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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

リポタンパク(a):心臓発作・脳卒中の最も大きなリスク因子?

ポーリング療法とビタミンCを用いた私の自己実験

リポタンパク(a)は、リポタンパク質と呼ばれるグループに属するもので、非水溶性の脂質、コレステロール、コレステロールエステルの血中輸送を助ける小さな粒子です。水相の血液内でこうした脂質の輸送を可能とするため、脂質はタンパク質と結合します。リポタンパク(a)はLDL(低密度リポタンパク)粒子1個を核とするもので、LDLとの主な違いは、アポリポタンパク(a)という粘着性のタンパク質がそのLDL粒子を取り囲んでいるという点です。

標準的なLDL検査では、LDLの測定値に含まれるリポタンパク(a)値を割り出すことができないため、リポタンパク(a)だけを調べる検査でその血中濃度を測る必要があります。

リポタンパク(a)は、心臓発作と脳卒中に対する最大のリスク因子と考えられています。5人に1人はこのリスク因子を抱えていて(本人は大抵気付いていませんが)、血中リポタンパク(a)過剰が見られます。これは健康に対する隠れた危険です。

高リポタンパク(a)と早発性心筋梗塞との関連は、早くも
1970年代には疑われていました。今では幾多の疫学的・遺伝学的研究によってその関連性が証明されています。リポタンパク(a)値が最も高かったグループでは、最も低かったグループと比べて、心筋梗塞のリスクが3~4倍高いと結論付けている研究もあります[1,2]

私自身の話

私は11年前に最初の心臓発作を起こした後、初めて自分が高リポタンパク(a)というリスク因子を持つグループの一員であると知りました。その時、私の血中リポタンパク(a)値は79mg/dlで、心臓発作の前はこれがどれほど高かったかわかりません。かかりつけ医や心臓専門医による検査でも、大学病院での検査でも、それまでリポタンパク(a)値を調べたことはなかったからです。

その時まで私は、この「リポタンパク(a)」(略称:Lp(a))というものを全く意識していませんでした。

私のリポタンパク(a)濃度が高いのは両親や祖父母に原因があるのか、また、私に遺伝性の素因があるのかどうかもわかりません。それまで冠動脈疾患の診断を受けたことはなかったので、心筋梗塞を起こすまでどれくらい長く冠動脈疾患があったのか、それもわかりません。

心臓発作後、循環器内科の医師が私のリポタンパク(a)値を測りましたが、何も言われなかったので私は検査報告書にあったその高い数値に対し、特に気を留めませんでした。私の心疾患にとって高リポタンパク(a)が重要な問題であることに気付かせてくれた最初の人は、Ulrich Strunzというドイツ人医師でした。

彼が言ったとおり、高リポタンパク(a)は血管にとって最も危険なリスク因子であり、私の冠動脈疾患の実際の原因もこれにありました。

リポタンパク(a)の研究は60年近く行われていますが、従来の医学では高リポタンパク(a)値を下げる治療薬はまだありません。

この「恐ろしい」リポタンパク(a)のことを考えると、それ以来私の心は安らぎません。私はできる限り、リポタンパク(a)と心疾患に関する文献を読んで体系的に研究し、情報をまとめました。当初読んだ文献の中に、Linus Paulingが医師のMatthias Rathと共に著した論文がいくつかありました[3-7]

20世紀の最も重要な生化学者の一人であるLinus Paulingが、血管へのリポタンパク(a)付着を防ぐ策としてビタミンCやリシンといった単純な天然物質を推奨していた理由を知りたく思いました。このLinus Paulingによる推奨内容を教えてくれたのはDr. Strunzでした。

上記の共著論文には、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、心疾患の原因といった問題に対し、従来の理論から全くかけ離れた答えが示されていました[3-7]。そこでは以下の仮説が立てられています:

  • アテローム性動脈硬化と心臓発作の主因として、ビタミンCをはじめとする微量栄養素の慢性的欠乏がある。
  • ビタミンC欠乏はコラーゲンの産生減少につながることから、動脈壁が弱く不安定になる。
  • こうした命を脅かすような状態になると、体は「間に合わせ」の方法として修復分子を沈積させることにより動脈壁を修復しようとする。
  • こうした目的で修復分子が体内でどんどん作られ、前述のリポタンパク(a)がその決定的な役割を果たすようになる。
  • ビタミンC欠乏が続くと、リポタンパク(a)が蓄積して、アテローム動脈硬化性プラークの発生、心筋梗塞、脳卒中の原因となる。
  • リポタンパク(a)がリスク因子となるのは、慢性的ビタミン欠乏によって動脈壁に損傷が生じる場合に限られる。損傷するとリポタンパク(a)が動脈壁に沈積する。

従来の理論では、心臓の健康にとって高コレステロールが危険とされ何十年も非難され続けていますが、上記の仮説のほうが自分は納得がいきました。私には高コレステロールなどのいわゆるリスク因子は何もありませんでした。喫煙も飲酒もせず、過体重でも高血圧でもなく、ストレスも運動不足も糖尿病もなかったのです。

こうしたリスク因子はすべて危険とみなされ、心疾患の原因とまで考えられていますが、私にはどれも当てはまっておらず、いつも健康診断の結果はすべて正常でした。

それにもかかわらず、私は心臓発作を2回経験しました。1回目はトレーニング中に、2回目はその5年後、10km走の最中に起こりました。すぐに蘇生措置をしてもらったおかげで生き残りましたが、私のこうした事実には医師も当惑したに違いありません。

またこんな事が起こったら、もう3度目の生存チャンスはないだろうと確信した私は、とにかく再発を防がなければなりませんでした。医師による予後は悪く、高リスク患者で、心疾患療法を適用、平均余命は短いということでした。私は生きるため闘い始めました。

ポーリング療法

医師から悲惨な警告を受けながらも、私はPaulingが推奨していたリポタンパク(a)療法、ならびに循環器疾患の治療を自己実験の形で試してみることにしました。Paulingによる基本的な方法は、必須ビタミン(まず第一にビタミンC)をはじめとする微量栄養素を体内に供給するというもので、その量は治癒に必要な治療量とし、ビタミンCは1日当たり6~18 g(6,000~18,000 mg)または腸の許容限度まで、リシンは1日当たり5~6 g摂るよう推奨しています[8]

この治療法に、Matthias Rathが推奨するプロリンというアミノ酸の摂取(1日2,000 mgまで)を加えて補った方法が「ポーリング療法」として知られるようになりました。

自己実験で私は、自分の必要性に合わせて用量を調整しながら上記の物質を摂り、それに他のビタミン類や生命維持に不可欠な物質(とくに、ナイアシンをはじめとするビタミンB群、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンA、アミノ酸であるアルギニンとシトルリン)を補足摂取しました。この自己実験は5年に及びました。

自己実験の結果をまとめると:

  • 2011年(最初の心臓発作後)~2021年の期間中、計30回のリポタンパク(a)測定を実施した。
  • 2016年6月の自己実験開始時におけるリポタンパク(a)値は110 mg/dl = 約260 nmol/L。これは2回目の心臓発作から2週間後に測った値で、それまでの測定値における最高値であった。
  • 2021年4月に測定した最新リポタンパク(a)値は50 mg/dl = 約120 nmol/Lであった。
  • ポーリング療法によってリポタンパク(a)値は半分以下に下がった。120 nmol/Lまで約55%低下し、この数値は国際的な専門学会で推奨されている閾値(50 mg/dlまたは120 nmol/L)とほぼ一致している。
  • 自己実験の結果、リポタンパク(a)値は、一般に主張されているように変えられないものではないことが判明した。リポタンパク(a)値は大幅に変動することがあり、自然療法の適用によって有意な影響と低下効果が得られる可能性がある。
  • この自己実験の実施中、健康状態と心疾患に有意な改善が見られた。
  • 医師が処方した薬剤をやめても悪影響はなかった。

この成功に決定的な役割を果たしたのがポーリング療法であったことは明らかであり、これは私の記録によって立証されています。この自己実験でリポタンパク(a)値の低下効果より重視されたのは、私の健康状態ならびに心疾患の治癒にもたらす効果でした。

実際、極めて好ましい効果があったことが心臓コントロール検査のレポートで確認されています。そのレポートには、心肺完全安定状態、無症状患者、狭心症の症状なし、関連狭窄なし、心電図異常なし、収縮期ポンプ機能良好と記載されています。

こうした効果に加え、私は体にフルに負荷をかけられるようにもなりました。長年患っていた不整脈さえ起こらなくなりました。薬物療法は一切用いていなかったため、ポーリング療法がこの成功をもたらしたとしか考えられません。

私は自己実験で成果を得てから、さらにポーリング療法への信頼度を増し、今後もこれを続ける予定です。そしてこの先、何年もそれができることを望みます。

免責事項

私は医師ではないので、私が自己実験から推奨・経験したことを実践したい人は、かかりつけ医と協力して行う必要があると思います。医師の許可なく薬物治療をやめないでください。

(Hans W. Dielは「リポタンパク(a) - 心臓発作・脳卒中の最も大きなリスク因子? それについて知っておくべき全てのこと、そして自然療法を用いて自分の身を守る方法」 [ドイツ、Druckpunkt Ruhr UG, 2022] の著者)




<参考文献>

  1. Kamstrup PR, Benn M, Tybjaerg-Hansen A,Nordestgaard BG (2008) Extreme lipoprotein(a) levels and risk of myocardial infarction in the general population: the Copenhagen City Heart Study. (一般集団における極度のリポタンパク(a)値と心筋梗塞のリスク:コペンハーゲン市心臓研究) 117:176-184. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18086931

  2. Kamstrup PR Tybjaerg-Hansen A, Steffensen R, Nordestgaard BG (2009) Genetically elevated lipoprotein(a) and increased risk of myocardia infarction. (遺伝的高リポタンパク(a)と心筋梗塞リスクの増加) JAMA. 301:2331-2339. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19509380

  3. Rath M, Pauling L. (1990a) Hypothesis: Lipoprotein(a) is a surrogate for ascorbate. (仮説:リポタンパク(a)はアスコルビン酸塩の代理である) PNAS USA 87:6204-6207. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2143582

  4. Rath M, Pauling L. (1991) Solution to the Puzzle of Human Cardiovascular Disease: Its primary cause is ascorbate deficiency, leading to the deposition of lipoprotein(a) and fibrinogen/fibrin in the vascular wall. (ヒトの循環器疾患の謎を解く:その主因はアスコルビン酸塩の欠乏であり、それが血管壁へのリポタンパク(a)、フィブリノゲン/フィブリンの沈積を引き起こす) J Orthomolecular Med. 6(3-4):125-134. https://www.dr-rath-foundation.org/wp-content/uploads/2018/03/Solution-to-the-Puzzle-of-Human-Cardiovascular-Disease.pdf

  5. Rath M. (1992c) Lipoprotein-a reduction by ascorbate. (アスコルビン酸塩によるリポタンパク(a)値の低下) J Orthomolecular Med. 7:81-82. https://isom.ca/wp-content/uploads/2020/01/JOM_1992_07_2_04_LipoproteinA_Reduction_by_Ascorbate.pdf

  6. Rath M, Pauling L. (1992) Unified Theory of Human Cardiovascular Disease Leading the Way to the Abolition of This Disease as a Cause for Human Mortality. (ヒトの死因から循環器疾患をなくす道を開く、ヒト循環器疾患の統一理論) J. Orthomolecular Med. 7:5-15. https://isom.ca/wp-content/uploads/2020/01/JOM_1992_07_1_02_A_Unified_theory_of_Human_Cardiovascular_Disease_Leading-.pdf

  7. Rath M, Pauling L. (1991b) Apoprotein(a) is an adhesive protein. (アポタンパク(a)は接着性のタンパク質) Journal of Orthomolecular Medicine 6:139-143. https://isom.ca/wp-content/uploads/2020/01/JOM_1991_06_3-4_05_Apoproteina_Is_An_Adhesive_Protein.pdf

  8. Pauling L. (1986) How to Live Longer and Feel Better. (気分を良くして長生きする方法) (2006 Revised Ed) OSU Press. ISBN-13: 978-0870710964