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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ヨウ素補給の必要性

執筆者: Wojciech Rychlik, Ph.D.

(OMNS、2017年6月12日) 疲労感がある? 活力がない? 気分が落ち込む? 体重が増えた? 記憶力が悪くなった? 皮膚や口が乾燥する? 免疫系の問題がある? それなら、体がヨウ素補給を求めている可能性が十分にある。なぜヨウ素なのか。ヨウ素は人の健康に不可欠な元素なのに、いくつかの曖昧な理由で危険なものに選ばれ、食事から徐々に排除されているからである。さらに悪いことには、その拮抗物質である臭素に置き換えられている。こうした傾向は、「ヨードフォビア(ヨウ素恐怖症)」と呼ばれており(1)、多くの先進国で広く発生している甲状腺機能低下症の一因となっている。

ヨウ素の量は?

ヨウ素の欠乏には、以下との関連が見られている(2,3,4):
・乳腺線維嚢胞症から、乳ガン、胃ガン
・甲状腺腫(甲状腺肥大)
・覚醒度の低下による精神的問題、IQの低下、自閉症~クレチン症(胎児期のヨウ素欠乏はクレチン症につながり、
それより軽症の場合は自閉症やADHDにつながる)
・代謝が遅くなることにより、疲れ、不調、倦怠感、無気力、うつ、不眠症に至る
・唾液を作れなくなる、皮膚が乾燥する、汗をかかなくなる
・最適な解毒ができなくなる(とくに臭化物、フッ化物、重金属)
・温度変化に敏感になる、手や足が冷たくなる
・筋肉痛、線維症、繊維筋痛症
・勃起不全、不妊症、流産、性欲低下
・過体重
・高血圧、心臓発作・脳卒中の発症率増加

国際連合食糧農業機関(FAO)は、食事でのヨウ素摂取における推定安全上限値を公表しており(5)、体重1 kg当たり新生児では150 μg/日、成人では30μg /日と、数値に幅がある。146ポンド(66 kg)の大人なら、1日2 mg(2,000 μg)となる。妊娠・授乳期間中の安全上限値はこれより高くなっている(体重1 kg当たり40 μg/日)。

甲状腺機能低下症の治療法

甲状腺機能低下に対処するための最も単純な方法は、オルトヨウ素補給と呼ばれる適切なヨウ素補給である。甲状腺に損傷があると、甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3、主要な生物活性ホルモン)の補給が必要となる場合がある。こうしたホルモンの補給(6)は、医療専門家の厳重な監視下で行うべきである。しかし一般的に、無機ヨウ素の補給はそれよりはるかに安全性が高い。なぜなら、T4とT3をどれくらい作る必要があるか、体が「知っている」からである。ヨウ素代謝の生理機能を変える薬剤もあるが、それについてはこの記事の範囲外である。製薬会社は、安価なオルトヨウ素補給をしないよう医師に圧力をかけているので、主流の開業医からは、安価なルゴール液の処方箋をもらえそうにない。

ヨウ素補給で1点注意しなければならないのは、橋本病と呼ばれる自己免疫疾患、つまり慢性リンパ球性甲状腺炎で、これは甲状腺機能低下症の潜在的原因の一つである。甲状腺機能低下症と診断された場合、困ったことに、橋本病がその根底にある可能性が必ずしも正しく調べられたとは限らない。したがって、橋本病はよく誤診されてきた。医師は通常、橋本病の治療にホルモン補充療法を用いている。ヨウ素の過剰摂取によって、敏感な人の場合、橋本病が誘発されるおそれがあると信じている医師もいる(7)。ヨウ素補給が自分に適しているか、必ずかかりつけ医に相談すること。

ヨウ素使用の歴史と「ヨウ素恐怖症」

このテーマについては、すでにDr. Guy E. Abrahamが詳しく述べている(8,9,10)。ヨウ素という元素は1811年にB. Courtoisによって発見された。1850~53年には、A. Chatinが、甲状腺腫とクレチン症について、ヨウ素が豊富な地質帯では稀にしか見られないが、ヨウ素の供給が不足している地域ではよく見られること、ならびに、ヨウ素補給によって甲状腺腫を予防できる可能性があることについて述べている。1895年にはE. Baumannが、ヨウ素について、甲状腺における有効成分であると提唱している。

甲状腺ではヨウ素の濃度が高いことが、1895年にBaumanによって確認されるまで、ヨウ素を含む製剤や薬剤(サイロイド抽出物を除く)が、万能薬として広く用いられていた。

Kelleyによると(11)、「当初、ヨウ素が処方された疾患の種類数は驚異的である。麻痺、舞踏病、腺病、涙嚢瘻、難聴、脊椎の湾曲、股関節疾患、梅毒、急性炎症、痛風、壊疽、浮腫、癰(よう)、ひょう疽、凍瘡、火傷、熱湯傷、狼瘡、偽膜性咽頭炎、カタル、喘息、潰瘍、気管支炎と、これでもごく一部である。実際、ヨードホルム、つまりヨウ化物の一つであるヨードチンキは、通常の診療では治らないほとんどすべての症例に適用された。1820~1840年には、この強力な新しい治療薬がもたらす並外れた効果を証明する小論やモノグラフが驚くほど次々に現れた。」

残念ながら、そうしたモノグラフは、米国の医学図書館からほとんど消えてしまった。1800年代半ばには、一部の疾患のヨウ素療法で、1日当たり1グラム(1,000 mg)の摂取を求めるものもあったが、ほとんどの療法は1日5~50 mg摂るものであった。Dr. G. E. Abrahamによる1日の推奨ヨウ素量は、ルゴール液0.1~0.3 mLで、元素状ヨウ素の含有量では12.5~37.5 mgとなる。最近報告されたヨウ素・ヨウ化物負荷試験によると、全身に十分行き渡らせるためには、こうしたヨウ素量が必要である(12)。ヨウ化物の場合、それより少ない量でも甲状腺には十分な状態となる。

1900年代初頭に、ヨウ素を恐れる最初の権威が現れた。Prof. T. Kochlerは、ヨウ化物の摂取後に甲状腺機能亢進症になったと報告したのである(これは統計調査研究ではなく、単に個人の症例に過ぎない)。それにもかかわらず、薬事申請の数は増大した。ヨウ素製剤のみを扱った1956年発行の国際的目録には、ヨウ素を含有する承認済み製品が1,700以上掲載されていた。1948年にWolffとChaikoffが発表した論文では、血清中の無機ヨウ化物濃度が1 μM(ミクロモル)というレベルで甲状腺ホルモンの合成が阻止され、ラットでは甲状腺機能低下症と甲状腺腫が生じる、と結論付けられている。しかし彼らは、被験ラットにおける甲状腺ホルモン量すら測定しておらず、当然、被験ラットにおける甲状腺機能低下症と甲状腺腫の観察もされていなかったので、この結論は誤りであった。有機形態のヨウ素化薬剤は、かなり毒性の高いものが多かった。残念ながら、医学の主流派は有機ヨウ素と無機ヨウ素の区別をしておらず、ヨウ素恐怖症がさらに広まったのである。

数十年前は、パンにヨウ素が添加されていて、パン1切れに150 μg(現在の1日推奨摂取量)のヨウ素が含まれていた。1980年代には、ヨウ素に代わって臭素がパンに添加された。臭素はヨウ素の拮抗物質である(甲状腺腫の誘発作用がある)ため、米国ではヨウ素欠乏がさらにひどくなった。また、食事から塩をなくすことが大いに奨励されたことから、問題はさらに悪化した(塩は当時まだヨウ素が補充されていた唯一の食品であった)。ヨウ素恐怖症に屈しなかった先進国は日本だけである。統計によると日本は地球上で最も健康で長寿の国である。日本人の1日平均ヨウ素摂取量は約5 mgで、1 mgから18 mgまで様々な報告がある。報告された1日当たりのヨウ素摂取量を臨床症状の総数と照らし合わせた研究では、1日当たりのヨウ素摂取量が約1 mgの場合に、症状の報告数が最も少ない、つまり、健康度が最も高いという相関が見られた(13)。最近、食料への臭化物添加が普及していることから、こうした量は増えていそうである。

Dr. Abrahamによると(14)、「食料に適切な量のヨウ素が含まれていることは、最大の国家資産の一つと考えるべきである。食料からヨウ素を取り去るのは大きな誤りである。ヨウ素の1日摂取量を、全身にとって十分な量(RDA(推奨1日摂取量)の100~400倍の量)とすれば、甲状腺腫誘発物質ならびに放射性のヨウ素・ヨウ化物の降下から体を保護する効果のほか、免疫機能を改善することにより、感染症に対する十分な防御システムをもたらす効果、DNAと高分子の酸化損傷の大きな原因である一重項酸素の形成を減らすことにより、あらゆる臓器に抗発ガン作用をもたらす効果、有毒金属である鉛、水銀、カドミウム、アルミニウム、ならびに甲状腺腫誘発物質であるフッ化物と臭化物の尿中排泄量を増やすことにより、解毒作用をもたらす効果、ホルモン受容体の機能を正常にすることにより、内因性、外因性両方の甲状腺ホルモンに対する反応が改善される効果、糖尿病患者の場合は血糖抑制が改善される効果、心調律が安定して、有毒な持続放出型のヨウ素であるアミオダロンの必要がなくなる効果、そして高血圧症の患者の場合は、薬剤を使わなくても血圧を正常にする効果がある。ヨウ素の欠乏は、世界的に見ても、認識機能障害の大きな原因となっている。」

ヨウ素とガンの関連性

オメガ3系とオメガ6系のいずれの脂肪酸も、代謝するには体がヨウ素を要する。アラキドン酸の誘導体であるδ-ヨードラクトンという物質は、甲状腺と乳房組織、前立腺、結腸、神経系で生成され、アポトーシス(「細胞死」)と呼ばれるプロセスを調節する働きがある。アスコルビン酸は、細胞内での過酸化水素合成を促進するために必要とされ、この反応に必要なヨウ素遊離基を作るためのエネルギーも、それによって供給される。δ-ヨードラクトン値が十分高ければ、アポトーシスのプロセスによってガン細胞が死ぬ可能性がある(15)。

残念ながら、約150 mgという推奨1日摂取量(RDA)のヨウ素だけでは、甲状腺にてδ-ヨードラクトンを効率良く形成することはできない。δ-ヨードラクトンを効率良く生成するには、甲状腺におけるヨウ素濃度がもっと高くなければならない。δ-ヨードラクトンの生成に最適なヨウ素摂取量は、RDAの100倍であることが研究によってわかっている。これは、1日当たり約15 mgのヨウ素摂取に相当する(15,16)。現行のRDAよりはるかに多量のヨウ素を要する生化学反応がいくつかあることを暗示していることから、こうした研究結果は重要である。δ-ヨードラクトンが細胞死を引き起こすメカニズムは、一部の種類のガンを治療するための重要な経路となり得る。

ヨウ素の形態

無機ヨウ素は、-1 から+7までの6種類の酸化状態で存在する。最も還元された(最も電子量が多い)形はヨウ化物(I)で、たとえばヨウ化カリウムなどがある。元素状ヨウ素の二原子分子I2は電荷を持たない。単原子のヨウ素も電荷を持たないが、不安定で反応性が高い(Iに点を付けてI*と表記される遊離基)。これは、I2を紫外線にさらすことによって生成可能である。電界や磁界では生成されないのに、誤って示唆されていることがある。それより酸化された形のヨウ素には、次亜ヨウ素酸塩(II+1)、ヨーダイト(I+3)、ヨウ素酸塩(I+5)、過ヨウ素酸塩(I+7)がある。体の代謝によって、こうした形のものが生化学的に利用可能なヨウ化物に変換(還元)されることもあるが、その代償として、体内の抗酸化物質が激減する。正電荷を持つヨウ素の形態はどれも、比較的毒性があり、致死量(LD50)は体重1 kg当たり35~2,100 mgとされている。元素状ヨウ素(I2)とヨウ化物(I)は無毒である。しかし、ヨウ素(I2)は、「消毒薬」くさくて調理に不向きな味なので、補給の選択肢としてはあまり良くないという感覚に陥る。

そうした不利な味にもかかわらず、ヨウ素補給に関するほとんどすべての研究は、ルゴール液を用いて行われてきた(17)。その液自体は、ヨウ素5%ルゴールと呼ばれているが、実際には、12.5%のヨウ化物・ヨウ素または(I/[I3])イオンから成る。ルゴール液2滴(0.1 mL)には、ヨウ素・ヨウ化物の混合物が12.5 mg含まれる。ヨウ素の味がしないよう、また、食事補給用として正確な量を摂ることができるよう、ルゴール液を固形にしたヨウ素錠剤も作られた。

ここで、Edgar Cayceのアトミダインについて、少し触れておかねばならない。この有名な預言者は、最適な形のヨウ素サプリメントについて記事をいくつか書いている(18)。三塩化ヨウ素が最適という主張もあるが、この化合物は摂取すると有毒で、かつ粘膜を損傷するため、それが本当であるはずがない。三塩化ヨウ素は、77℃の温度で、また室温の水中でも、ICIと有毒ガスCl2に分解する(19)。Cayceのアトミダインは、95%のエタノールにヨウ素溶液(I2)が1%入っているだけに過ぎない。教養がある人でも、また医師でさえ、最適な形のヨウ素サプリメントは「元素状単原子ヨウ素」製剤(アトミダイン、新生ヨウ素(ナセントヨード)など)であると主張している人がいるのは驚きである。効率的なマーケティングと何か関係があるのだろうか。元素状ヨウ素は(I2)、グリセリンに溶ける。エタノールをグリセロールに変えると、実際、こうしたサプリメントは摂取しやすくなるため、Cayceのエタノール処方品より優れた製品として販売している会社もある。個人的に、グリセロールベースのI2サプリメントはヨウ化物より劣っていると思うが、消毒剤としては優れている。

Cayceによる洞察の妥当性を擁護するために言えば、甲状腺では、(セレンと過酸化水素が関わって)単原子I*という遊離基を形成することにより、短い中間段階を経て、Iイオンと、アミノ酸であるチロシンが反応し、モノヨードチロシンができる。ジヨードチロシンは類推的方法で形成され、最終的に、これらの分子が2つ結合して、サイロキシンができる。上記の段階はすべて、酵素である甲状腺ペルオキシダーゼによって運ばれる。甲状腺ペルオキシダーゼは通常、サイログロブリンというタンパク質に付着している。よって、単原子ヨウ素I*は人体に存在し、チロシンと直接反応する、という点では正しい。しかし、ヨウ素の遊離基を摂取した場合、その高い反応性によって、体中に安全に運ばれなくなるため、健康に良いとは思われない。

1930年代半ばに、甲状腺ホルモンであるサイロキシンが市販されるようになった。これは、甲状腺の損傷がある人にとっては朗報であった。残念だったのは、医師たちが甲状腺機能低下症のほとんど誰にでも、このホルモンを処方し始め、人体よりそのほうが甲状腺ホルモン値をうまくコントロールできると考えていたことである。ほとんどの医療専門家は、自然のままの栄養素(ヨウ素)とその生成物(ホルモン)との違いを十分認識していないため、「どんな形でもヨウ素はヨウ素」という見方は、危険な傾向となった。

製薬業界は、数々の有機ヨウ素製品を考え出した(注意:「有機」というのは、ヨウ素が1つの炭素原子含有分子と結合しているという意味であり、農薬を使わない環境で栽培したという意味ではない)。こうした製品はどれも毒性が比較的高く、医師による厳重な監視がなければ使用すべきでないことは確かである。安全に補給できるのは、IとI2という無機ヨウ素のみである(20,21)。また、こうしたサプリメントを高用量で摂取する場合も、かかりつけ医の指導を受けるべきである。

ヨウ素の用途

ヨウ素は、人体での代謝において重要な役割を果たしている。多くの研究者が、150 μgというヨウ素のRDA値は低すぎると考えており、とくに、ヨウ素の代わりに、競合する元素である臭素が一般的に使われている場合はそうである。したがって、食事補給におけるヨウ素の主要用途は、最適な甲状腺機能を可能にすることである。ヨウ素が不可欠な病気やヨウ素が役立つ病気はいくつかある。最良の結果を出すためには、ヨウ素・ヨウ化物に、セレン、マグネシウム、銅(銅は水道管に広く使われているため、通常は水道水に十分含まれている)、ビタミンB2(リボフラビン)およびビタミンB3(ナイアシン)を補うべきである。とくに薬物治療を受けている場合は、ヨウ素のどんなサプリメントでも摂る前に、かかりつけ医に相談しよう。

元素状ヨウ素(I2)には抗細菌性と抗真菌性があるため、ヨウ素溶液や、ヨウ素・ヨウ化物溶液の一般的な用途としては、傷口の殺菌のため局所適用する、膣炎や咽頭炎などの感染症に対処するため内服するほか、飲料水の殺菌にも用いられる。ヨウ素は抗細菌作用があるので、飲むと、善玉細菌叢がやられて下痢や胃けいれんを起こす可能性がある(これはルゴール液にも当てはまるが、ルゴール液にはヨウ化物も入っているので程度は軽い)。

ヨウ化物の摂取は、原発事故の場合に、破壊的な放射性ヨウ素が(主に甲状腺によって)体内に取り込まれるのを防ぐ。また、すでに甲状腺から取り込まれてしまった放射性ヨウ素のフラッシング(洗い流し)にも役立つ可能性がある。ただし、ヨウ素の量が多すぎると、甲状腺からのT4/T3の分泌が抑制される。

常識的な注意事項

どのヨウ素サプリメントであれ、過剰摂取すると、唾液腺が腫れたり、金属的な後味がしたり、皮膚の発疹や痒みが出たり(通常これは、重金属であるフッ化物や臭化物の解毒が急速に進むことによって生じる)、心拍が早くなったり、動悸がしたり、下痢をすることがある。サプリメント摂取をやめれば、こうした症状は、すぐに、多くの場合1日以内に消えるのが普通である。ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成を安定化させるため、アダプトゲンの一つであるが、後天的なヨウ素アレルギーがある場合(橋本病)など、稀に、甲状腺ホルモンのバランスを実際に悪くするおそれがある。また場合によっては、ヨウ素補給が甲状腺機能低下症を引き起こすことがあるため、かかりつけ医の診察を受けて、ヨウ素補給による甲状腺機能の悪化がないことを確認することが重要である。Alan Christianson (22)、Jeffrey Dach (23)、Alan Gaby (24)など、注意勧告をしている執筆者もいる。ヨウ素・ヨウ化物の高用量摂取によって橋本病が生じる傾向が考えられる場合は、甲状腺ホルモン値の検査と併せ、セレン、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、その他の微量ミネラルというような無機栄養素の検査と補給を受ければ、問題を予防できる可能性がある(23)。

無機ヨウ素の可用性

最もよく見られるヨウ素のサプリメントはルゴール液(17)である。その製品自体にはヨウ素が5%、ヨウ化物が10%含まれている。ルゴール液の固形錠剤も、いくつかのブランド名で販売されている。ヨウ素のサプリメントとして私が気に入っているのはヨウ化カリウム(KI)で、これは錠剤も市販されている。昆布などの海藻のエキスが入った様々な製品にもヨウ素は含まれている。中にはかなり希釈された製品もあるため、購入時にラベルをよく見ること。

安価な元素状ヨウ素(I2)のアルコール溶液を探すのは難しい。インターネットでヨウ素結晶を購入すれば、非常に簡単に自分で(アルコールもしくはグリセロールを使って)適切な溶液を作ることができる。単原子ヨウ素という概念は、価格を何倍にもつり上げるために考案された販売策略に過ぎない。もし、本当に単元素という宣伝文句どおりだったら、単元素の形で唯一存在する遊離基を実際に飲みたい人はいないだろう。ヨウ素の遊離基は、あまりに反応性が高いため、体内では自由に運ばれない。サプリメントではなく、外用消毒剤として使用する場合は、元素状ヨウ素を調合した製品(グリセロールにヨウ素を溶かしたものなど)が役立つと思われる。

別の形のヨウ素サプリメントには、藻類と甲状腺抽出物を混ぜてグリセリン、水、エタノールに入れたものもある。これは、T3とT4がきわめて少量しか入っておらず、推奨される1回分量も少ないため、害を及ぼす可能性は低い。元素状ヨウ素が入っているその他の錯体製剤は、消毒剤としては有用であるが、サプリメントとしては良くない。三塩化ヨウ素は、毒性が高すぎるため、サプリメントとしては避けるべきである(19)。

まとめ

ヨウ素について、定着しているRDA値(150 μg/日)では、多くの人には不十分である。最適な健康状態を維持するため、大人なら毎日2~5 mgのヨウ素を摂る必要がある。実際にこれは、FAOが定めるヨウ素の食事摂取における安全上限値(体重1 kg当たり30 μg/日)に沿っている。甲状腺機能障害や他の疾患(乳腺繊維嚢胞症やガンなど)の場合は、1日15~50 mgが必要となる場合もある。ホルモン療法や、ヨウ素を含む有機薬剤に代わる手段について、かかりつけ医に聞いてみよう。普通なら、彼らが安価なオルトヨウ素補給を最初に選ぶことはないと思われるからである。

健常な成人にとって最も安全で最適なヨウ素補給の形態は、ヨウ化物である。ヨウ化物は、様々な海藻によって、自然に大量生成される。

ヨウ素のサプリメント摂取については、人によっては禁忌の場合もあるので、是非かかりつけ医に相談のこと。

参考文献

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2. Dommisse J. MD Best Kept Secret (最も守られている秘密) (2009)?http://www.westonaprice.org/modern-diseases/best-kept-secret/#sthash.vdrKPaJw.dpuf

3.?http://theiodineproject.webs.com/addadhdautism.htm

4. Hamza RT1, Hewedi DH, Sallam MT. (2013) Iodine deficiency in Egyptian autistic children and their mothers: relation to disease severity.(エジプトの自閉症児とその母親におけるヨウ素欠乏症:疾患の重症度との関係) Arch Med Res. 44(7):555-61.?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24120386

5.?http://www.fao.org/docrep/004/y2809e/y2809e0i.htm

6. Abraham GE. The Concept of Orthoiodosupplementation and Its Clinical Implications.(オルトヨウ素補給という概念とその臨床的意義)?https://www.optimox.com/pics/Iodine/IOD-06/IOD_06.htm

7.?http://www.webmd.com/women/hashimotos-thyroiditis-symptoms-causes-treatments#1

8. Abraham GE. The History of Iodine in Medicine Part I: From Discovery to Essentiality.(医学におけるヨウ素の歴史 パート1:発見から根本的重要性まで)
http://optimox.com/pics/Iodine/IOD-14/PUB_14.htm

9. Abraham GE. The historical background of the Iodine Project.(ヨウ素プロジェクトの歴史的背景)?http://www.optimox.com/pics/Iodine/IOD-08/IOD_08.htm

10. Abraham GE. The History of Iodine in Medicine Part II: The Search for and the Discovery of Thyroid Hormones.(医学におけるヨウ素の歴史 パート2:甲状腺ホルモンの探求と発見)?http://optimox.com/pics/Iodine/IOD-15/PUB_15.htm

11. Kelly FC. “Iodine in medicine and pharmacy since its discovery(ヨウ素発見後の医学と薬学におけるヨウ素), 1811-1961. ” Proc R Soc Med, 1961; 54:831-836.?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1869599/

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13. Fallon Morell S. The Great Iodine Debate(ヨウ素大論争) (2009) The Weston A. Price Foundation,?http://www.westonaprice.org/modern-diseases/the-great-iodine-debate/

14. Abraham GE. The Wolff-Chaikoff Effect: Crying Wolf? (ウォルフ-チャイコフ効果は虚報?)https://www.optimox.com/pics/Iodine/IOD-04/IOD_04.html

15. Brownstein D. The Cancer-Iodine Connection(ガンとヨウ素の関連性), (2015)?http://www.newsmax.com/Health/Dr-Brownstein/iodine-cancer-cell-death-fish-oil/2015/06/10/id/649877/

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17. Bacteriological Analytical Manual, R40 Lugol’s Iodine Solution(細菌学的分析マニュアル、R40 ルゴール・ヨウ素液) (2001),?http://www.fda.gov/Food/FoodScienceResearch/LaboratoryMethods/ucm062245.htm

18. Review of Atomidine(アトミジンのレビュー), International Wellness Directory,?http://www.mnwelldir.org/docs/reviews/atomidine.htm

19. Material safety data sheet(製品安全データシート),?http://www.mnwelldir.org/docs/history/Iodine_Trichloride.pdf

20. Abraham GE. The historical background of the Iodine Project(ヨウ素プロジェクトの歴史的背景)?http://www.optimox.com/pics/Iodine/IOD-08/IOD_08.htm

21. Abraham GE and Brownstein D. A Rebuttal of Dr. Gaby’s Editorial on Iodine.(ヨウ素に関するDr. Gabyの論説の反証) (2005) Townsend Letter, The Examiner of Alternative Medicine,?http://www.townsendletter.com/Oct2005/gabyrebuttal1005.htm

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