係を証明する質の高いエビデンスは得られていません。けれども、最近の報告では、慢性の腰痛においてビタミンDのサプリメントが、疼痛強度、および機能障害の程度を改善することが示されています50)。
5)肥満
肥満の人は血中のビタミンDの濃度が低下していることは多くの研究によって報告されています51,52)。ビタミンDの濃度が下がると、体内に脂肪を蓄える傾向となります。これは冬眠をする動物の血中ビタミンD濃度からも推測することができるでしょう。冬眠に入る動物の血中ビタミン濃度は著しく低下しています53)。冬になり、日照時間が短くなるとビタミンDの濃度が下がり、動物は食欲旺盛となり、たくさん食べて脂肪を蓄え、来るべき冬に備えるのです。動物に見られるこの現象は生物として、命を守るため、あるいは種の保存のために自然に組み込まれているシステムであると思われますが、人においても同様に、ビタミンD濃度の低下は食欲を亢進させる働きがあるのではないかと考えられています。
このため、逆にビタミンDはダイエットの薬として使用することが可能であると思われます。現在ダイエット薬として効果を認めているのはごく少数の薬剤に限られますが、副作用のために長期間の服用ができないものもあります。ビタミンDは安全で安価なダイエット薬として今後注目される可能性が高いのではないでしょうか。ただし、この場合には数万IUの継続投与が必要となるため、血液検査で血中濃度を確認しながら摂取することが望まれます。
また、肥満の人においては、体脂肪の量が多いため、脂溶性ビタミンであるビタミンDが脂肪細胞に取り込まれ、有効な血中濃度を確保するためにはより多くのビタミンD摂取が必要となる可能性があります。ビタミンDの必要量には個人差があるのは体脂肪量の違いにもよるものであると言われています。
6)メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症を併せ持つ疾患です。ビタミンDはこれらの疾患の発症に関与していることがわかっています54.55)。またメタボリックシンドロームは発展途上国には少なく、先進国において罹患率が高いものです。先進国においては、その多くが北半球に位置しており、日光に当たる時間が短いうえに、昨今の日焼け防止の風潮からビタミンDが不足しがちとなることは容易に想像できるでしょう。
また、高齢者を対象とした研究でもビタミンDの濃度が高いほどメタボリックシンドロームのリスクが低下することがわかっています56)。ビタミンDによるメタボリックシンドローム予防の可能性は今後ますます注目されるものと考えられます。
7)糖尿病(Ⅰ型、Ⅱ型)
ビタミンDの欠乏症はインスリン抵抗性を促進し、糖尿病の発症に影響を与えることが報告されています57,58)。また、糖尿病患者においては、ビタミンDの血清濃度と死亡率との間に負の相関を認めています59)。
さらに糖尿病患者の創傷治癒にもビタミンDが影響を与えているのです。足に潰瘍ができている患者の創傷の改善にビタミンDが奏効することが最近次々に報告されています60,61)。その機序としては、ビタミンDが直接炎症を抑える効果を持つほか、脂質異常の改善、HsCRP(高感度CRP)、血沈、および血糖コントロール改善による間接的な創傷治癒効果も認めているためと思われます62)。
糖尿病性腎症においても、ビタミンDの低下が認められています63)が、まだエビデンスとしては弱く、今後の研究が期待されているところです。糖尿病予備軍、および糖尿病に罹患している患者はビタミンDを摂取することが望まれます。
8)炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患にもビタミンD治療が有効であることが認められています64)。完全に症状を抑えるには効果が弱いのですが、補助的な治療法としてはかなり期待できると報告されています。
ビタミンDが腸の炎症を抑える仕組みは、腸粘膜上皮上のビタミンD受容体のシグナル伝達が粘膜上皮を保護して結腸の炎症を抑えるものですが、最近の研究で、このシグナル伝達は腸上皮細胞のアポトーシスを抑制することによるものであることが明らかとなりました65)。
9)慢性閉塞性肺疾患
ビタミンDの欠乏症は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者においてよく認められるため、この二者の関係については多くの研究がなされています66,67)。まだ確実なエビデンスは得られていませんが、血清ビタミンD濃度は、COPDのリスク、重症度増悪と逆相関しており、ビタミンDの欠乏症は、COPDの危険因子であることが示唆されています。
10)慢性関節リウマチ
慢性関節リウマチ患者においてビタミンD濃度が低いことはよく知られています68)。血清ビタミンD濃度が低いほど、RA活性が高いことも示されており69)、慢性関節リウマチの治療におけるビタミンDの有効性については今後の検討課題となっています。
終わりに
次回は、加齢性黄斑変性症・月経困難症、月経前症候群、子宮筋腫・うつ病・自閉症・アルツハイマー病・パーキンソン病・多発性硬化症などへのビタミンDの効果についてお伝えします。
参考文献
29) Peterlik, M.et al. Calcium, vitamin D and cancer. Anticancer Res. 29 (9): 3687-98. 2009
30) Krishnan, A.V. et al. The role of vitamin D in cancer prevention and treatment. Endocrinol Metab Clin North America. 39 (2): 401-418. 2010
31) Duran AH et al. p62/SQSTM1 by Binding to Vitamin D Receptor Inhibits Hepatic Stellate Cell Activity, Fibrosis, and Liver Cancer. Cancer Cell. 30(4):595-609. 2016
32) Abdei.Mohsen MA. Autophagy, apoptosis, vitamin D, and vitamin D receptor in hepatocellular carcinoma associated with hepatitis C virus. Medicine. 97(12):e0172. 2018
33) Sun M, Guo B. Vitamin D and the Epigenetic Machinery in Colon Cancer. Curr Med Chem. 24(90:888-897. 2017
34) Song ZY et al. Circulating vitamin D level and mortality in prostate cancer patients: a dose-response meta-analysis. Endocr Connect. 7(12):R294-R303. 2018
35) Liu J et al. Meta-analysis of the correlation between vitamin D and lung cancer risk and outcomes. Oncotarget. 8(46):81040-81051. 2017
36) Bao Y et al. Predicted vitamin D status and pancreatic cancer risk in two prospective cohort studies. Br J Cancer 1-2(9):1422-7. 2010
37) Cook LS et al. A systematic literature review of vitamin D and ovarian cancer. Am J Obstet Gynecol. 203 (1): 70 e1-8. 2010
38) Sepidarkish M et al. The effect of vitamin D supplementation on oxidative stress parameters: A systematic review and meta-analysis of clinical trials. Phamacol Res. 139:141-152. 2-18. 2019
39) Budhathoki S. et al. Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population:
large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort. BMJ 2018 Mar 7; 360:k671. 2018
40) Schwalfenberg G. Vitamin D for influenza. Can Fam Physician. 61(6):507. 2015
41) Gou X et al. The association between vitamin D status and tuberculosis in children: A meta-analysis. Medicine. 97(35):e12179. 2018
42) Wahyunitisari MR et al. Vitamin D, cell death pathways, and tuberculosis. Int J Mycobacteriol. 6(4):349-355. 2017
43) Orkin C. Vitamin D deficiency in HIV: a shadow on long-term management? AIDS Rev. 16(2):59-74. 2014
44) Spector SA. Vitamin D and HIV: letting the sun shine in. Top Antivir Med. 19(1):6-10. 2011
45) influenza A in schoolchildren. Am J Clin Nutr 91(5):1255-60. 2010
46) Grant WB, Cannell JJ. Pregnant women are at increased risk for severe A influenza because they have low serum 25-hydroxyvitamin D levels. Crit Care Med. 38(9):1921. 2010
47) Tashiro M et al. Surveillance for neuraminidase-inhibitor-resistant influenza viruses in Japan, 1996–2007 Antiviral Therapy 2009; 14:751-761
48) https://www.cdc.gov/flu/about/disease/high_risk.htm
49) Richards T, Wright C. British Army recruits with low serum vitamin D take longer to recover from stress fractures. J R Army Med Corps. 2018 Oct 15. pii: jramc-2018-000983.
50)Ghai B. Vitamin D Supplementation in Patients with Chronic Low Back Pain: An Open Label, Single Arm Clinical Trial. Pain Physician. 20(1):Epp-E105. 2017
51)Walsh JS. Vitamin D in obesity. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 24(6):389-94. 2017
52)Pereira-Santos M. Obesity and vitamin D deficiency: a systematic review and meta-analysis. Obes Rev.16(4):341-9. 2015
53) Vestergaard P et al. Vitamin D status and bone and connective tissue turnover in brown bears (Ursus arctos) during hibernation and the active state. PLos One. 6(6):e21483. 2011
54) Awad AB, Alappat L, Valerio M. Vitamin D and metabolic syndrome risk factors: evidence and mechanisms. Crit. Rev. Food Sci. Nutr. 2012;52:103–112
55) Prasad P, Kochhar A. Interplay of vitamin D and metabolic syndrome: A review. Diabetes Metab Syndr. 10(2):105-12. 2016
56) Wang CM. Inverse Relationship between Metabolic Syndrome and 25-Hydroxyvitamin D Concentration in Elderly People without Vitamin D deficiency. Sci Rep. 8(1):17052. 2018
57) Chiu KC et al. Hypovitaminosis D is associated with insulin resistance and beta cell dysfunction. Am J Clin Nutr. 79:820-5. 2004
58) Issa CM. Vitamin D and Type 2 Diabetes Mellitus. Adv Exp Med Biol. 996:193-205.2017
59) Mitri J, Pittas AG. Vitamin D and diabetes. Endocrinol Metab Clin North Am. 43(1):205-32. 2013
60) Tiwari S et al. Vitamin D deficiency is associated with inflammatory cytokine concentrations in patients with diabetic foot infection. Br J Nutr. 112(12):1938-43. 2014
61) Yuan YF. Vitamin D Ameliorates Impaired Wound Healing in Streptozotocin-Induced Diabetic Mice by Suppressing Endoplasmic Reticulum Stress. J Diabetes Res. 2018:1757925. 2018
62) Razzaghi R et al. The effects of vitamin D supplementation on wound healing and metabolic status in patients with diabetic foot ulcer: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Diabetes Complications. 31(4):766-772. 2017
63) Derakhshan H. Vitamin D and diabetic nephropathy: A systematic review and meta-analysis. Nutrition 31(10):1189-94. 2015
64) Li J. Efficacy of vitamin D in treatment of inflammatory bowel disease: A meta-analysis. Medicine(Baltimore). 97(46):e12662. 2018
65) He L. Gut Epithelial Vitamin D Receptor Regulates Microbiota-Dependent Mucosal Inflammation by Suppressing Intestinal Epithelial Cell Apoptosis. Endocrinology. 159(2):967-979. 2018
66) Mattila T et al. Airway obstruction, serum vitamin D and mortality in a 33-year follow-up study. Eur J Clin Nutr. 2018 Sep 13. doi: 10.1038/s41430-018-0299-3.
67) Zhu M et al. The association between vitamin D and COPD risk, severity, and exacerbation: an updated systematic review and meta-analysis. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 11:2597-2607. 2016
68) Bellan M et al. Role of Vitamin D in Rheumatoid Arthritis. Adv Exp Med Biol. 9966155-168. 2017
69) Lee YH, Bae SC. Vitamin D level in rheumatoid arthritis and its correlation with the disease activity: a meta-analysis. Clin Exp Rheumatol. 34(5):827-833. 2016
※本記事は、法政大学 人間環境論集19巻2号に掲載された論文「ビタミンDの健康効果」を著者の許可を得て改編・転載しております。
同じタグの記事を読む