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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ビタミンB3(ナイアシンアミド)を用いたADHDの治療

目次
    執筆者: Andrew W. Saul編集員

    (OMNS、2013年10月30日) ADHD(注意欠陥多動性障害)は、薬が足らなくて生じるものではない。しかし、深刻な栄養素欠乏、もっと正確な言葉で言えば栄養依存によって生じる可能性は確かにある。栄養素はすべて重要であるが、ADHDの子どもが最も必要としている可能性が一番高いのは、ビタミンB3、つまりナイアシンアミドである。

    60年以上も前に、ナイアシンアミド療法のパイオニアであるWilliam Kaufman, M.D., Ph.D,は、以下のとおり書いている。

    「ナイアシンアミド療法に対し、一部の患者には、実験動物に見られる『走り回りの減少』と臨床的に相当すると思われる反応がある。特定の必須栄養素を実験的に欠乏させた動物には、「過剰な走り回り」、つまり多動が見られる。こうした欠乏状態の動物に、その必須栄養素を十分な期間にわたり十分な量与えた場合には、著しい『走り回りの減少』が見られている。」

    Dr. Kaufmanが言うには、あまりにも効果が奥深いため、ナイアシンアミドによる治療を受けた人は、「自分が飲んだビタミン薬には鎮静剤が入っているのかどうか疑うことがある。…(中略)…この患者の履歴を分析してわかったのは、ナイアシンアミド療法を受ける前、彼は何かをせずにはいられない一種の我慢のなさに悩まされていて、多くの計画を始めては、他に新しい興味が沸くと気が散って未完成のまま放置し、場合によっては、ある程度時間が経ってから、最初の計画を完了するために戻る、という状態であった。それを自覚しておらず、仕事では不注意で能率が悪いことも多かったが、『常に忙しい』状態にあった。」

    この報告は、1949年に刊行されたDr. Kaufmanの著書The Common Form of Joint Dysfunction(一般的な関節機能障害)の73頁に、ほとんど傍注として書かれていたものである。この本には、ADHDの子どもの問題がとても正確に記載されているため、この後、それほど長い間にわたって、ビタミンB3がこれほど完全に無視されていたというのは、信じ難いことである。

    Dr. Kaufmanの続きによると、「ビタミン療法を用いれば、このような患者は、不慣れながらも落ち着いた状態となり、仕事の能率も良くなり、始めたことは片づけるようになる。また、絶えず自分を駆り立てているという感情がなくなり、使い方を知らない余暇の時間を持つようになる。疲れたと感じたら休息できるようになり、疲労にもかかわらず進まずにはいられないと感じることがなくなる。…(中略)…このような患者に、ナイアシン療法を受け続けるよう説得することができれば、やがて幸福感を味わえるようになり、これまで自分が、あり余るほどのエネルギーと活力であると思っていたものが、振り返ってみると、実は、『ねじを巻いたような』異常な感情であったことに気付く。こうした異常な感情は、「ナイアシンアミド欠乏」(ナイアシンの欠乏)の一つの現れである」。(74頁)

    ナイアシンアミドは、多動、ならびに精神集中の欠如に対する効果的な治療薬であるというDr. Kaufmanの見解は、きわめて重要である。注意欠陥多動性障害について、正統医学では、栄養素欠乏を原因要素として認めることさえ不本意な様子であり、ましてや栄養素による治療など言うまでもない。ニュースとなるような栄養関係の情報は、当然ながら、ビタミン剤を批判するものでないかぎり、一般的に、マスコミではまず大きく取り上げられない。ビタミン療法の試験で最も広く公表されているのは、傾向として、低用量での試験か、価値がないものか、否定的なものか、またその3つすべてに当てはまるものである。特定の栄養研究に対するマスコミの注目度というのは、それによる治療効果と反比例しているように見える。

    したがって、マスコミによる矛盾した報道や、不適切な報道、まさにバイアスがかかっていることが明白な報道により、一般人だけでなく医師の多くも、単純かつ安全である自然な方法の力に気付かないままでいる。マスコミが、ビタミン剤の想定上の「危険」を騒ぎ立てる一方、それと同時に、子どもを長い間薬漬けにさせるという極めて本質的な危険を見過ごしているのなら、小事に拘りて大事を忘る、である。(米国FDAが認定している)医師用卓上参考書(PDR)は、副作用の記述であふれているが、ナイアシンアミドの主な副作用は、それを十分に摂らなかったことにある。疾患を治す栄養素の量というのは、その患者にとってその栄養素がどれくらい必要かという程度を示すもので、きわめて多量の場合もある。乾いたスポンジのほうがミルクをよく吸う。

    Dr. Kaufmanが推奨したナイアシンアミドの1回量は比較的控えめ(250 mg)であるが、それを摂る回数(1日6~8回)の重要性が強調されていた。何回にも分けて摂る方法が最も効果的である。ADHDの子どもに必要なナイアシンアミドの正確な量について、親も医師も同様に、思慮深く検討する必要がある。

    高用量のビタミン療法によるDr. William Kaufmanの臨床的成果について、詳しくは下記を参照。

    Vitamin deficiency, megadoses, and some supplemental history (ビタミン欠乏、高用量投与、および一部の補給履歴). William Kaufman, MD, PhDによる1992年4月7日付レター?http://www.doctoryourself.com/kaufman2.html

    The Common Form of Joint Dysfunction (一般的な関節機能障害) (1949) は絶版になって久しいが、全文がインターネット上に掲載されており、下記サイトにて無料で閲覧可能:http://www.doctoryourself.com/kaufman6.html

    Dr. Kaufmanの論文は2002年、ミシガン大学スペシャルコレクションライブラリー(住所:7th Floor, Harlan Hatcher Graduate Library, Ann Arbor, Ml 48109)に収蔵された。
    Eメール:?special.collections@umich.edu?.

    Dr. Kaufmanの文献目録は下記サイトで見られる:http://www.doctoryourself.com/biblio_kaufman.html

    (この記事の多くの部分は、最初、Journal of Orthomolecular Medicine 2003, Vol 18, p 29-32に掲載したものである。その全文は下記サイトにて無料で閲覧可能:http://orthomolecular.org/library/jom/2003/pdf/2003-v18n01-p029.pdf)

    日本語訳監修:姫野 友美(ひめのともみクリニック)