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水素について

この記事の執筆者

下北沢西口クリニック

医学博士。産業衛生専門医・指導医。社会医学系専門医・指導医。専門は予防医学、産業保健、分子整合栄養療法

効果が着々と確実視されつつある水素。水素吸入により、心停止、蘇生後の死亡率は下がり、後遺症なく回復する割合が上がっているなど、水素の効果と効果が期待できる疾患について紹介いたします。

水素の医学的効果

水素は、2007年に日本医科大学の太田成男教授の研究グループから非常に画期的な論文(1)が、「Nature Medicine」という権威のある医学雑誌に発表されました。

すべての病気の原因ともいわれている活性酸素を体内で効率よく選択的に取り除き、脳梗塞による脳の障害を著しく減らすことが突き止められたのです。これはマウスによる実験でしたが、水素分子が抗酸化物質として健康障害の予防・治療に有用であるという世界初の研究であり、人においても同じ効果が期待できると世界中から注目を集め、これをきっかけに多くの水素研究がスタートを切りました。

それから15年が経過した現段階において、水素に関する数千もの科学論文が発表され、水素の様々な効果について確認されつつあります。医学の分野においては、ほぼ全身にわたる多くの疾患に対する効果が報告されています。また、すでにおよそ数十件の臨床実験が行われており、日本においては厚生労働省により、先進医療のB指定を受けていました(2)。

水素の先進医療指定について

私の著書「人生100年の健康づくりに医師がすすめる最強の水素術」で、すでに2022年に先進医療Bが取り消された経緯について詳しく紹介していますので、詳しくはそちらをお読みください。

慶應義塾大学医学部水素ガス治療研究センターの研究では、救急外来に心停止で運び込まれる患者さんに水素吸入を行った場合、蘇生後の脳障害、心臓障害が大幅に抑えられることが確認されていました(3)。

そこで、慶應義塾大学医学部は、再灌流障害についての、ヒトでの臨床治験を行うために、厚生労働省に申請を行い、2016年に水素ガス吸入療法が先進医療Bに指定されました。

「水素ガスの吸入療法は安全であり、広く提供可能な画期的な治療となる可能性が高いこと、血流が一時停止した組織に再度血流が流れるときに活性酸素が大量に発生して組織に傷害を与える再灌流障害を水素が抑えること、そしてそれが患者の予後を大きく左右し、 心停止後の生存率や脳の機能の改善も期待できる」と、水素ガスの効果が期待されたということです。

水素吸入の臨床利用の安全性も確認され、2017年2月から臨床試験が全国の12医療機関で行われました。

ところが2019年12月から始まった新型コロナウイルス肺炎の流行によって、この治験では症例を集めることが難しくなってしまったのです。このため、臨床試験の予定症例360例に対し、登録症例73例の段階で「研究実施計画書に定められた中止基準である、「研究対象者の組み入れが困難で、予定症例数に達することが困難であると判断された場合」に該当すると判断され、治験が中止されました。

そして、慶應義塾大学医学部は、水素吸入の先進医療Bの承認について、2022年3月に取り下げ申請を行い、6月に告示されたのです。

水素吸入についての先進医療の認定取り下げは、決して水素の有用性や安全性が否定されたからではありません。単に、治験が終了したために取り下げたということです。

水素に懐疑的な意見を持っている方が、事情を知らずに、「先進医療が取り消されている!水素はやはり怪しい」という意見を述べていることもありますが、それは全くの誤りであり、実は水素の効果は着々と実証されつつあるのです。

治験では非常に良い結果が得られ、2022年11月5日にアメリカ心臓学会蘇生科学シンポジウムで発表されました。この結果をみると、水素が心停止後の再灌流障害を抑える効果を持つことは確実であると考えられます。さらに、2023年3月には「eClinicalMedicine」誌に論文が発表されました(4)。この論文についても、「統計学的有意差が出ていないから、レベルが低い、水素はだめだ」という批判をする方がいます。けれどもこれも、統計で有意差を出せるための症例を集めることができなかったことによります。明らかに水素吸入により、心停止、蘇生後の死亡率は下がり、後遺症なく回復して社会復帰する割合は上がっているのです。従来治療と水素吸入療法を比較すると、90日後の生存率は61%が85%に、後遺症なく回復した人の割合は21%が46%に上昇していました。​

慶應義塾は3月22日にプレスリリースを行っており(5)、3月27日にはNHKニュース、7月13日にはテレビ朝日のモーニングショーで大きく取り上げられました。

今後、今回の治験(第2相臨床試験)結果を受けて、第3相臨床試験へと進んでいくことが期待されています。

水素の効果について

  • 早期の疲労を防ぎ、持久力、疲労回復をサポートする
  • ミトコンドリアのATP生産をサポートしてエネルギー代謝を活性化する
  • 筋肉中の乳酸生成を減少させる
  • フリーラジカル生成を抑え、酸化ストレスを減少させる
  • 微小傷害からの保護
  • 抗炎症効果
  • 血管拡張、循環促進効果

水素の効果が期待できる疾患

MEDLINEという論文検索ソフトで検索した結果、今までに研究で確認されている水素により予防、治療の可能性のある疾患は以下の通りです。ただし、動物実験の結果によるものも含みます。2015年にこれまでの水素研究を網羅する論文(6)が発表されました。これをみると、ありとあらゆる臓器、疾患に効果が期待できることがわかります。

  • 生活習慣病:糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、メタボリックシンドローム
  • 循環器疾患:脳梗塞、脳出血、心筋梗塞
  • 神経疾患:パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症
  • 肝臓:ウイルス性肝炎、肝硬変
  • アレルギー性疾患:花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息
  • 自己免疫疾患(膠原病):関節リウマチ、SLEなど筋疾患
  • 悪性腫瘍:乳がん、大腸がん、肺がん、すい臓がん、前立腺がん抗がん剤、放射線治療の副作用軽減
  • 感染性・炎症性疾患:クローン病、歯周病
  • その他:白内障、筋肉疲労回復、日焼け、乾癬など

水素の特徴

  • 副作用がない​
  • 多機能 疾病治療効果・治療の補助​
  • 身体のありとあらゆる場所で効果を発揮​
  • 血管のない場所に届いて作用する​
  • 脳にも届く(脳血液関門を通る)​
  • 安価である​

水素療法について

水素を取り入れるためには、水素ガス吸入、水素風呂、水素水や水素サプリメント、水素ゼリーなどがあります。最も効率よく体内に多量の水素を取り入れることができるのは水素ガス吸入です。私は睡眠中の連続吸入をお勧めしています。

水素風呂もお風呂の時間を健康増進、治療にあてられるという意味でお勧めです。水素風呂につかると身体の芯から温まりますので温熱療法にもなると考えています。また、アトピー性皮膚炎、湿疹、痒み、ニキビ、脱毛などの症状に対する効果を期待できます。皮膚表面から大量の水素が体内に吸収されて血中の水素ガス濃度が上がることは慶應の研究(7)で確認されています。

外出先、旅行中など、吸入ができないときに水素サプリを飲んで体内で水素を発生させるというのも効果的です。水素水には胃壁のグレリン受容体を活性化して視床下部にシグナルを送り、摂食促進し、成長ホルモン分泌を促すという作用もありますので、がんの悪液質の改善にも効果があると考えられます。実際に悪液質の患者さんが水素サプリの大量摂取で回復したケースもあります。

サプリであれば器械も必要なく手軽ですし、入院中でも簡単に取り入れることができますのでぜひお試しください。

参考文献

(1) Ohsawa I, Ishikawa M, Takahashi K, et.al. Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nat Med. 2007; 13(6): 688-94.

(2) 厚生労働省 先進医療 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html

(3) 佐野元昭 水素ガス吸入療法による心肺停止蘇生後臓器障害抑制 Organ Biology 23(2):117-120 2016

(4) Efficacy of inhaled hydrogen on neurological outcome following brain ischaemia during post-cardiac arrest care (HYBRID II): a multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial Tomoyoshi Tamura, Masaru Suzuki, Koichiro Homma, Motoaki Sano 

HYBRID II Study Groupe

(5) 水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果-全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告-https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2023/3/22/28-136611/

(6) Ichihara M, Sobue S, et al. Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen- comprehensive review of 321 original articles. Med Gas Res. 2015; 5:12.

(7) Ichihara G, Katsumata Y, et al. Pharmacokinetics of hydrogen after ingesting a hydrogen-rich solution: A study in pigs Heliyon 7(11),  2021, e08359

※本記事は宮川路子先生のホームページ「こころと身体の栄養療法」にて掲載された「水素について」を、許可を得た上で転載しております。https://eiyouryohou.com/?p=556

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