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『新型コロナにビタミンCと亜鉛は無効』と主張した論文は有効データだった

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学医学部内科助教授を経て、2000年〜2008年同大学保健学部救 ... [続きを見る]

米国医師会雑誌に掲載された『新型コロナにビタミンCと亜鉛は無効』と主張した論文が、外部調査で有効データだったことが判明しました。

新型コロナウイルスの感染と重症化の予防のための栄養素摂取推奨量

2020年1月、国際オーソモレキュラー医学会は新型コロナウイルスの感染と重症化の予防にビタミンC、ビタミンD、亜鉛、セレン、マグネシウムの推奨を発表しています<表1>。

このときの摂取推奨量は、その後の臨床研究や治療の基準として各国に拡がっています。

<表1>国際オーソモレキュラー医学会が推奨する新型コロナウイルスの感染予防の栄養素

クリープランドクリニックが「新型コロナにビタミンCと亜鉛は無効」と主張

ところが、2021年2月12日に米国医師会雑誌に掲載されたクリーブランドクリニックの論文は、私たちの提唱に真逆の結果を出したのです。「新型コロナウイルスと診断された患者のランダム化比較試験の結果、ビタミンCと亜鉛のサプリメントの投与は症状の持続期間を有意に短縮しない」というのです。

ビタミンCには抗酸化作用、免疫調整作用、亜鉛によるウイルス自己複製抑制作用などが明らかにされています。臨床的にもビタミンCや亜鉛が新型コロナウイルス感染の重症度や死亡率を減らすという研究結果も発表されていました。

しかし、クリーブランドクリニックは米国オハイオ州クリーブランド市に本拠を置く米国屈指のハイレベルな病院と質の高い研究機関です<写真1>。

<写真1>クリープランドクリニック

有名なクリーブランドクリニックからでた論文であることから、その影響力ははかりしれません。

その論文の概要は次の通りです。

【研究目的】

新型コロナウイルスに感染した外来患者の重症度と有症状期間について、高用量の亜鉛とアスコルビン酸サプリメント投与の有用性についてランダム化比較試験を行う。

【対象と方法】

外来でPCR陽性と診断された新型コロナウイルスに感染した有症状の患者214人を①ビタミンC1日8gを10日間、②グルコン酸亜鉛1日50mgを10日間、③ビタミンCと亜鉛、④通常治療の4群に分けて評価しました。

【結果】

症状の50%減少達成日数は、ビタミンC投与グループが平均5.5日、グルコン酸亜鉛グループ5.9日、ビタミンC+亜鉛グループ5.5日と、通常治療グループ6.7日と比べて短縮をしていたが、統計的に有意な差はなかった(図)。

28日目の評価で、治療群間で死亡率や副作用などの二次転帰に有意差はありませんでした。

<図>クリーブランドクリニックの研究結果

新型コロナ感染による症状の持続期間をビタミンC、亜鉛の投与で短縮しないと結論(JAMA Netw Open. 2021;4(2):e210369を参考に本図を作成)

【結論】

この臨床試験において、高用量のグルコン酸亜鉛、ビタミンC、または2つのサプリメントの組み合わせた治療は、標準治療と比較して症状の持続期間を有意に短縮しませんでした。

さらに追い打ちをかけるようにジョンズホプキンス大学心臓病予防センターのエリン・ミカス教授が米国医学会誌の同じ号で、「そもそも限られたデータだけでビタミンや亜鉛などのサプリメントが新型コロナに有効であるという風潮は、クリーブランドクリニックのようなハイレベルの研究で一掃してもらいたい」というコメントを寄せています。その中で、トランプ前大統領が新型コロナに罹患したときに根拠なく亜鉛とビタミンDを摂取していたと指摘していました。

クリープランドクリニックの研究には見逃せない問題点があった

国際オーソモレキュラー医学会の研究者らはこの論文をすぐさま検証を始めました。

彼らのディスカッションの様子はグループメールのやり取りで知ることができます。そして、この研究の問題点を明らかにしました。

①既に症状がある患者なので、PCR検査の結果を待たずにビタミンCと亜鉛の投与を開始すべきであった。患者が外来でPCR検査を受け、その結果を知らされ、再び外来を受診するまでに2〜5日間の投与の遅れがおきる。その間に症状は進行してしまう。治療は早ければ早いほど効果的である。

②ビタミンCと亜鉛の投与を10日間だけである。もっと長い期間の投与をすべきであった。

③グルコン酸亜鉛を50mg投与している。これは純粋な亜鉛量としてはたった6.5mgでしかない。

これは国際オーソモレキュラー医学会で提唱した20mgよりも著しく低い。また、既に感染している患者を対象にしているので、亜鉛量として100mgを投与するべきであった。

④ビタミンDを治療に加えるべきであった。

⑤そもそもこの研究設計では失敗する運命であった。

再分析をしたらビタミンCは回復率を70%増加していた

極めつけはヘルシンキ大学公衆衛生学のハリ・ハミラ教授<写真2>の行動です。

<写真2>ヘルシンキ大学公衆衛生学のハリ・ハミラ教授

ハミラ教授はクリーブランドクリニックの研究データについて詳細に再分析をしました。

何とビタミンCを投与すると従来治療に比べて治癒速度が71%も早いことが明らかになりました(p=0.025)。さらに症状分布分析をしたところ、通常治療群の60%回復が9日間に対し、ビタミンC群では6日間と有症状期間を3日間も短縮したのです(p<0.001)。

クリーブランドクリニックの研究者は、ビタミンCが新型コロナウイルス感染に有効であるのに効果がないとミスリードしていたことになります。

しかし、米国医師会雑誌という著名誌に掲載されたクリーブランドクリニックというこれも一流の医療機関からの論文は、仮に結果が誤っていたとしてもどんどん一人歩きをします。

国際オーソモレキュラー医学会ではビタミンCが新型コロナの回復に有用であるという事実を世界に伝えていきます。

おわりに

自分と家族の免疫を十分に高めことこそ今、すべきことです。そのためにも国際オーソモレキュラー医学会が推奨するビタミンC,ビタミンD、亜鉛を取り、運動やストレスの解消、そして良質な睡眠をとり、免疫を高めていきましょう。

<参考資料>

  1. JAMA Netw Open. 2021;4(2):e210369.
  2. JAMA Network Open. 2021;4(2):e210431.
  3. https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-289381/v1

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