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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Richard Z. Cheng, M.D., Ph.D.
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会 第4代会長(2012-2023))
溝口 徹(医療法人回生會 みぞぐちクリニック 院長)
姫野 友美(医療法人社団友徳発心会 ひめのともみクリニック 院長)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ビタミンDを摂取しても、多くの人の血中濃度が上昇しない理由 :最新研究が示す原因と、オーソモレキュラー医学による解決方法

目次

はじめに

何百万人もの人がビタミンDをサプリメントで摂取したり、日光浴をしたりしているにもかかわらず、血中ビタミンD濃度がほとんど上昇しないという人が存在します。

その一方で、少量の補給でも容易に最適値へ到達する人もいます。このような反応性の個人差は、長年にわたり臨床現場において十分な説明ができない「謎」とされてきましたが、近年の研究により、ついにその背景が科学的に明らかになりつつあります。

2025年のNature Communicationsの大規模な研究[1]では、ビタミンDの状態に影響を与える160以上の遺伝的変異が特定されました。

さらに、微量栄養素の補因子、代謝状態、炎症に関する研究を組み合わせると、ビタミンD欠乏症は、「単一栄養素の問題」であることは稀であり、システム生物学的問題であるという重要な結論がわかりました。

オーソモレキュラー医学では、この問題に対する解決策を提供します。

遺伝学が示す「個人差の理由」

Shraimら(Nature Communications, 2025) [1] は 、以下に影響を与える160以上の遺伝子変異を発見しました:

  • 皮膚での紫外線B波(UVB)によるビタミンD産生
  • 肝転換(25-ヒドロキシラーゼ)
  • 腎転換(1α-ヒドロキシラーゼ)
  • ビタミンD結合タンパク質
  • ビタミンD受容体(VDR)の感受性

示唆される点:

  • 同じ量を摂取しても、血中濃度は大きく異なる。
  • 最適値に達するため、より多くの摂取が必要な人も存在する。
  • 遺伝子が基準値を設定するが、 遺伝子だけで全ての結果が決まるわけではない。

遺伝的要因は基準値を規定しますが、それだけですべてが決まるわけではありません。

ビタミンDに対する反応性における大きな個人差については、図1をご参照ください。

図1:ビタミンD反応性における遺伝的多様性

図1は、同じ量のサプリメントを摂取していても、血中25(OH)D濃度の上昇に大きな個人差が生じる理由を示しています。

例えば、ある人では数値が急激に上昇する一方で、別の人ではほとんど変化が見られない場合があります。

これは、これまでに特定されている162の遺伝子変異が、皮膚でのビタミンD産生、肝臓・腎臓における活性化、輸送タンパク質、受容体の感受性などに影響を及ぼし、同じ摂取量であっても効果に大きな個人差が生じるためです。(データ[1]より)。

見落とされた診断:「ビタミンD抵抗性」

2024年のOMNSレビューでは、多くの人が後天性のビタミンD抵抗性を示している可能性があることを提唱しました[2]。

これは、ビタミンDは存在していますが、十分に活性化や正常な機能ができていないことを示します。

【主な要因】

  • 慢性炎症
  • 高コルチゾール状態、慢性ストレス
  • サーカディアン(概日)リズムの乱れ
  • 脂肪肝、インスリン抵抗性
  • リーキーガット、腸内細菌叢の異常
  • 環境毒素
  • 補因子欠乏(マグネシウム、ビタミンC、ビタミンK₂、ビタミンB群、亜鉛、セレン)

このため、多くの人が次のように感じます。

「ビタミンDは自分には効かない。」

しかし、問題はビタミンDそのものではなく、 体内の代謝環境にあったのです。

ビタミンDには「チーム」が必要:必須補因子

ビタミンDの代謝と受容体活性は以下の栄養素に依存します。

  • マグネシウム - 酵素活性化
  • ビタミンK₂ - カルシウムを骨へ誘導
  • ビタミンC - 炎症とステロイドホルモン経路の調整
  • ビタミンB 群 - メチル化、エネルギー代謝
  • 亜鉛+セレン - 抗酸化、免疫調節
  • オメガ3 – 細胞膜機能、炎症バランス

これらの補因子なしでは、正常な血中濃度でも機能性ビタミンD欠乏が生じます。

■一般的な補因子摂取量の目安(成人)

(※個人差はありますが、以下の範囲はほとんどの成人に適用されます。)

  • マグネシウム:200〜400 mg/日
  • ビタミンK₂:MK-7:90〜200μg/日
  • ビタミンC:1,000〜3,000mg/日
  • 亜鉛:15〜30mg/日
  • セレン:100〜200μg/日
  • オメガ3(EPA+DHA):1〜2g/日

これは、オーソモレキュラー医学の基本的な考え方です。

安全なビタミンD摂取量は?証拠は明確である

■最適範囲

  • 40-80 ng/mL (100-200 nmol/L)

■安全性データ

  • VITAL試験(2,000 IU/日)およびViDA試験(100,000 IU/月)
    • 高カルシウム血症の増加なし
    • 腎結石の増加なし
  • 毒性は150 ng/mL未満で極めて稀
  • 実際の毒性は200 ng/mL超で発生

ビタミンDは、現代医学において 最も安全性の高い栄養素 の一つです。

図2は、ビタミンDの血中濃度と安全性の関係を示しています。

図2:ビタミンDの安全曲線

本図は、150 ng/mL未満の範囲では実際の毒性は極めて稀であり、文献上で確認されている毒性は通常、偶発的な大量過剰摂取による血中200 ng/mL 超でのみ発生することを示しています。(データ[ 3-12]より)。

高用量が必要となる実例

症例1:GrassrootsHealthの夫婦データ(コホート)

・妻:2,000 IU/日で40〜60 ng/mLを維持
・夫(2型糖尿病):妻と同量を服用

  • 同量摂取では20 ng/mL未満
  • 10倍量摂取で30〜40 ng/mLに到達

示唆:代謝性炎症と遺伝が必要量を大きく左右します。

特に炎症、肥満、遺伝的変異を持つ方は、高用量の服用が必要な場合もあります。

症例2:高用量摂取の例

60代の男性が30,000 IU/日を30日間摂取しました。

結果:

  • 血中25(OH)D濃度 = 118 ng/mL
  • 高カルシウム血症の発症無し
  • 臨床的改善が認められた

この血中濃度は、これまでの大規模コホート研究でも繰り返し報告されている

「低リスクかつ高い健康効果が期待できる範囲」に含まれます。

症例3:高用量ビタミンD3の長期摂取による重度の高カルシウム血漿および腎障害

健康だった23歳の男性 が、ビタミンD3を50,000 IU/日という非常に高用量で、数か月間連続摂取していました。

さらに、カルシウムを含むマルチビタミンを併用していました。

その結果、重度のビタミンD中毒を示す検査所見が認められ、著者のもとへ紹介されました。

主な検査結果:

  • 血中25(OH)D濃度:200 ng/mL超 (著しく上昇)
  • 血清カルシウム:4.0 mmol/L (重度高カルシウム血症)
  • 副甲状腺ホルモン(PHT):8.63 pg/mLまで抑制

(ビタミンD中毒と一致するPTH抑制)

  • 血清クレアチニン:202μmol/L
  • eGFR:39 mL/min/1.73 m²に低下 (急性腎障害)

示唆:この症例は、医療的な管理なしに高用量のビタミンDを長期間摂取することの危険性を明確に示しており、特に、外因性カルシウムを併用した場合、生命を脅かす高カルシウム血症や腎障害につながる可能性があることを示しています。

実践的オーソモレキュラー推奨事項

  1. 血中25(OH)D濃度以外も検査
  • PTH(副甲状腺ホルモン)、カルシウム、リン、マグネシウム、CRP(炎症マーカー)、肝機能指標も含める。
  1. 摂取量は個別に調整する

代表的な有効範囲:

  • 5,000 IU/日
  • 10,000 IU/日
  • 抵抗性が強い場合には、短期間の高用量補給
  1. 補因子は必ず併用する
  • マグネシウム、ビタミンK₂、ビタミンC、亜鉛、セレン
  1. 生活習慣の改善
  • 日光浴、腸内環境の改善、解毒、ストレス軽減
  1. 3〜6ヶ月ごとに再評価する

<結論>

ビタミンDは「摂取すれば数値が上がる」単純な栄養素ではなく、

遺伝×日光×微量栄養素×代謝状態×炎症×内分泌バランス = 個別用量設定の必要性

上記のような要因が複雑に組み合わさった結果として決まります。

オーソモレキュラー医学は、生化学的環境全体(バイオケミカル・テレイン)を回復させ、ビタミンDが本来の生理機能を発揮できる状態へと導きます。

慢性疾患における「根本原因モデル」の一例

ビタミンD抵抗性は、決して特異な現象ではなく、より深い真実を示しています。

慢性疾患は、
遺伝、代謝、炎症、環境、栄養、内分泌といった複数の根本要因の乱れにより生じます。

詳細は以下を参照ください。
チェン、R. Z. 変異から代謝へ:がん発症の起因となる要因の根本的分析 [13]。

健康や疾患は、単一の分子や、ビタミンC、Dといった単一のメカニズム、ミトコンドリア機能障害や腸内環境異常によって決まるものではなく、相互に関連する以下のマトリックスによって決まります。

  • 環境毒素への曝露
  • 慢性感染症
  • 微量栄養素の状態
  • 細胞代謝
  • 酸化ストレス
  • ミトコンドリア機能
  • ホルモン調節
  • 免疫機能の回復力

ビタミンD抵抗性は、この統一原理を示す一つの事例に過ぎません。

健康を回復するには、可能な限り多くの根本的要因を特定し正すべきであり、下流の症状や、根本的要因と臨床疾患の間のメカニズムを追うべきではないのです。

オーソモレキュラー医学は、こうした根本的要因を体系的に認識し、対処する枠組みです。

【参考文献】

  1. Shraim, R.; Timofeeva, M.; Wyse, C.; Geffen, J. van; Weele, M. van; Romero-Ortuno, R.; Lopez, L.M.; Kleber, M.E.; Pilz, S.; März, W.; Fletcher, B.S.; Wilson, J.F.; Theodoratou, E.; Dunlop, M.G.; McManus, R.; Zgaga, L. Genome-Wide Gene-Environment Interaction Study Uncovers 162 Vitamin D Status Variants Using a Precise Ambient UVB Measure. Nat Commun 2025, 16, (1), 10774. DOI: 10.1038/s41467-025-65820-x.
  2. Cheng, R.Z. Understanding and Addressing Vitamin D Resistance: A Comprehensive Approach Integrating Genetic, Environmental, and Nutritional Factors. Orthomolecular Medicine News Service 2024, 20, (13).; Available online: https://orthomolecular.org/resources/omns/v20n13.shtml.
  3. Manson, J.E.; Cook, N.R.; Lee, I.-M.; Christen, W.; Bassuk, S.S.; Mora, S.; Gibson, H.; Gordon, D.; Copeland, T.; D'Agostino, D.; Friedenberg, G.; Ridge, C.; Bubes, V.; Giovannucci, E.L.; Willett, W.C.; Buring, J.E.; VITAL Research Group Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease. N Engl J Med 2019, 380, (1), 33-44. DOI: 10.1056/NEJMoa1809944.
  4. Garland, C.F.; Kim, J.J.; Mohr, S.B.; Gorham, E.D.; Grant, W.B.; Giovannucci, E.L.; Baggerly, L.; Hofflich, H.; Ramsdell, J.W.; Zeng, K.; Heaney, R.P. Meta-Analysis of All-Cause Mortality According to Serum 25-Hydroxyvitamin D. Am J Public Health 2014, 104, (8), e43-50. DOI: 10.2105/AJPH.2014.302034.
  5. McDonnell, S.L.; Baggerly, C.; French, C.B.; Baggerly, L.L.; Garland, C.F.; Gorham, E.D.; Lappe, J.M.; Heaney, R.P. Serum 25-Hydroxyvitamin D Concentrations ≥40 Ng/Ml Are Associated with >65% Lower Cancer Risk: Pooled Analysis of Randomized Trial and Prospective Cohort Study. PLoS One 2016, 11, (4), e0152441. DOI: 10.1371/journal.pone.0152441.
  6. Vieth, R. Vitamin D Toxicity, Policy, and Science. J Bone Miner Res 2007, 22 Suppl 2, V64-68. DOI: 10.1359/jbmr.07s221.
  7. Vieth, R. Vitamin D Supplementation, 25-Hydroxyvitamin D Concentrations, and Safety. Am J Clin Nutr 1999, 69, (5), 842-856. DOI: 10.1093/ajcn/69.5.842.
  8. Demay, M.B.; Pittas, A.G.; Bikle, D.D.; Diab, D.L.; Kiely, M.E.; Lazaretti-Castro, M.; Lips, P.; Mitchell, D.M.; Murad, M.H.; Powers, S.; Rao, S.D.; Scragg, R.; Tayek, J.A.; Valent, A.M.; Walsh, J.M.E.; McCartney, C.R. Vitamin D for the Prevention of Disease: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 2024, 109, (8), 1907-1947. DOI: 10.1210/clinem/dgae290.
  9. Are You Vitamin D Deficient? Available online: https://www.grassrootshealth.net/project/daction/(accessed 3 December 2025).
  10. McDonnell, S.L.; Baggerly, C.; French, C.B.; Baggerly, L.L.; Garland, C.F.; Gorham, E.D.; Lappe, J.M.; Heaney, R.P. Serum 25-Hydroxyvitamin D Concentrations ≥40 Ng/Ml Are Associated with >65% Lower Cancer Risk: Pooled Analysis of Randomized Trial and Prospective Cohort Study. PLoS One 2016, 11, (4), e0152441. DOI: 10.1371/journal.pone.0152441.
  11. Chowdhury, R.; Kunutsor, S.; Vitezova, A.; Oliver-Williams, C.; Chowdhury, S.; Kiefte-de-Jong, J.C.; Khan, H.; Baena, C.P.; Prabhakaran, D.; Hoshen, M.B.; Feldman, B.S.; Pan, A.; Johnson, L.; Crowe, F.; Hu, F.B.; Franco, O.H. Vitamin D and Risk of Cause Specific Death: Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Cohort and Randomised Intervention Studies. BMJ 2014, 348, g1903. DOI: 10.1136/bmj.g1903.
  12. Holick, M.F.; Binkley, N.C.; Bischoff-Ferrari, H.A.; Gordon, C.M.; Hanley, D.A.; Heaney, R.P.; Murad, M.H.; Weaver, C.M.; Endocrine Society Evaluation, Treatment, and Prevention of Vitamin D Deficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 2011, 96, (7), 1911-1930. DOI: 10.1210/jc.2011-0385.
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