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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

オーソモレキュラー医学の口腔治療への応用

執筆者:Gilbert H. Crussol, D.M.D., F.I.C.D.

OMNS2019109日) 私は医学研修時代に抗生物質や抗炎症薬、鎮痛薬を使うよう指導されてきたので、最初は自分の患者に必ずそれを使うようにしました。しかし、わずか12年で自分がいかに間違っていたか悟り、そうした薬を処方しておけば良いという考えを改めました。私の処方した薬は、ほとんどの患者に不評で、後になって思えば必要なかったのです。また、私が患者に良質な栄養摂取を勧めるようにすると、ほとんどすべての患者に急速かつ大幅な改善が見られました。ある年の真冬に開かれた栄養学会に出席した私は、良質な栄養摂取がいかに全身の健康状態を良くし、多くの進行性疾患を予防し得るか論じたDr. Emanuel Cheraskinらの講演を聞きました。患者の治療には、やみくもに抗生物質や鎮痛薬、抗炎症薬を使うよりはるかに良い方法があることに私はそのとき気付きました。

ほとんどの動物(霊長類とモルモット以外)は、ストレスがかかると肝臓でのビタミンC生産量が通常の34倍に増えるということを学んだ私は、患者が歯科の生理的・精神的ストレスを受ける前にビタミンCを投与するようにしました。その後、私の診療所から抗生物質、抗炎症薬、消毒剤は消え、鎮痛薬も滅多に使わなくなりました。Dr. CheraskinDr. PaulingDr. PfeifferDr. RiordanDr. PasswaterDr. Hofferほか多くの医師の教えのおかげで、私はオーソモレキュラー医学を効果的に自分の歯科診療で用いることを学んだのです。

患者の精神的状態

歯科処置はしばしば精神的なストレスを伴います。私は、どの患者に対しても、集中的な口腔治療を受ける前に、良質な食生活、そして適切な高用量のビタミンとミネラルのサプリメント摂取も必要に応じて実践してもらうことから始める、という方針に至りました。これには、精神衛生上の問題がある人や、応急手当が必要な人も含まれました。良質な栄養摂取によって、口の中も、体も、心も早く回復し得ることに私は気付いたのです。

治療前の所見で正常であった患者が、口腔治療によって生じたストレスによって精神状態が悪化したり精神的な問題が生じることは多いと感じています。しかし、集中的な歯科治療の前にビタミンC治療をしておく(たとえば、予約日の数日前から1日当たり3,00010,000 mgのビタミンCを摂取する、予約日の前日に3,000 mgのビタミンC点滴をするなど)と、患者の精神状態に大きな改善をもたらすことが多いことがわかりました。

ビタミンC点滴で痛みを予防

私は、外科処置を受ける患者に対し、予約日の前日もしくは予約時間の直前に、30 g30,000 mg)のビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)点滴を行う処置を数年前に始めました。結果的に、外科処置の程度や長さを問わず、「いつもの」痛みが大幅に軽減され、患者が不快症状を訴えることはありませんでした。一方、外科処置前にこれだけの量を点滴投与することなく、後に点滴を行って痛みを抑える場合には、120 gもの量が必要となることもありました。

私の標準的な治療計画は、汚染や感染があるすべての歯肉組織、骨組織、歯系組織を外科処置で除去します。処置部位に消毒薬(ベタダインなど)が触れることはありません(こうした消毒薬は外用ですが、一般外科医がふんだんに注いで腹腔内に入り込み、深刻な結果をもたらすことも少なくありません)。私の診療所では、骨組織、結膜組織の部位と洞部の洗浄にあたり、点滴用のビタミンC溶液しか使いません。これは殺菌作用と抗酸化作用があるpH 7.4の等張溶液で、傷の治りと骨の再生を速めます。

外科処置後の状態

口腔の感染部位を外科的に除去し等張ビタミンC溶液で洗浄をする場合、その外科処置の前後にビタミンC点滴を行うと、炎症や外科処置後の痛みがすぐ消えることがわかりました。長期にわたる疾患にも、こうしたオーソモレキュラー療法は明らかに効果や解消をもたらしています。たとえば、よく知られていることとして、歯の健康状態が悪いと体の場所を問わず炎症を生じるおそれがあり、心疾患、リウマチ、白血病、アレルギーその他の感染症の一因となりかねません。ここに来る歯科患者を見ていると、ビタミンC療法だけで、歯以外の体のいくつかの部位の健康状態が良くなることも多いのです。

顔と手の大やけど

35歳のある女性は、自動車事故で恐ろしいやけどを負い、皮膚の移植手術を5年間で40回受けました。字も絵も書けない状態で、口は指が1本入る程度しか開かず、一部の食品においては肝臓がほとんど耐えられず、また広場恐怖症もありました。ところが経口ビタミンC剤を110 gずつ摂るようにしたら、広場恐怖症と肝臓の問題は1カ月で解消し、口の開き方と、移植した顔の皮膚の弾力性にも見事な改善が見られました。そして3カ月後には、字や絵をきれいに書くこともできるようになりました。鼻の皮膚の最終移植手術では抗生物質の必要もなく、回復の早さと移植結果に外科医たちはとても驚いていました。彼女は生き返ったのです。

壊血病による急性歯周症

別の35歳の痩せた女性は、息をするたび上の前歯数本が前後に揺れていました。揺れ方があまりにも大きいので、どんな歯周治療をしても歯を救えないことは明白と思われました。舌側歯肉の探針をしたところ、プローブは根尖まで達しました。彼女の栄養状態はひどいものでした。そこで、特定した食品を13回食べるとともにビタミンC1日当たり10 g摂るよう指導しました。健康状態が少しでも良くなったら診療所に電話するよう頼んでおいたところ、彼女は2カ月後に電話をかけてきて、眼鏡がなくても字が読めるようになったと言いました。6カ月後にもう一度電話をかけてきたときには、ホルモン剤の服用をやめた(もう必要なくなった)と声高に話しました。そして1年後に電話をかけてきたとき、歯周病の検査を受けに来ることをしぶしぶ承知しました。検査ではもうプローブは入りませんでした。強く完全に再付着していたのです。どんな歯周治療も必要ありませんでした。今や彼女は強い人格の持ち主となり、もう痩せこけてはいません。

鉛中毒

大手石油会社の取締役である40歳の男性は、絶望した様子でやって来て、無味覚症と無嗅覚症(味覚と嗅覚の喪失)が何カ月も続いていると訴えました。検査やヒアリングを行ったところ、会社の電話設備用の鉛電池がすべて、彼のオフィスにあるロッカーに保管されていることが判明しました。彼は役員室から移動し、ビタミンC1日当たり10 g摂るようにしたところ、1週間後には味覚と嗅覚が正常に戻りました。

灼熱感のある舌の痛み

ある女性は、舌痛症(灼熱感のある舌の痛み)に悩まれていましたが、精白糖を全く摂らないようにし、十分な量のビタミンCを摂った結果、症状が消えたことに気付きました。

精神衛生、ヘキサクロロフェン過敏症

40歳のある女性医師は、精神的な極度の疲労とストレスで毎月15日間は入院していました。カウンセリングの結果、ヘキサクロロフェン入りの石鹸を1日に20回以上使っていることがわかりました。この石鹸を使わないようにしたら、そうした精神的負担はなくなりました。

リウマチ

5人の子どもを持つ35歳のある女性は、(自分や子どもを頻繁に脅かす)統合失調症の夫と結婚していました。彼女は急性リウマチのためコルチゾンを常用していましたが、それでも良くならず、家族を養うことも、子どもの世話をすることもできない状態でした。そこで有毒な歯科材料をすべて取り除き、高用量のビタミンC療法と併せて良質な食生活を実践した結果、テニスをしたりスキーに行くこともできるようになり、5人の子どもも養えるようになって、ここ17年は立派に子どもの面倒を見ています。

顔面まひ

自動車事故による唇の感覚異常が20年続いていた男性は、6回にわたるビタミンC点滴の後、症状の消失を見ました。この55歳の弁護士は、顔面まひを患って以来、話すことも、目を閉じることも、唾液を溜めておくこともできませんでした。彼は1時間おきにビタミンC500 mg摂るよう勧められ、10日後には麻痺が無くなりました。

結論

歯科医学に伴うとされる危険や、歯科医学によって生じる危険の多くは、良質な栄養摂取によって防ぐことができます。誤診や誤治療は、壊血病や中毒、薬による被毒を引き起こすことがあり、それが慢性的な痛み、進行性の疾患、絶望感というものをもたらしたり、死にさえ至るおそれもあります。患者に良質な栄養摂取を行わせ、あらゆる必須栄養素を十分な量施せば、体の自然治癒力と免疫防御力が発揮されて進行性疾患の予防と回復をもたらします。これが特に当てはまるのは、一般的な歯科疾患であり、従来の診療方法では感染部が完全に除去されないことが多いのです。感染症は栄養不足によって生じることが多く、感染部を外科処置で除去するとともに、ビタミンCの点滴とビタミンCによる洗浄を行えば、感染部の治癒は可能です。

Dr. Gilbert H. Crussolは、スイス国ローザンヌにあるForum de Sevelinの教授で、米国口腔医学・毒物学会のメンバーであり、パリの大学の法医学部犯罪科学専攻にて学位を取得している。スペイン国ナバラ州在住。)