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子どもたちが、親の認知機能を心配しなくてよい未来へ

この記事の執筆者

鎌倉元氣クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学医学部内科助教授を経て、2000年〜2008年同大学保健学部救 ... [続きを見る]

認知症を患った母親を家族で支え、その変化を間近で見てきたピーター夫妻。子どもたちが「両親もいつか同じようになるのでは」と不安を抱いたことをきっかけに、夫妻は脳の健康と向き合い始めます。認知機能やバイオマーカーを確認しながら、食事、運動、栄養、知的活動など日々の習慣を見直していった一家の経験から、将来をただ心配するのではなく、今できることに目を向ける大切さを紹介します。

「子どもたちに、私たちの認知機能低下を心配させたくない」ある家族が始めたこと

「年を取れば、認知機能が低下するのは仕方がない」

そう思っている方も少なくないかもしれません。

けれど、もし自分の親が認知症になり、その変化を家族みんなで見守ってきたとしたら。

「自分もいつか同じようになるのだろうか」 「子どもたちに同じ思いをさせてしまうのではないか」

そんな不安を抱くのは、ごく自然なことではないでしょうか。

これは、母親の認知症を家族で経験したピーターと妻、そしてその子どもたちの物語です。

祖母の認知症を見て育った子どもたち

ピーターの母親が認知症を発症したとき、家族の生活は大きく変わりました。

一時期、母親はピーター夫妻と一緒に暮らしていたため、家族は認知症によって日常生活が変化していく様子を間近で経験しました。

記憶が少しずつ失われ、自分でできることが減り、それまで当たり前だった生活が難しくなっていく――。

当時まだ幼かったピーターの子どもたちも、成長するにつれて祖母の変化を目の当たりにしました。

そして、やがて子どもたちは自分たちの両親について考えるようになります。

「お父さんやお母さんも、いつか同じようになるの?」

「認知症は、年を取ったら避けられないものなの?」

その心配は、ピーターにとってもつらいものでした。

「こんなに若いうちから、子どもたちにこのような不安を背負わせたくない」

母親が亡くなった後、ピーター夫妻は一つの決断をします。

将来のことをただ心配するのではなく、今、自分たちにできることを始めようと考えたのです。

「心配」から「知って、行動する」へ

ピーター夫妻は以前から、栄養や健康的な年齢の重ね方に関心を持っていました。

しかし、母親の認知症を経験したことで、「脳の健康」は自分たちにとって切実なテーマになりました。

そこで二人が考えたのは、将来を予測することではありません。

まずは自分たちの今の状態を知り、これからのためにできることを一つずつ実践していくことでした。

認知機能の状態を確認するテストや、脳の健康に関連するバイオマーカー検査を受け、食事や生活習慣も見直していきました。

検査してからこそ分かったこと

ピーターは認知機能テストを継続して受け、そのスコアは51から73へと向上しました。

さらに、検査によって分かったのがホモシステイン値です。

食事や生活習慣にはすでに気を配っていたものの、数回の検査では約12µmol/Lと、本人が望むより高い状態が続いていました。

そこで、検査結果を確認しながらさらに調整を行い、ビタミンB12を取り入れたところ、ホモシステイン値は11.9µmol/Lから7.16µmol/Lへと低下しました。

自覚症状だけでは分からない身体の状態もあります。

ピーターにとって検査は、単に「良い・悪い」を知るためのものではなく、自分が行っていることを確認し、次の行動につなげるための手段になっていきました。

特別なことではなく、毎日の習慣を変えていく

夫妻が行ったのは、何か一つの特別な方法ではありませんでした。

超加工食品を減らし、発酵食品を日々の食卓に取り入れる。必要に応じてサプリメントを活用する。

そして、よく歩き、身体を動かす。

クロスワードパズルなどで頭を使うことも続けました。

大切にしたのは、完璧を目指すことではなく、無理なく、楽しみながら続けられること。

栄養、運動、睡眠、代謝の健康、人とのつながり、そして学び続けること。

脳の健康は、どれか一つだけではなく、こうした日々の小さな積み重ねによって支えられていく――夫妻の生活も、少しずつそのように変わっていきました。

一番大きく変わったのは「家族の気持ち」

時間が経つにつれ、ピーター夫妻は頭が以前よりすっきりしていると感じたり、年齢を重ねることを前向きに考えられるようになったりと、さまざまな変化を感じるようになりました。

しかし、何より大きかったのは、家族の気持ちの変化だったのかもしれません。

両親が脳の健康について学び、自分たちにできることを実践している姿を見て、子どもたちの不安も少しずつ和らいでいきました。

さらに、子どもたちやそのパートナーも、栄養や脳の健康、予防について関心を持つようになったのです。

認知症を経験した一つの家族から始まった取り組みが、いつしか家族みんなで「これからどう健康に年齢を重ねていくか」を考えるきっかけになりました。

そしてピーターは、これまでの取り組みを振り返り、こう語っています。

「私たちの子どもたちは、もう私たちの認知機能の低下を心配する必要はありません」

検査の数値やサプリメント以上に、ピーターにとって大切だったのは、このことでした。

将来を心配するだけでなく、今できることを

この家族の物語が伝えているのは、「これをすれば認知症にならない」ということではありません。

将来の健康に絶対的な保証はありません。

それでも、自分の現在の状態を知り、食事や運動、睡眠など毎日の生活を見直し、自分にできることを少しずつ積み重ねていくことはできます。

大切な記憶を守ること。

できるだけ長く自立して暮らすこと。

家族や大切な人とのつながりを保つこと。

そして、年齢を重ねることを必要以上に恐れず、前向きにこれからの人生を歩んでいくこと。

「認知機能の低下が心配だから何もしない」のではなく、「今の自分を知ることから始めてみる」。

ピーター一家の経験は、そんな選択肢があることを私たちに教えてくれます。

<出展>

Food for the Brain Foundation

“Our Children No Longer Need to Worry About Our Cognitive Decline”

https://foodforthebrain.org/no-need-to-worry-about-cognitive-decline/?utm_source=Food+for+the+Brain+Foundation&utm_campaign=4e481234d3-sun21stJune_COPY_03&utm_medium=email&utm_term=0_47a885e6cd-fa2c2844a0-297058457&mc_cid=4e481234d3&mc_eid=174b6b4d95

 

※本記事は、Food for the Brain Foundationに掲載された記事をもとに、日本オーソモレキュラー医学会にて翻訳・編集しています。

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