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疲労からココロとカラダを守る〜心療内科医が教える・生きやすくなるためのヒント〜【前編】

今回はメディアでお馴染み、そして書店に並ぶ多くの著書をご執筆されている心療内科医・姫野 友美先生より、『自分が実践している疲労対策』について教えていただきました!

「忙しい毎日を過ごしながらもエネルギッシュさを保つ秘訣とは?」

本インタビューでは実際の対処法だけでなく、自分の心を守るための物事に対する考え方など、現代社会でストレスと闘う全ての方にお届けしたい内容です。

疲労対策の大原則は「13食」

柳澤:姫野先生は日々の診療に加えて執筆作業からご講演、さらにはメディアまで多方面でご活躍されています。そんな日々を送られていて「疲れない訳がない」と思うのですが、ズバリ疲労対策として、どのようなことを行われているのでしょうか。

姫野:これまで疲労に関連した本を3冊出版しています。基本原則として、食事は3食を貫いています。どんなに予定が詰まっている日でも、食事を抜くことはありません。「いつ食べるの?」と聞かれることもありますが、診療の合間なりタクシーでの移動中なり、とにかく食べられるタイミングで食べるようにしています。



  1. 『「疲れがなかなかとれない」と思ったとき読む本―ココロとカラダがすっきり変わるヒント』(青春出版社)
  2. 『心療内科医が教える 疲れとストレスからの回復ごはん』(大和書房)
  3. 『ストレス脱出レシピー心療内科医に教わる「ごはん術」』(主婦の友社)
食材の選び方

柳澤食事の上で「この食材を積極的に摂る」など、意識していることはありますか?

姫野:まずは、たんぱく質をしっかり摂ることを心がけています。朝はプロテインパウダーに卵、昼夜は自分で作ったお弁当を食べています。朝には必ずスープかお味噌汁を飲んでいます。ちなみにお昼のお弁当には魚とお肉、それから野菜を入れるようにし、夕食は魚とお肉に加えて大豆製品もプラスしています。

それから炭水化物の摂り過ぎには注意しており、お米を食べる時は雑穀米を選んでいます。間食もすることがありますが、低血糖防止とエネルギー補給を兼ねてナッツやアーモンドミルクを選び、間には必ずアミノ酸を飲んでいます。

柳澤:アミノ酸の補給ですか。それはどういった理由からでしょうか?

姫野:集中力が切れそうなタイミングでアミノ酸を補給すると、だんだんとエネルギーが湧いてくるんですよね。今ではエネルギー切れを起こす前に飲むようにしています。

柳澤:なるほど。実体験からルーティンになったのですね。

疲労対策としてのサプリメント活用

柳澤:食事以外のことも伺っていきたいと思います。疲れた時のリフレッシュ法としては様々なものがありますが、姫野先生ご自身が「これは疲労対策になる」と実感されている対策はありますか?

姫野:まずはサプリメントですね。先ほど書き出してみたら15種類も飲んでいたことに気付き、自分でも驚きました(笑)これだけの種類があると、さすがに一度に飲んでも吸収しきれないので「これは朝用、あれは間食用」といった具合に飲み分けています。

自分の体質的に割とすぐに効くタイプなので、あちこちに効かせられたらという期待も込めて、色々な種類のサプリメントを少しずつ摂るようにしています。欲張りだと言われてしまいそうですが。

柳澤:15種類!私世代になると何かしら飲み忘れてしまいそうです(笑)ちなみに、特に疲れが溜まっている時に飲む“とっておき”サプリメントはありますか?

姫野:ここ最近で効果を実感したのは、5-ALA(5-アミノレブリン酸)です。これは即効性があるなと驚きました。ビタミンB群やビタミンDも良いのですが、これらを飲んでもイマイチな時があります。そんな時に5-ALAを補給すると、ミトコンドリアのエネルギーサイクルが回り出すような体感があります。まさに「グルグル動き出したぞ」という感覚です。

柳澤:5-ALAは、サプリメントの中でも比較的お値段がしますよね。

姫野:そこがネックですね。もっと手が伸びやすい価格帯になってくれたら嬉しいのですが・・・。ただ、摂取量については私の場合、10mgでも十分効きます。あとは鉄を補給すると5-ALAの本領が発揮されるので、鉄も一緒に飲むのが効果を最大限に実感するためのポイントになります。

柳澤:コロナ禍になってから、5-ALAはますます注目されている印象です。

姫野:以前からアスリートの中では飲んでいる方もいました。一方で私は「どんなものかな?」くらいに思っていたのが本音です。ところが最近では5-ALAに関する論文もたくさん出てきており、国内の学会でもきちんとしたデータが示されています。

そして、実際に飲んでみたところ「確かに疲労軽減に役立つな」という実感を持ちました。自分が飲んでみていいと思ったサプリメントは、しばしば患者さんに処方することがありますが、皆さんの反応も良いですね。

他の治療ではなかなか効果があらわれなかった副腎疲労の患者さんの例をご紹介します。それまでは休み休みでないと家事や仕事ができない状態でしたが、5-ALAを補給し始めてから「今日は午前中にこれだけ活動できた!」という嬉しい報告をいただきました。

ただ一点付け加えたいのが、元々元気な方の場合だと5-ALAを飲んでもさほど効果がわからないかもしれません。

柳澤:なるほど。近頃疲れやすく感じることがあるので、私も試してみたいと思います。サプリメントでいうと、他の種類はいかがですか?

姫野:あとはDHAですね。以前、クリニックでトラブルが発生し、悩んでいた時期がありました。しかしこの時、悩むと同時に「どうにかなるはず」という確信もありました。その後、事態は好転して行き、まさに“ピンチはチャンス”を実感した瞬間でした。ちょうどその2〜3ヶ月前からDHAを飲み始めていました。

正直なところ、その時は即効性を感じなかったものの、今思い出してみるとこの時前向きな気持ちを保てたのはDHAのおかげだったのかな?と思っています。

柳澤:私自身も似たような経験があります。悩みが生じた時にしばらくじーっとしていると、あるタイミングで悩んでいたのがウソのように解決策が浮かび上がってくるのです。

姫野:何か方法があるはずと考えているうちに「これだ!」という突破口に辿り着くんですよね。この時の経験から、DHAにはストレス耐性を上げる働きがあるのではないかと考えるようになりました。

柳澤:オメガ酸は情動の安定化に役立つと感じています。落ちる時に落ちたとしてもリカバリーが早く、そのまま沈んでいくのではなく沈む前に浮かび上がるための手助けをしてくれるイメージですね。

姫野:リカバリー力はありますね。レジリエンスの向上です。自分が試してよかったと思うものは、先ほどの5-ALAと同様、患者さんにも飲んでみていただくのですが、DHAもやはり改善がみられる方は多いです。

ストレスを溜めないための「メンタル術」

柳澤:これまで疲労対策としてのサプリメントについてお話しいただいてきましたが、日頃ストレスを溜めないために心がけていることはありますか?

姫野:ストレスを溜めないための心持ちについては、20年ほど前に『大丈夫!そんなにがんばらなくても』(青春出版社)という本を出版しました。この中で“30の魔法の呪文”として心が楽になる格言をまとめており、自分でも時折見返すようにしています。

柳澤:格言、気になりますね。一部ピックアップしてご紹介いただけますか?

姫野:「人生に無駄はない」。これは自分が生きていく上で、全ての経験が何かしらの役に立つということ。それから「物事には必ず終わりがある」。たとえ辛いことや悲しいことが起きても、その状況は長くは続かないですし、いつか必ず良くなっていきます。私自身、ハプニングが起きた時は「今だけだから大丈夫!」と考えるようにしています。

他には「仕事は楽しく遊びは真剣に」「明日でいいことは明日しよう」「自分ができないことは人に任せる」「言いたいやつには言わせておけ」などなど。

柳澤:何だかそういった格言を聞くだけでも気持ちが軽く、楽になる気がしますね。生きていく上で、心持ち一つが与える影響は決して小さくないと思います。

姫野:心がけ以外では、右脳と左脳をバランスよく使うことも重要です。医師として仕事をする上では「左脳優位型」の論理的な思考をすることがほとんどですが、頭を休ませるためにも合間で右脳を働かせるように意識しています。

「体が資本」のアスリートにおけるボディメンテナンスの重要性

姫野:試合観戦が趣味でスポーツには目がないので、2020東京オリンピックが生で観れなかったのは本当に悲しかったです。各競技のチケットも持っていて、開会式のチケットも購入するほど楽しみにしていたので・・・。

柳澤:全世界の選手の活躍を間近で見れるチャンスはそうありませんし、中止になったのは本当に残念でしたね。2024パリ大会はどうなるか。

姫野:その頃までには、コロナに関しては一旦収まるような気がします。各国において徐々にコロナ前の暮らしに戻っていくのではないでしょうか。

柳澤:同感です。オミクロンがひとまず最後の大きな流行株になるのではと予想しています。

姫野:オリンピックの話題が出たので少しスポーツ関連のお話もしますと、スポーツ選手の栄養指導にも携わっています。

これは栄養療法を実践している、とある選手の話です。体内にはピロリ菌がいてSIBO※1 もありました。しかし、これらを全て治したのち晴れて決勝の舞台にも立てるようになったのです。これまで何人も診てきた経験則から、彼に限らずアスリートの中にも胃のピロリ菌保菌者は結構多いのではないでしょうか?

とはいえ、もともとアスリートはエネルギッシュな方が多いので、医療機関で検査しない限りは気付かないケースも多いです。これは“アスリートあるある”かもしれません。

ところが一度サポートをしていくと、ピロリ菌のいる選手は怪我をしやすい傾向がみえてきました。栄養素などの吸収も悪くなるので、「怪我が多い」「疲労感が取れない」といった主訴で受診した際に「あら、(ピロリ菌が)いるかもしれない」とお伝えすることが度々あります。そして、ピロリ菌を除菌してあげるとパフォーマンスも上がっていく場合が多いのですよね。

柳澤:ベストコンディションを目指し、さらにはその状態を保てるように心がけること。これが、とりわけアスリートにとっては重要になるということですね。

姫野:アスリートという職業は、自分の体が資本になります。現役期間が限られているからこそ早い段階からボディチェックを行い、コンディションを整えることが競技実績の向上にもつながっていきます。そのサポートをして送り出すのが私たちの仕事であると自負しています。


※1:小腸内細菌異常増殖のこと。小腸内の細菌が過剰なほど増殖して腹部症状を起こす疾患。

自転車通勤をやめられない理由

柳澤:ストレスを溜めないための対策からスポーツの話題で盛り上がってきましたが、それ以外に行われているストレス対策はありますか?

姫野:そうですね。あとは片道30分、往復で1時間の自転車通勤を続けています。自転車漕ぎはリズム運動なので、セロトニンが出ます。そのおかげか、自転車を漕いでいる時にアイデアが浮かぶこともありますし、文章を考えるのもはかどります。

周りからは「危ないからやめてくれ」と言われますが、自転車通勤をやめられないのはこうした理由のためです。

柳澤:自転車通勤をされているとは驚きです!距離としてはどのくらいになるのでしょう?

姫野:エリアでいうと都立大学駅から大崎広小路駅までですが、そもそも自転車は時速どれほどでした?(検索中)自転車は時速約20キロとのことなので、私の場合はちょうど10キロほどでしょうか。

柳澤:そうなると毎日20キロも自転車通勤されている訳ですか。健康的でとても良い習慣ですね。




『疲労からココロとカラダを守る〜心療内科医が教える・生きやすくなるためのヒント〜【後編】』は、2月10日(金)に配信予定です。次回もどうぞお楽しみに!

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