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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

サプリメント: 本当の話

■食品か錠剤か?

(OMNS(分子矯正医学ニュースサービス)、2012年1月17日) 栄養学版「キャッチ=22」の話として、一般人が次のような紛らわしい指導を受けたとする。「ビタミンは体に良いが、サプリメントで摂るの良くない。食品から摂らなければ効果はない。体に良い食品を食べるだけにしよう。サプリメントは摂ってはならない! しかし、話は変わって、天然ビタミンと合成ビタミンとの違いはない。」

ちょっと待ってほしい。本当のところはどうなのだろう?

健康に関する最近のある研究報告によると、血中ビタミンC値が高いほど心不全のリスクが低いということである[1]。この研究で、ビタミンC(アスコルビン酸)による効果は、きわめて有意なものであった。血漿アスコルビン酸値が最低のグループでは、心不全のリスクが最も高くなっており、ビタミンC値が最高のグループでは、心不全のリスクが最も低くなっていた。この研究結果は、心血管の健康にとってビタミンCが主要な必須要素であるという、この50年間で得られた知識を裏付けるものである[2,3]。この研究は、食事とビタミンサプリメントに関する重要な疑問をいくつか提起している。

■摂取源は食品か、サプリメントか?

この報告では、ビタミンCについて、被験者が果物と野菜をどれくらい摂取しているか示す単なる目安であるかのように論じていた。しかし、皮肉なことに、結果として、果物と野菜の摂取による心不全リスクの改善はほとんど見られなかった。つまり、心不全リスクの低下における真の要因は、実はビタミンCの摂取量だったのである。また、この研究は、心血管の健康改善のためにビタミンCのサプリメントが広く使用されていることを全く無視しているようである。実際には、四分位数によって分けられた4つのグループのうち、血漿ビタミンC値が最高のグループでは、ビタミンCのサプリメントを補給していた率が、血漿ビタミンC値が最低のグループの6~10倍となっていた。しかし、この事実は強調されていなかった。食品から摂るビタミンCにこの種の選択的注意を払う一方、重要な摂取源としてのサプリメントを無視するいうのは、ビタミンサプリメントの重要性を過小評価する試みと思われる。

医学・栄養学関連の多くの報告書にて、天然ビタミンと合成ビタミンにはほとんど差がない、と主張されている。一部の必須栄養素については、これが当てはまることがわかっている。広く市販されているビタミンCの錠剤に含まれているアスコルビン酸は、果物や野菜に含まれているアスコルビン酸と全く同じである[3]。Linus Paulingは、この事実を強調しており、グルコースから安価な方法で製造された一般的なビタミンCでも、いろいろな重要な点で健康を改善することができる、と説明している[4]。実際、上記の研究は、具体的には血漿アスコルビン酸値を測定したものであり、これが心不全のリスク低下と関連がある重要な要因であることがわかっている[1, 2]。果物や野菜に含まれるこの成分について血漿値を測定したのでなく、ビタミンC値を測定したのである。

この劇的な発見の論理的根拠としてわかっているのは、ビタミンCは、いくつかのメカニズムにより、動脈の炎症を防ぐ効果がある、ということである。ビタミンCは、動脈の主構成要素であるコラーゲンの合成に必要な補因子である。またビタミンCは、全身における重要な抗酸化物質でもあり、ビタミンEやグルタチオンのような他の抗酸化物質を動脈壁で再利用するのに役立つことがある[2,3]。これについては、高血漿ビタミンC値は脳卒中リスクの50%低下に関連がある という報告によって強調されている[5]。

■合成ビタミンには臨床上の効果がある

我々が言うと「定期購読をやめる」のリンクをクリックする音が聞こえてきそうだが、実のところ、合成ビタミンCは、実際に病気を抱えている現実の人間には効き目がある。アスコルビン酸の有効性については、食品摂取量と直接の関係はほとんどない。その劇的な例として、ニュージーランドのある酪農家は、不透明肺、腎不全、白血病および豚インフルエンザを患い、生命維持装置につなげられていたが[6]、1日100,000 mgのビタミンCを与えられ、命が救われた。我々は、オレンジなど、ビタミンCを含む食品には何の反感も持っていない。果物と野菜は、非常に多くの理由で体に良い。しかし、これほどのビタミンCを摂るには、どれだけのオレンジが必要か、計算機を取り出して計算しなければならないし、次に、病気の人にそれを全部食べさせる方法も考えなければならない。

ビタミンCの補給によって肝機能が改善することは立証されており、同様に、免疫系が正常に機能するためには十分な量のビタミンCが不可欠であることもよく知られている。ビタミンCは、白血球が細菌やウイルスと闘う能力を高める。OMNSでは、他の記事でもこの話題について広く扱っている(http://orthomolecular.org/resources/omns/index.shtmlにて無料閲覧可。)

ビタミンC不足はきわめて多く見られる。米国農務省(USDA)のデータによると[7]、米国人の半数近くは、米国のRDA(1日の推奨摂取量)分のビタミンCさえ摂っていない。この推奨量は、わずか90 mgである。

■合成ビタミンEのほうが効果は低い

他の一部の栄養素については、合成型と天然型とで、有効性に有意な違いがある。ビタミンEは、きわめて重要な抗酸化物質であり、体内で他の機能も果たしているが、すべてが十分把握されているわけではない。ビタミンEは、8種類の生化学的形態、つまり、a-トコフェロール、a-トコフェロール、a-トコフェロール、a-トコフェロール、a-トコトリエノール、a-トコトリエノール、a-トコトリエノール、a-トコトリエノールから成る。ビタミンEのこれらの形態のすべてが、身体にとって重要である。ビタミンEの機能に関する最新の知識は急激に広がっており、天然ビタミンEのこの8つの形態はそれぞれ、体内でわずかに異なる機能を果たすと考えられている。たとえば、a-トコトリエノールは実際、前立腺ガンの幹細胞を殺す効果が化学療法よりも高い(http://orthomolecular.org/resources/omns/v07n11.shtml)。

合成ビタミンEは、広く市販されており、安価である。これは「DL-a-トコフェロール」で、試験管実験では、天然の「D-a-トコフェロール」型と同じ抗酸化特性が見られている。しかし、DL-型のものは生物学的な有効性が50%にすぎない。なぜなら、体内では天然のD異性体のみが利用され、これが合成混合物の半分を占めているからである[8]。したがって、DL-a-トコフェロールを用いた研究では、この事実を考慮に入れていないと、最初から投与量がすでに半分の状態で進めることとなり、必然的に、観察される有効性は低下する。

その次に、酢酸エステルやコハク酸エステルなど、エステル化された形態のビタミンEがある。このようなエステル化されたものは、エステルがビタミンEの酸化と中和を防ぐため、天然であれ、合成であれ、保存寿命が長くなる。胃酸によって、もとの天然ビタミンE分子から酢酸やコハク酸の部分が開裂されると、腸管にて、かなりの割合で吸収することができ、身体に抗酸化効果がもたらされる。ただし、ビタミンE酢酸エステルを炎症予防のため皮膚に塗っても、酢酸エステルを取り除く酸が存在していないため、効果はない。

USDAのデータ[9]によると、驚いたことに、米国人の90%は、RDA分のビタミンEを摂っていない。この推奨量は、信じられないような値だが、1日当たり23 IU(15mg)未満とされている。

■広く見られるマグネシウム不足

もう一つの例としてマグネシウムを挙げる。米国人の3分の2以上は、RDA分のマグネシウムを摂っていない [10]。マグネシウム不足は、骨粗しょう症、高血圧、心疾患、喘息、うつ、糖尿病など、様々な症状を引き起こすことがある。購入可能なマグネシウムには、いろいろな形態がある。最も広く市販されているものは、酸化マグネシウムだが、これは5%程度しか吸収されないので、それほど効果はない[11]。酸化マグネシウムのサプリメントに人気があるのは、小粒の錠剤だからである。マグネシウムの含有量は多いが、ほとんどの人には役立たない。それより優れている形態のマグネシウムとして、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウムがあり、最も吸収が良いのは塩化マグネシウムである。理想的な摂取量を決めるためには、かかりつけの医師に相談するのが常に良策となる。検査すると、意外に欠乏していることがわかることがある[12]。

■果たしてどちら? 天然か合成か?

天然型のビタミンE(天然のトコフェロールとトコトリエノールが混ざっているもの)は、合成型の2倍以上の効果があるが、このことは、ビタミンCには当てはまらない。身体が野菜や果物から取り込むアスコルビン酸塩は、ビタミンCの錠剤に含まれているアスコルビン酸塩と同じものである。これは一見、紛らわしいと思われるかもしれない。多くのいわゆる「天然」型ビタミンCが広く市販されているからである。しかし、ビタミンC補給による闘病効果を実証した研究はほとんどすべて、平凡で安価な合成アスコルビン酸を用いたものであった。アスコルビン酸のナトリウム塩やマグネシウム塩など、他の形のアスコルビン酸塩は、腸管での消化方法がわずかに異なるが、その形からいったんアスコルビン酸塩分子が吸収されれば、有効性は全く変わらない。このようなアスコルビン酸塩は、非酸性であるため、酸性による刺激を気にすることなく、摂取したり、身体のどの部分であれ局所的に塗ったりできるという利点がある。

また、必須栄養素は共生的なものであることがわかっている。つまり、適正量にて、一まとめにして摂るほうが効果が高い。たとえば、ビタミンEは、ビタミンCとセレンと一緒に摂るほうが効果的である。というのは、こうした必須栄養素のそれぞれが他の栄養素の有効性を高める可能性があるからである。同様に、ビタミンB群も一緒に摂るほうが効果的である。用量を知りたい読者は、医療機関に相談する方法もあるが、以下のサイトにも自由に見られる情報が掲載されているので見てほしい:http://orthomolecular.org/resources/omns/index.shtml

■フードファクター(食品因子)

自然食品という因子も重要である。バイオフラボノイドなど、新鮮な果物と野菜に含まれていてビタミンCを助ける成分(「ビタミンC複合体」と呼ばれることもある)は、確かに健康上の効果がある。こうした天然成分は、健康に良い未加工の自然食品から簡単に摂ることができる。しかし、非常に優良な食事をしていても、疾患に効果をもたらすほどのビタミンCは得られない。本当に優良な食事をすれば、毎日数百ミリグラムのビタミンCを摂ることができるかもしれない。未加工の食品だけを摂る極端な食事をすれば、2,000~3,000 mgのビタミンCが得られるかもしれないが、ほとんどの人は実践できない。実践できるのは、良い食事をしながら補給をすることである。

「天然」ビタミンは合成ビタミンより優れているという主義主張は、実際にビタミンサプリメントを避けるための言い訳として、広く引き合いに出されている。この議論によると、ビタミンとミネラルは食品から天然の形で摂ることができるため、サプリメントを無視することにより、自分は最も豊かな生活をしていると思い込もうとしている人がいるのかもしれない。上記の研究報告では、ビタミンサプリメントについてほとんど言及されていなかったため、執筆者は、おそらく、これと同じように思っていたのだろう。

■結論

加工食品があふれている今日の現状では、ほとんどの人が、必要とするすべての栄養を十分摂っていない。ほとんどの人は、いくつかの必須栄養素が不足している。こうした不足は、心疾患、ガン、早期老化、認知症、糖尿病だけでなく、眼疾患、多発性硬化症、ぜんそくなどの疾患を含む多くの苦痛の原因となっている。心不全リスクの低下におけるビタミンCの有効性を示した上記の研究は、それでも、ビタミンの有用性を示す多くの研究の1つである。http://orthomolecular.org/resources/omns/index.shtmlのサイトでは、他の研究についても考察しており、閲覧できるようになっている。

ビタミンEについては、栄養価の高い食事を摂るとともに、天然型のものを十分な量だけ摂取する方法が、最良の薬となる。一方、ビタミンCは、製造されたのものと天然のものに変わりはない。どちらも生物学的活性があり、どちらも臨床上の効果がある。これはすべて、用量次第である。サプリメントなら最適な量を摂ることができるが、食品だけではそうはいかない。

だまされてはいけない。栄養不足は、例外ではなく 常例なのである。だからサプリメントが必要である。病気であれば、なおさら必要である。

 

参考文献:

1. Pfister R, Sharp SJ, Luben R, Wareham NJ, Khaw KT. (2011) Plasma vitamin C predicts incident heart failure in men and women in European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition-Norfolk prospective study(欧州前向きガン・栄養調査(ノーフォーク前向き研究)の男女被験者における、血漿ビタミンC値による心疾患発生予測). Am Heart J. 162:246-253. 以下も参照のこと:?http://orthomolecular.org/resources/omns/v07n14.shtml
2. Levy TE (2006) Stop America’s #1 Killer: Reversible Vitamin Deficiency Found to be Origin of All Coronary Heart Disease(すべての冠動脈性心疾患の原因であることが判明した可逆的ビタミン欠乏). ISBN-13: 9780977952007
3. Hickey S, Saul AW (2008) Vitamin C: The Real Story, the Remarkable and Controversial Healing Factor(本当の話:注目と話題を集めている治癒因子). Basic Health Publications, ISBN-13: 978-1591202233.
4. Pauling L. (2006) How to Live Longer And Feel Better(寿命を延ばし、具合を良くする方法). Oregon State University Press, Corvallis, OR. ISBN-13: 9780870710964.
5. Kurl S, Tuomainen TP, Laukkanen JA, Nyyssonen K, Lakka T, Sivenius J, Salonen JT. (2002) Plasma vitamin C modifies the association between hypertension and risk of stroke(血漿ビタミンC値によって変わる高血圧症と脳卒中リスクとの関連性). Stroke. 33:1568-1573.
6. 以下のサイトで見られる「チャンネル3」というニュージーランドのニュースレポートを参照のこと:?http://www.3news.co.nz/Living-Proof-Vitamin-C—Miracle-Cure/tabid/371/articleID/171328/Default.aspx?またはhttp://www.dailymotion.com/video/xh70sx_60-minutes-scoop-on-new-zealand-farmer-vit-c-miracle_tech?[ 各映像にはコマーシャルが入っているが、我々にはどうすることもできない。これについて、広告主との金銭的関係は一切ない。 ]
7. 以下のサイトで、論文の全文を無料で見ることができる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1405127/pdf/amjph00225-0021.pdf
8. Papas A. (1999) The Vitamin E Factor: The miraculous antioxidant for the prevention and treatment of heart disease, cancer, and aging(ビタミンEという因子:心疾患、ガンおよび老化の予防と治療に奇跡を起こす抗酸化物質). HarperCollins, NY. ISBN-13: 9780060984434
9.?http://lpi.oregonstate.edu/infocenter/vitamins/vitaminE/?:「Deficiency(欠乏症)」までスクロールのこと。
10. 以下のサイトで、論文の全文を無料で見ることができる:?http://www.jacn.org/content/24/3/166.full.pdf+html(または?http://www.jacn.org/content/24/3/166.long?)
11. Dean, C. (2007) The Magnesium Miracle(マグネシウムの奇跡). Ballantine Books, ISBN-13: 9780345494580
12.?http://www.doctoryourself.com/epilepsy.html

 

日本語訳監修:姫野 友美(ひめのともみクリニック)