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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

「老化」よりずっと具体的な原因

Ralph Campbell, MDによる論評

(OMNS、2017年7月17日) ヨウ素に関する前号のオーソモレキュラー医学会ニュース[1]を読み、OMNSに寄稿している方々の知識の豊かさを改めて思い知った。詳細な研究を行うことにより、栄養欠乏や栄養過剰について、栄養学の文献からの引用による裏付けを伴いながら、疾患との関係におけるあらゆる微妙な差違を明らかにする能力を備えた寄稿者が多くいる。

私は、ヨウ素欠乏の兆候と症状について読んだとき、その多くが、我々が「老化」と呼んでいるものにも似ていることに驚いた。死を「自然な原因によるもの」として受け流すのと同様、「老化」も、真の原因を知りたいという好奇心がほとんど起きないような病状をまとめるのに便利な分類となっている気がする[2-6]。高齢者は、「暦年齢」によってきちんと類型化されるものでない。才能には様々な種類があることを認識するのと同様に、老化にも種々な側面があることを説明したほうが良いかもしれない。体は冴えなくても頭が冴えている高齢者がいるかもしれないし、その逆も考えられる。老化を直接の起源としない原因がいくつか重なっているのかもしれない。ヨウ素欠乏症の兆候や症状を、老化のそれと比較してみよう。このような部分的な一致があるため、高齢の読者が自分の症状について、ヨウ素欠乏症の診断を示すものと結論付けることにならないだろうか。

活力がない、気分が落ち込む(うつ)

医師は、たとえ繊維筋痛や慢性疲労症候群というような診断を下したとしても、普通は、その根本原因として考えられるものをほとんど示唆することはできない。どちらも筋力低下に関連したものであり、複数の原因があるかもしれない[7]。高齢の男性なら、低テストステロン値に加え、筋肉を使っていないことによる筋萎縮もある、というケースも考えられる。ATP(アデノシン三リン酸)(エネルギーサイクルの核となるもの)の生成量低下は、クレアチンのサプリメント摂取によって改善することがわかっている。うつの程度には、ちょっと気分が沈む、意欲が出ないというものから、医学界で重く受け止められる「臨床的抑うつ」まで、様々なものがある。活力がない、気分が落ち込むというのは主観的なもので、上向きな気持ちの逆をいう。夜のニュースで描写されるような、この世の不条理を処理する努力と、そうした問題をコントロールできないことによるフラストレーションが相まって、うつが増大する。

記憶力の低下(記憶障害)

その重症度は多岐にわたる[8]。アルツハイマー病は高額品のような扱いであるため、名前がすぐに思い出せないという場合(高齢者ではよくある)、通常の老化の一環か、アルツハイマー病の前触れのいずれかとみなされる。アルツハイマー病が最初に定義されたとき、脳に血液を供給する大脳動脈や頸動脈のアテローム性動脈硬化による認知症と区別するには、脳生検で「神経原線維変化」を調べる必要があると考えられた。ほとんどの関連研究では、こうした一群の兆候と症状を、「アルツハイマー病」という専門的流行語で定義しているに過ぎない。処方薬から得ることができるのは「進行を遅らせる可能性」に過ぎず、ビタミンE、ナイアシンアミド、ビタミンB-12ならそれが副作用なしで済むことがわかっている。

脳には、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、マグネシウムが必要である。高齢者では、腸によるこうした栄養素の吸収速度が遅くなることが多く、アルツハイマー病、認知症をはじめ、うつ、しびれ、活力の低下、記憶障害などの症状につながる。上記の必須栄養素を賢く補給すれば、こうした脳機能の問題を遅らせたり、予防したり、好転させることができる可能性がある。

ビタミン剤がいかにアルツハイマー病の予防と好転をもたらすか、詳しくは下記サイトを参照のこと:
http://www.iv-therapy.jp/omns/news/40.html
http://www.iv-therapy.jp/omns/news/60.html

覚醒度の低下、疲労感、無気力、不眠症

これらは、ひと括りにされることが多い。高齢者は概して、覚醒度が「昔とは違う」のである[9]。そうでなければ、素晴らしい見ものである。まだ50代という若さでも、高齢者と同じように名前をよく思い出せない人が多くいるのには驚いた。脳をコンピューターに似たものと考えるなら、アドレスブックに何かが起こったようなものである。名前と顔を結び付けることができないのである。精神的ストレスは、疲労感を生じる大きな原因の一つである。一度に複数の仕事をこなすのは問題である。中年のときのように仕事を難なくこなすことができないことが、非常に苛立たしくストレスの多いものとわかることがある。自分の存在が世界の問題にほとんど影響しないことを実感すると、無気力の原因になったり、睡眠の「トワイライトゾーン」(夢うつつの状態)にあるときに解決策を模索し続ける原因となる。

皮膚の乾燥

これは高齢者における普遍的な問題であり、屋内の乾燥した冬の空気にさらされることによって悪化する[10]。保湿ローションが唯一の救済策のように見えるが、それを使っていても、突き破るような痒さを覚え、悪意をもって引っ掻けば支障を来し得る。前号で言及されていたクレチン病は、土壌や食料に含まれるヨウ素量が著しく少ない地域にて重度のヨウ素欠乏症を患っている人々を指す言葉である[11]。クレチン病でも皮膚乾燥が見られることがある。しかし、重度のヨウ素欠乏症では、それよりはるかに顕著な別の症状も表れることが多い。加齢による皮膚乾燥の場合、ビタミンAの大量投与によって改善される可能性がある。それによって正常な上皮細胞の増殖が促進されるためである。これは、第三世界諸国で流行する麻疹に罹った子どもたちの命を救う手段となることもわかっている。気管支樹の正常な粘膜形成を促す働きにより、麻疹から致死的な肺炎に至るのを防ぐからである。

手足の冷え

年を取るとこれは非常に多く見られる。「手が冷たい人は心が温かい」という時代遅れの反応を聞きたくないから握手をやめる、という社会的な問題を生じかねない。私がこれまで握手をした人の中で最も手が冷たかったのは、ある若いマラソン選手であるが、彼はいつも最高の状態にあるため、「血行不良」というのはまず当てはまらない。大腿動脈のアテローム性動脈硬化による血行不良は、重症度が高いため、「間欠性跛行」という病名が付けられている。運動をすると、脚筋は痛みで酸素を強く求める。手足への血液供給の一部は、自律神経系から出されるシグナルの管理下にある。自律神経系は、カテコールアミンを放出することによって動脈の拡張や収縮をコントロールしている。カテコールアミンの中で最も有名なのはアドレナリンである。毛細血管内に血液が停滞していて、その酸素が消費がされると、手足が青っぽく見えることがある。この症状は、マグネシウムのサプリメントで予防できることが多い。マグネシウムは末梢動脈の弛緩を助けることにより、血管収縮を少なくして血流を増やすのに役立つからである[12]。45年以上にわたり、ビタミンEの高量摂取が間欠性跛行の治療に用いられ成功していることは、誰もが知っているわけではない[13-15]。また、ビタミンCとビタミンEのサプリメントを数カ月間、十分な用量で摂れば、アテローム性動脈硬化の予防に役立つ可能性がある。

上記の各症状を、単に老化のせいとして受け流すより、もっと具体的な原因を見つけられたら、どんなに良いだろう。確かに、ヨウ素欠乏は、多くの症状において一つの原因かもしれない。加齢に伴い、腸からの必須栄養素の吸収が一般的に悪くなる。ヨウ素を含め、ビタミンやミネラルというような必須栄養素のサプリメントを十分な用量で摂れば、加齢に伴う症状の多くを予防または好転できる可能性がある。

(編集者注: OMNSの寄稿編集者であるRalph Campbell, MDは、7月29日で90歳となった。メールで挨拶をしたい読者は、drsaul@doctoryourself.com?に送れば、届けることができる。)

参考文献

1. Rychlik W. (2017) The need for iodine supplementation.(ヨウ素補給の必要性)
http://orthomolecular.org/resources/omns/v13n14.shtml

2. Wang JC, Bennett M. (2012) Aging and atherosclerosis: mechanisms, functional consequences, and potential therapeutics for cellular senescence.(老化とアテローム性動脈硬化:メカニズム、機能的結果、および細胞老化に対する有力な治療法) Circ Res. 2012 Jul 6;111:245-259.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22773427

3. Larson EB, Yaffe K, Langa KM. (2013) New insights into the dementia epidemic.(認知症の大流行に関する新たな洞察) N Engl J Med. 369:2275-2277.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24283198

4. Sowell ER, Peterson BS, Thompson PM et al. (2003) Mapping cortical change across the human life span.(ヒトの生涯を通じた皮質変化のマッピング) Nat Neurosci. 6:309-315.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12548289

5. Hearing loss and older adults.(聴力低下と高齢者)
https://www.nidcd.nih.gov/health/hearing-loss-older-adults

6. Smith RG, Penberthy T. (2015) The Vitamin Cure for Arthritis.(関節炎に対するビタミン療法) Basic Health Pub. ISBN-13: 978-1591203124

7. Walston J, McBurnie MA, Newman A et al. (2002) Cardiovascular Health Study. Frailty and activation of the inflammation and coagulation systems with and without clinical comorbidities: results from the Cardiovascular Health Study.(心血管健康研究。臨床的共存症がある場合とない場合の炎症システム・凝固システムの脆さと活性:心血管健康研究による結果) Arch Intern Med. Nov 11;162:2333-2341.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12418947

8. Light LL. (1991) Memory and aging: four hypotheses in search of data.(記憶と年齢:データ検索における4つの仮説) Annu Rev Psychol. 42:333-376.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2018397?および
http://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev.ps.42.020191.002001

9. Carriere JS, Cheyne JA, Solman GJ, Smilek D. (2010) Age trends for failures of sustained attention.(持続性注意障害の年齢傾向) Psychol Aging. 25:569-5674. doi: 10.1037/a0019363.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20677878

10. Ambrose CT. (2017) Pro-Angiogenesis therapy and aging: a mini-review.(血管形成促進療法と老化:ミニレビュー) Gerontology. 2017 Jun 1. doi: 10.1159/000477402.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28564651

11. Zbigniew S. (2017) Role of iodine in metabolism.(代謝におけるヨウ素の役割) Recent Pat Endocr Metab Immune Drug Discov.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28103777

12. Dean, C. (2014) The Magnesium Miracle (2nd ed) (マグネシウムの奇跡(第2版)) Ballantine Books, ISBN-13: 978-0345494580.

13. Williams HTG, Fenna D, MacBeth, RA. (1971) Alpha tocopherol in the treatment of intermittent claudication.(間欠性跛行の治療におけるα-トコフェロールの効果) Surgery, Gynecology and Obstetrics 132:4, 662-666, April.

14. Haeger K. (1974) Long-time treatment of intermittent claudication with vitamin E.(ビタミンEを用いた間欠性跛行の長期治療) Am J Clin Nutr. Oct;27(10):1179-81.

15. Saul AW. (2003) Vitamin E: A cure in search of recognition.(ビタミンE:治療剤としての認識を求めて) Journal of Orthomolecular Medicine 18:3&4, 205-212.
http://orthomolecular.org/library/jom/2003/pdf/2003-v18n0304-p205.pdf
http://www.doctoryourself.com/evitamin.htm