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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

マグネシウムを使ったポリオ治療

この効果は氷山の一角?

酸化ストレス

各疾患の共通項として、患部の細胞と組織における細胞内酸化ストレスの高まりがある。この酸化ストレスをどの程度まで低下させその状態で維持できるかにより、治療プロトコールの有効性が決まる。毒素とは酸化促進物質であり、疾患を引き起こす作用因子はどれも、ダメージを加えるため最終的に酸化促進つまり毒素の影響力を高めるのである。感染性疾患はすべて、体全体にわたり酸化ストレスを高めることによってダメージを与える。実質的に、感染の進行と関連しているあらゆる事物によって、また感染進行の一環として、酸化促進性の病原体関連毒素の存在が増すからである。これには、外毒素、内毒素、細胞へのウイルス侵入、ならびに感染が進んだ結果生じたあらゆる酸化促進性の代謝産物(病原体が壊れたとき、もしくは徐々に代謝され処理されたときの大量の遊離鉄を含む)などがある。実際、一部の感染症にて考えられる空間占拠性(最終的に血管をむしばんで出血や致命的な結果さえもたらす集中的酸化のようなもの)を除けば、感染症は、体の抗酸化能力を消耗させ全身の酸化ストレスを高める程度の無能力化のみをもたらす。少し言い方を変えて正確に表現するなら、疾患とは酸化が増えた状態である。酸化された(そして結果として相対的または完全に機能が失活した)生体分子の数が多いほど、疾患の兆候がはっきり現れるのである。

マグネシウムとビタミンC

とくに急性感染性疾患(典型的な例としてウイルス性疾患)の場合、血清ビタミンC値がきわめて低い値まで下がることがあり、尿検査では測定不能となる場合さえある。こうしたビタミンCの減少に呼応して、一般的にマグネシウム濃度も低下する。高くなった細胞内酸化ストレスを正常化する上で、また、急性感染症の消散や慢性疾患の病状軽減において、ビタミンCとマグネシウムには治療上の強力な相乗効果があるように思われる。細胞内酸化ストレスの増加を最初にもたらしたのが感染症であれ別の毒素であれ、高くなった酸化ストレスを正常な生理的レベルまで戻すことができれば、細胞内の生理機能は正常化し、細胞は治癒したと実質的にみなすことができる。

マグネシウムは、感染症と闘う際、スカベンジ(捕捉)をする白血球の貪食能を高める。ビタミンCは、細胞内でのフェントン反応を上方調節することにより病原体を直接攻撃することができ、病原体が壊れるまで細胞内の酸化ストレスが高められる(Vilchèze et al., 2013; Levy, 2013)こうした抗病原体メカニズムは、感染性疾患の治療においてきわめて相乗的なものとなり得る。また、ビタミンCは、スカベンジャーであるすべての免疫細胞の能力を強化する。その仕組みは、常に抗酸化能力がひどく消耗している局所的な感染・炎症領域に、自然免疫反応により免疫細胞が召集されると、ビタミンCが免疫細胞内で集まって、免疫細胞が直ちに抗酸化物質をもっと届けられるようにする、というものである。しかし、以前のいくつかの文献を見ると、少し驚いたのであるが、塩化マグネシウムのみを1日に数回経口投与する方法によって、たとえ麻痺がかなり進んでいた場合でも、急性ポリオが治癒したことが示されているNeveu, 1961; Rodale, 1968)。Dr. Frederick Klennerも、ビタミンCの高用量投与によって、自分の診療所で診察した60例のポリオがすべて完治したという報告をしている。マグネシウムもビタミンCも、独立した作用因として、起源を問わない毒物暴露にて見られる細胞内酸化ストレスの増加という病理を速やかに正常化する能力があることから、こうした結果が得られた可能性が高い。

ビタミンCとマグネシウムはどちらも、増えた細胞内酸化ストレスを下げるという望ましい目的を果たすが、その方法は異なるため、多くの感染症について、ビタミンCもしくはマグネシウムが単独療法としてきわめて有効となり得る可能性は高いと思われる。ビタミンCは、体内で最強の抗酸化物質として、毒素のダメージを受けた細胞内で効率的に集結することができるほど、細胞内酸化ストレスを直接的に低下させる。マグネシウムは、ビタミンCのように直接作用する抗酸化物質ではないが、病んだ細胞内で高くなった細胞質カルシウム値を速やかに引き下げ、同様に、細胞内酸化ストレスの速やかな低下ももたらす。以下の簡潔な事例報告は、15例のポリオ(急性灰白髄炎)について塩化マグネシウムの驚くべき効果を示すものであり、すぐに効果が見られた例もあれば、発症から数カ月後に効果が表れた例もある。

Dr. Auguste Pierre Neveuによるマグネシウムを用いたポリオ治療の事例報告

  1. Dr. Neveuによるポリオ治療の最初の事例は、1943年9月、4歳の男児であった。かなり急に発症。男児は泣いていて、食べようとせず、また左脚で立つことができなかった。Dr. Neveuは塩化マグネシウム5gを250ccの水に混ぜ、80ccを1回分として、午後1時に1回、午後4時にもう1回経口投与した。この2回目の投与の時点で、下肢麻痺の状態は「完全に回復」とみなされた。3時間後にもう1回分投与された。翌朝には、見られていた麻痺も熱も消散していた。症状の再発はなかった。これは、塩化マグネシウムによる治療を受けてから24時間以内に完全に治癒した代表例である。
  2. 2年後、Dr. Auguste Pierre Neveuは2例目のポリオ治療を行った。診察した11歳の男児は、頭痛、首と背中の不快感、ならびに喉の炎症があり唾液を飲み込むのも困難であった。その報告によると、男児の左脚は感覚がなく、立つことが全くできず、まるでぬいぐるみの足のようだった。また、上腕に痛みがあり、目は光に非常に敏感になっていた。直腸温は102ºF(約38.9ºC)であった。

    この男児のためにDr. Neveuは塩化マグネシウム20gを1リットルの水に混ぜた塩化マグネシウム溶液を作った。男児は当日の朝に突然発病し、当日の午後早い時間に初回量125ccを経口摂取し、その後6時間おきに同じ量を継続して摂った。夜の体温は103ºF(39.4ºC)まで上昇した。

    翌日、朝の体温は100.1ºF(37.8 ºC)、夜の体温は101ºF(38.3ºC)であった。男児は最初の夜もよく眠り、どの症状も概して軽減され、起床時には立てるようになっていた。2晩目には食べ物を欲していた。

    その翌日(症状の発現から48時間後)、朝の体温は99.3ºF(37.4ºC)、夜の体温は99.8ºF(37.7ºC)であった。全身の状態は明らかに良くなっていたので、マグネシウムの投与頻度を減らし、8時間おきに125ccとした。

    その翌日、まだ若干光に敏感な様子は見られたが、病気は治癒したようであった。8時間おきに125cという投与は続けられた。

    その翌日(発病から4日目)、完全に回復したとみなされ、マグネシウム療法を中止した。その翌日には、朝の体温が98.6ºF(37ºC)、夜の体温は99.4ºF(37.4ºC)となっていた。
  3. Dr. Neveuによる報告の3例目は、右下肢と腰に完全な麻痺が見られた47歳の女性であった。マグネシウム療法を施すことにより完治が見られたが、治療には12日かかった。
  4. ある13歳の少年は、震えと頭痛の症状が突然現れた。体温は40ºC(104ºF)であった。翌日、体温は38.8 ºCで、頭と首と背中に激しい痛みがあった。目は光に耐えることができず、体温はまた40.4ºCまで上昇した。医師(Dr. Neveuではない)は少年の母親に対し、この子にはポリオの疑いがあると言い、2日以内にもう一度診ると告げた。翌朝、母親は、どの症状もさらにひどくなったと告げた。彼女は以前、Dr. Neveuとそのマグネシウム療法に関する記事を読んだことがあったので、自宅で息子を診てくれるようDr. Neveuを説得した。Dr. Neveuはこの少年の病気を「急速進行性ポリオ」と呼び、(1リットルの水に塩化マグネシウム20gを混ぜた)塩化マグネシウム溶液の初回量125ccを与え、同じ量を6時間おきに与えることとした。その時点で体温はまだ39.6ºCあった。翌朝、頭と首と背中の痛みは治まっていた。朝の体温は37.1ºC、夜の体温は37.8ºCであった。少年は普段どおりの生活を始めた。その翌日、マグネシウム摂取を2回にしたころ、頭に軽い不快症状が戻り、体温も再度38.2ºCまで上がった。その翌日は3回摂取した。その翌日は朝の体温が37.2ºC、夜の体温が37ºCだったので、マグネシウム摂取を中止。完治することができた。
  5. 右下肢の麻痺があった9歳の男児。Dr. Neveuがマグネシウム療法を1週間施すことにより完治。
  6. 背中のこわばりと、神経性の震えが下肢にあった13歳の少女。マグネシウム療法により急速な臨床反応がもたらされた。両親がマグネシウム投与を中止したので、後にDr. Neveuが再開させたが、最終的に左足の親指の伸筋に麻痺が残った。これはおそらく、途中で治療を中止したためと思われる。
  7. 嘔吐に至る持続性頭痛、ならびに首と背中のこばわりがあった20歳の女性。家庭医はポリオを疑った。痛みがあまりにも激しくなったので、この患者は自殺すると脅した。Dr. Neveuによるマグネシウムの初回投与後、女性は眠ることができるほど痛みから解放された。マグネシウム療法を開始してから12日後には完治が実現した。
  8. ポリオで入院し、退院時に両脚に麻痺が残っていた3歳の女児。マグネシウム療法を始めたのは、ポリオにかかってから丸25日後だった。2週間の治療後、下肢の動きはずいぶん回復した。リハビリ後も、少し足を引きずる状態は残った。
  9. すでに両脚と右腕に麻痺があった20歳の男性農業従事者。最初のポリオ発症から32日後にマグネシウム療法を開始。良好な反応が見られ、4カ月の治療後、松葉づえを使った歩行が可能となった。2年後には、ステッキの支えがあるだけで歩けるようになった。
  10. 最初のポリオ発病から4カ月後に初めてDr. Neveuの診察を受けた19歳の女性。彼女の左脚は麻痺していただけでなく萎縮も始まっていた。マグネシウムを使った治療を15日間受けたところ、脚に顕著な改善が見られた。最終的には自転車に乗ることができ、少し足をひきずりながら歩けるようにもなった。
  11. 最初のポリオ発病から17日後にマグネシウム治療を受けた2歳の女児。最初の診察時には、立つことができず、右腕を動かせなかった。両脚は完全に正常な機能を取り戻したが、右肩には麻痺が残った。
  12. 右腕と右脚に麻痺があり、最初のポリオ発病から10日後にマグネシウム治療を受けた4歳の女児。最終的に、腕と脚の機能は劇的な回復を見せたが、力は通常の60%程度にとどまっている。
  13. 診断されてから10日後にマグネシウム治療を受け始めた2歳半の男児。2日後には腹部の麻痺がかなり好転し、2カ月半後には完全な回復が見られた。
  14. この臨床的症候群の発現から12日後に脊椎穿刺でポリオと診断された20カ月の男児。左脚が完全に麻痺していたが、マグネシウムに良好な反応を示し、5カ月後にはほぼ正常な状態に戻ったが、整形外科用の靴による支えが必要。
  15. 喉の痛みと首のこわばりという症状が出た直後にDr. Neveuの診察を受けた12歳の女児。マグネシウム治療が始められたが、最初、こわばりは強くなり、脊椎に沿って下方向に広がったが、マグネシウム療法の継続により、翌朝までにこわばりは消散していた。その翌朝には喉の痛みもなくなっていた。

ポリオに対し、どの形態のマグネシウムにも塩化マグネシウムと同程度の臨床効果があるのか、現時点では不明である。この急性感染症の迅速な消散において塩化物がマグネシウムと一緒に重要な役割を果たすというエビデンスはいくつかある。これは、ごまかしのない臨床研究をすれば簡単に解明できるかもしれない。とはいえ、この塩化マグネシウム溶液を用いたきわめて単純な方法でポリオに対処できるということは、(単独療法としてビタミンCですでに見られているように)同様の好反応が多くのまたはすべての急性ウイルス性感染症でも十分見られる可能性がある、ということである。そうであれば、信じられないほど良く効き安価である療法が、文字どおり世界中で利用できるようになるかもしれない。ビタミンCは素晴らしいが、それでも塩化マグネシウムに比べれば高くつく。

(Dr, Thomas E. Levy は、内科学と心臓病学の認定医である。いくつかの著書があり、マグネシウムに関する近刊書もある。)

参考文献

Klenner F (1949) The treatment of poliomyelitis and other virus diseases with vitamin C.(ビタミンCを用いたポリ

オなどウイルス疾患の治療)

Southern Medical Journal 111:209-214. PMID: 18147027https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18147027

 

Vilchèze C, Hartman T, Weinrick B, Jacobs WR Jr. (2013) Mycobacterium tuberculosis is extraordinarily sensitive to killing by a vitamin C-induced Fenton reaction.(結核菌はビタミンC誘発性のフェントン反応による死滅作用に異常に反応する)

Nat Commun. 4:1881. doi: 10.1038/ncomms2898.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23695675

https://www.nature.com/articles/ncomms2898

 

Levy TE (2013) Vitamin C, Shingles, and Vaccination.(ビタミンC、帯状疱疹、ワクチン接種) Orthomolecular Medicine News Service.http://orthomolecular.org/resources/omns/v09n17.shtml

 

Neveu A (1961) Le Chlorure de Magnesium Dans L'Elevage: Traitment Cytophylactique des Maladies Infectieuses.(家畜における塩化マグネシウム:感染症の細胞防御的治療) Librairie Le Francois: Paris, France

 

See also: Neveu AP. (1958) Traitement cytophylactique des maladies infectieuses par le chlorure de magnésium, la poliomyélite.(塩化マグネシウムによる感染症の細胞防御的治療、ポリオ) 3e édition. 

Neveu A. (1968) Comment prévenir et guérir la poliomyélite.
(ポリオの予防と治療の方法) 5e édition. Traitement cytophylactique des maladies infectieuses par le chlorure de magnésium. (塩化マグネシウムによる感染症の細胞防御的治療) 

Dekopol B. (2018) Le Chlorure de Magnésium Histoire et Manuel Pratique : Traitement des maladies infectieuses chez l'homme et les animaux.
(塩化マグネシウムの歴史と実践マニュアル:ヒトと動物における感染症の治療) 4e édition.

 

Rapp F, Butel J, Wallis (1965) Protection of measles virus by sulfate ions against thermal inactivation.(麻疹ウイルスを熱不活性化から守る硫酸イオン)

Journal of Bacteriology 90:132-135. PMID: 16562007https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/16562007/

Rodale J (with Taub H) (1968) Magnesium, the Nutrient that could Change Your Life.(マグネシウム - 生活の改善をもたらし得る栄養素). New York, NY: Pyramid Publications, Inc.