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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

牛へのビタミンC投与:牧場における高用量アスコルビン酸療法の効用

執筆: Theo Farmer

(OMNS、2020年11月1日)

動物の大半は体内でビタミンCを作ります。これは極めて重要な事実なのに広く知られていません。しかし哺乳類にアスコルビン酸を用いる意味を理解すれば、生活が大きく変わることもあるのです。オレゴン州の牧場における我々の生活は、ビタミンCについて知り、動物への使い方を理解したことによって変わりました。

本記事では、動物における急性・慢性の健康問題に対処するため栄養素の高用量投与を行う場合に役立つアドバイスと手順をお伝えします。(我々は飼育している牛・鶏・豚のいずれにもビタミンC療法を用いており、ペットの場合もこれは役立ちます。)

ビタミンCであるアスコルビン酸は道具として使える最も重要な栄養素であることを、オーソモレキュラー療法の実践者は伝えようとしています。ここに、劇的な効果が見られた事例をいくつか紹介します。

ケース1:去勢牛の旋回病

去勢した雄の子牛が突然失明し、円を描いて歩き回るようになったら、神経系の機能停止が進んでおり、間もなく死を迎えます。これは「旋回病」と呼ばれ、一因としてリステリア症が知られています。これは牛の脳の被膜に炎症を起こすリステリア菌の感染症で、ヒトの髄膜炎と似ています。

オレゴン州の真ん中で160エーカー(約65ヘクタール)の牧場を始めてから2年目の冬に、こうした症状が1頭の去勢牛に現れました。急に目が見えなくなり、ぐるぐる歩き回りました。旋回運動を初発症状としてインターネットで検索して診断できたのですが、強力な抗生物質を大量に与えなければ死ぬ運命にあるという情報も得ました[1] 。たとえそうした場合でさえ、獣医の高額な往診と投薬の末に死んでしまう可能性も高いようでした。

当時の飼育状態は、悲しいことに、いつ牛がリステリア症で倒れてもおかしくないものでした。ジョン・スタインベックの旅行記「チャーリーとの旅」にあるように、「それは日曜で、雨が降っていて、オレゴンだった」のです[2]。牛たちは冬の寒さをしのぐ粗末なフープハウス(ビニールハウスのような半円形の屋根のある小屋)の中におり、厚く敷いた藁は糞で汚れ、餌は地面で食べていました。どの牛も、リステリア菌にまみれた餌を口にしていた可能性はあり、ほとんどの牛は感染しなかったものの、どの個体にも系統異常が生じるおそれはありました。

人里離れた我々の牧場では、日曜に獣医に来てもらうという選択肢は通常なかったし、どの動物にも医薬品は使っていないので、来てもらっても無駄です。その代わり、私はビタミンCの強力な抗炎症作用を知っていたので、その牛を納屋に入れてビタミンCの高用量投与を行うことにし、1日につき体重1ポンド(約450 g)当たり1 gのビタミンCを与える努力をしました。これはヒトの重篤疾患を治すものとしてDr. Robert Cathcartが示している経口量です[3]

体内でビタミンCを作る動物に、なぜビタミンCの経口投与が役立つのでしょう? Irwin StoneもCathcartも論文の中で、獣医がビタミンC点滴を用いて大きな成功を収めた例に言及しています[4]。そうした論文を読むことにより、犬のジステンパーのような特定の感染症では、自分でビタミンCを作ることができる速さを超えて、体内で酸化ストレスが増えてしまう可能性があることがわかりました。Cathcartはまた、体内でのビタミンC輸送が十分でなく罹患部に届かないため、その部位でアスコルビン酸が枯渇する可能性についても明示しています。アスコルビン酸(ビタミンC)を運ぶことができる速さより、感染症によってそれが消耗されるほうが速いと、こうした「局部的な壊血病」といった状態が生じ得ると彼は述べています。ストレスを受けている牛は特定の疾患状態によってアスコルビン酸の生成能力が負けることがあると考えられます。この雄牛は、それによって脳の炎症が生じたのかもしれません。

我々夫婦は、牛に病気の症状や行動が見られたら死ぬまでの時間は非常に短いということを常に感じています。アスコルビン酸の生成が追い付かなくなった牛は、健康状態が急激に悪化する可能性が非常に高いため、すぐに手を打たなければ死んでしまいます。

当時、私にはこの雄牛に点滴を行う知識がなく、ビタミンCを牛に経口投与した経験もわずかしかありませんでした。目の見えない牛は、円を回るたび古い納屋で牛房の壁にぶつかっていました。私は牛房の真ん中に立ち、牛は私を囲むように歩き続けました。その動きは明らかに自律神経系によるものでした。そうでなければ私はこの牛を扱うことはできなかったでしょう。

牛の体重は1,000ポンド(約450 kg)あったので、まずは、ビタミンC結晶(純粋粉末)500 g(1ポンド強)を、アルファルファのペレット(*)をすりつぶしたもの(マッシュ)に混ぜてみました。牛が数周するたびに私は牛の端綱を掴んでマッシュを一握りずつ口に入れ、顎の両側をマッサージすることにより顎を刺激し咀嚼させました。幸い、自律神経で動いている牛は咀嚼して飲み込んでくれます。飲み込むと私は端綱を放し、牛はまた回り続けました。 *ペレット:乾燥した植物や木材を細粉し、圧力をかけて小さい円筒形に成形したもの

牧場の従業員数人が、この危篤の牛を救おうとする私の努力を見ていましたが、一人で行う作業だったし私が何とかやっていたので、昼食に行ってしまいました。しかし、2時間くらいして戻ってきたとき、彼らはその好転を見て驚いていました。牛はすでに回復し普通に振舞っていたのです(気の荒い牛に戻り、私を見ていて、触れさせませんでした)。マッシュに混ぜて与えたビタミンCの量はおそらく250~350 g(250,000~300,000 mg)に及んでいました。干し草も与えマッシュの量を増やしながら、もう2日ほどビタミンCの高用量投与を続けた後、この牛を牧場に放しました。死なずに済んだのです。神経系の機能が停止した状態(脳が炎症を起こし、失明してぐるぐる回っている状態)から、ビタミンCの経口投与によって数時間で正常に戻り、元気になったのです。ビタミンCの力で行動が正常に戻った動物は、体内でのアスコルビン酸生成と免疫系の働きがその後を継いで健康な状態に保たれることがわかりました。

結論: きわめて高用量のアスコルビン酸経口投与は、牛に強力な抗炎症作用をもたらし、これはヒトや他の動物の場合と全く同じです[5]。反すう動物の消化器系は摂取されたビタミンCを破壊するという牧畜学での仮定とは対照的です。牛にビタミンCを経口投与すれば重篤な状態がきわめて速く好転することがあるのです。

我々は牧場で動物や人にこうした方法を実践したことが何度もあります。牛は(ヤギと違って)ビタミンCを大量に生成する動物ではなく、たとえビタミンCをたくさん生成する動物であっても、牧場でのストレスや混沌によって危機的な状態に陥る個体もいると考えられます。牧場を始めて何年かは厳しい試練を受けているようでした。鼓張症、植物中毒、アシドーシスによるショック、難産した牛の起立不能といった例がありました。どれも高用量ビタミンC投与で助かったわけではありませんが、多くは救われました。

ケース2:出産前後に起立不能となった牛

ジャージー牛のティンカーベルは、誤って本来より数カ月早く受精させてしまったのですが、出産予定日の1週間以上前に、へたり込んだ姿勢から身を起こすことができなくなりました。起立不能となった牛は、その状態で24~48時間を超えると死亡する可能性が高くなるので、集中的な世話を受けなければ生き残ることができません。

ティンカーベルは、優れた乳牛の遺伝的性質を持ち、命を救う価値のある牛でした。我々は毎日、口から高用量ビタミンC投与を行い、約100 g(100,000 mg)という1回量を1日2回与えました。アスコルビン酸ナトリウムを水に溶かし、60 ccのシリンジで口(頬)の中に注入する方法で実施しました。また、アルファルファや牧草の干し草と一緒に、高用量のビタミンCを含むアルファルファのマッシュも食べられるようにしました。毎朝、朝の分のビタミンCを飲ませて1時間くらい経ったら、牛用のリフトもしくは力の強い従業員2人の力でティンカーベルを立たせました。彼女は毎日、群れから離れ自由に歩いて草を食べるだけの強さはありました。夜になるまでには横たわってしまい、翌日起き上がれませんでした。時には野外でへたり込んでいるのを見つけることもあり、トラクターに乗せた牛用リフトを使って牛房に戻し、夜を過ごしました。

ある朝早く、牛房にいるティンカーベルの体から、死んだ子牛が半分出ているのを見つけた我々は、子牛の体を引っ張って出しました。その後も彼女には1日2回、高用量のビタミンC投与を行うとともに、毎日持ち上げて立たせました。搾乳は行わず、この取り組みを1週間くらい続けた結果、彼女はついに自分で立つことができたのです。十分に回復したので、その年の遅くに受精させたところ、次の春に難なく出産しました。今では強く健康な牛として当牧場のシェアオーナーに牛乳を提供しているので、ビタミンC療法を用いて機能を回復させる努力をした価値は十分あったと思います。

ケース3:鼓張症でショック状態の牛

ある冬の深夜、我々のお気に入りの牛の1頭であるフォクシーが畜舎の中で他の7頭と一緒にいるのを見つけました。彼女は横たわっていて鼓張(腹部がガスで膨らんでいる状態)が見られ、へたり込んでショック状態にありました。牛の鼓張症も、ショック状態の牛も、我々には初めての経験でしたが、アスコルビン酸を水に溶かした高濃度の溶液を60 ccのシリンジで経口投与することから始めました。数人が手伝ってくれ、一人が鼓張症の対処法を調べたところ、肺に圧力がかかって危険なのでお腹からガスを抜かなければならないことがわかりました。体側に針を刺す方法を試しましたが、ガスの抜け方が遅かったので、ナイフを使い、第一胃のすぐ上を付き刺すような形でガスを出しました。するとお腹がすぐしぼみ、呼吸能力が回復しました。へたり込み、ショック状態で死にかけているのを見つけてから1時間後には、また自分で立てるようになったのです。第一胃にガスがたまるのを防ぐため、生乳にオイルと天然浄化剤を混ぜた鼓張症用の混合物を投与したところ、それが徐々に効いて、傷口からはガスが出なくなりました。傷口は、マヌカハニー(抗菌性の高い蜂蜜)にアスコルビン酸を混ぜたもので洗い、スーパーグル(接着剤)とジップタイを使って塞ぎました。マヌカハニーとアスコルビン酸を使った手当は傷口が癒着するまで続けました。

牛はアシドーシス(酸血症)という病気でもショック状態に陥ることがあります。当牧場で牛に与えているのは牧草とアルファルファだけですが、豚と鶏には穀類を与えているので、穀類があるところに牛が入り込んだ例もあります。牧草のみの食事に慣れている牛が穀類を大量に食べると、第一胃のpHが中性から酸性にすぐ変わってしまうことがあります。それによって「アシドーシス」と呼ばれる状態が生じることがあり、そうすると牛がショック状態に陥って死ぬおそれがあります。アシドーシスによるショックの例は1つありましたが、高用量ビタミンCの経口投与によって牛がショック状態から立ち直ったので、重曹を使ったアシドーシス治療ができました。重曹も経口投与し、その牛は完全に回復しました。

きわめて高用量のビタミンC経口投与をすればショック状態から早期に回復するということは、アスコルビン酸が消化器系を経由して脳に達するのではなく、牛の口・唾液系統にて経皮吸収され、直接、頭と脳の領域に運ばれている可能性があるように思われます。すでに酸性となっている第一胃にpHの低いアスコルビン酸が入ることの懸念は無視しても構いません。牛をショック状態から回復させることが最優先であり、第一胃の酸性の中和は重曹を使えば簡単にできるからです。ショック状態ではないがアシドーシスの症状が見られる牛には、重曹のみを与えます。最近では、牛の第一胃のpH調整が必要となったときに使えるよう、家畜用の重曹(重炭酸ナトリウム)を常備しています。

豚の様々な疾患

当牧場では黒豚(バークシャー種)も飼育しています。これまで何百頭も育ててきましたが、問題はほとんどありませんでした。戸外に出ることができて、泥や草、自然に触れることができる豚は、滅多に病気になりません。ある冬のこと、豚たちが少し毒のある植物(ワラビ)を鼻で掘り返していたとき、発芽したワラビに含まれる毒素が2頭の雌豚の命取りとなってしまいました。骨髄を侵す毒だったので、ビタミンCで回復させることもできませんでした。その冬以外では、雌豚が乳房炎のようなものに罹ったことはありました(8年間で1~2件軽症が見られたくらいです)。

また、生まれた子豚に、もう少しで足をひきずって歩いたり四肢が衰弱したりする兆しが見られたこともあります。幸い我々は、牧場で獲れた生乳を酸敗させたサワーミルク1/2ガロン(約2リットル)に1/4~1/2カップ程度のアスコルビン酸を混ぜたものを1日2回豚に与えればいつも完全な健康状態に戻ることに気付いています。その日のうちに回復することも多いのです。我々はこれ以外の「薬」を豚に与えたことはありません。他にも重要なこととして、我々は遺伝子組み換えでなく大豆もトウモロコシも含まない飼料しか使っておらず、また、生のサワーミルクでラクト発酵させた大麦も、全体的な健康維持に役立っています。

成功例は再現できる

私たちはこうした方法について他の農場主にも話しており、試してくれるときもあります。正しく行えば、多くの場合、同じ成果が得られます。当牧場では、牛の数が最初の数頭から40頭以上に増えたのに、シーズンごとに経験を積むにより、問題の発生数はどんどん減っています。いちばん最近の問題はこの前の春のことでした。新しく生まれた子牛(12頭)のうち、1頭の両頬に大きな腫れ物ができ、子牛ジフテリアという致死的な疾患のようでした。しかし、ビタミンCとビタミンB3(ナイアシンアミド)の高用量投与を1日2回行うことにより、腫れは小さくなり1週間後には消えていました。

オーソモレキュラー療法を実践している当牧場では、動物の疾患への対処法に関し、主流のアドバイスはほとんど適用しません。標準的な情報には大抵、ワクチンや抗生物質など製薬産業の化学薬品が含まれていますが、我々は畜産を始めたときに、こうしたものは絶対使わないと言明しました。当牧場ではミネラルと栄養素しか使わない方法に取り組んでおり、経験からわかったこととして、正しい知識をもって高用量ビタミンCの経口投与を少なくとも1日2回、正常な状態に戻るまで粘り強く行えば、動物に驚異的な効果をもたらすことがあるのです。

牧場として我々が取り組みたいことの一つは、動物へのオーソモレキュラー療法を世界中の農場主が使えるよう文書化することです。最先端の健康科学でも今では、人体の微生物面での健康ならびに環境について理解することが鍵となっています[6] 。工場で作る医薬品や農薬とは異なり、オーソモレキュラー療法は農場でも土壌や植物、動物、農業従事者の微生物叢を破壊することなく実践できるため、健康に良い農業ならびに健康的な食品の未来に不可欠です。

Theo Farmerは、オーソモレキュラー医学に基づく初めての子ども向け絵本「Buttercup, Me, and Vitamin C(キンポウゲと私とビタミンC)」)の著者であり、ホームページwww.heliosfarms.comwww.hfpma.onlineにはブログもあります。この絵本のPDFhttps://www.hfpma.online/shopから無料でダウンロードできます。)

 

<参考文献>

  1. The Cattle Site. Listerosis.(リステリア症)https://www.thecattlesite.com/diseaseinfo/192/listeriosis
  2. Steinbeck J (1980) Travels with Charley in Search of America.(アメリカを探すチャーリーとの旅) Penguin Books. ISBN-13: 978-0140053203
  3. Cathcart RF (1981) Vitamin C, titrating to bowel tolerance, anascorbemia, and acute induced scurvy.(ビタミンC、腸許容上限までの滴定、アナスコルベミア、および急性誘発性壊血病) Med Hypotheses, 7:1359-1376. http://doctoryourself.com/titration.html
  4. Belfield WO, Stone I. (1975) Megascorbic Prophylaxis and Megascorbic Therapy: A New Orthomolecular Modality in Veterinary Medicine.(メガアスコルビン投与による予防法とメガアスコルビン療法: 獣医学における新しいオーソモレキュラー療法) J Int Acad of Preventive Med, 2:10-26. 
    https://www.seanet.com/~alexs/ascorbate/197x/belfield-w-j_int_assn_prev_med-1978-v2-n3-p10.htm
  5. Chatterjee IB, Majumder AK, Nandi BK, Subramanian N. (1975) "Synthesis And Some Major Functions Of Vitamin C In Animals."(「動物におけるビタミンCの合成といくつかの主要機能」) Annals of the New York Academy of Sciences 258 Second Confer: 24-47.
    https://nyaspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/j.1749-6632.1975.tb29266.x
  6. Integrative HMP (iHMP) Research Network Consortium (2019) The Integrative Human Microbiome Project.(統合ヒトマイクロバイオームプロジェクト) Nature, 569:641-648. 
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31142853