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疲労からココロとカラダを守る〜心療内科医が教える・生きやすくなるためのヒント〜【後編】

今回はメディアでお馴染み、そして書店に並ぶ多くの著書をご執筆されている心療内科医・姫野 友美先生より、『自分が実践している疲労対策』について教えていただきました!

「忙しい毎日を過ごしながらもエネルギッシュさを保つ秘訣とは?」

本インタビューでは実際の対処法だけでなく、自分の心を守るための物事に対する考え方など、現代社会でストレスと闘う全ての方にお届けしたい内容です。


(前編はこちらよりご覧いただけます)

疲れが溜まりがちな現代人に伝えたいこと

柳澤:日々疲労と闘っている現代人にアドバイスしたいことはありますか?

姫野:まず、とにかくしっかりと食事を取っていただきたいです。言うまでもなく毎日の食事は健康で過ごす上での基盤となりますが、日々診療しながら思うのは「食習慣」と上手にお付き合いできている方が非常に少ないということです。

柳澤:それは食事の回数?もしくは食事の中身についてでしょうか。

姫野:食事の中身ですね。炭水化物に偏った食事をされている方が多くいらっしゃいます。冒頭でもお話ししたように、たんぱく質をしっかりと摂って、それから腸内環境を整えるために野菜も忘れずに食べていただきたいです。

きちんとした食事が取れていなければ脳も体も動かなくなってしまいますし、エネルギーも産生できなくなります。毎日の食事からエネルギーが生み出されるという体の仕組みを理解してもらえればと思います。

柳澤:何を食べるかは非常に重要ですね。

姫野:あとは昨今、改めて注目されている睡眠も重要です。睡眠時間をしっかりと取りましょう。

柳澤:最近話題のトピックスは「睡眠」なのですね!

姫野:ついこの前までは「腸内環境」が話題のトピックでしたが、今は「睡眠」が要注目テーマとなっています。その影響もあってか、様々な睡眠補助アプリがリリースされ始めています。

柳澤:睡眠の質の向上は、コロナウイルスなどの感染症の基本的な予防対策としても外せないテーマだと考えています。

姫野:質の良い睡眠が取れていなければ、免疫力も落ちますしね。それに、体の修復は眠っている間に行われます。どれほど良い食事をしていても、その栄養を体内で十分に活躍させるには睡眠を取る必要があります。

夜になるとついスマホをいじってしまう人も多いのではないでしょうか。というのも、スマホには「音」がないのでテレビよりも刺激が少なく、頭が疲れている時ボーッと見るには最適なツールといえるからです。

ですが、スマホから得られる情報の大半は知らなくてもいい情報だったりします。ここをどのようにデジタルデトックスするかは、デジタル社会の現代において、そしてさらなるデジタル化が進むこれからの時代において、大きな課題になると考えています。

柳澤:「デジタルデトックス」ですか、なるほど。

デジタルデトックスから考える「SNSとの付き合い方」

姫野:デジタルデトックスには、いかに“ストレスを体に入れないか”も含まれます。現代におけるストレス要因の代表格としては、SNSが挙げられます。実際に私の患者さんの中にも、SNSで様々なことを言われて精神的に病んでしまう方もおられます。

また、宣伝ツールもLINEやメルマガなどのSNSに移行しつつあり、こうした時代背景から「SNSで上手く宣伝しなければいけない」というある種の強迫観念を抱いてしまう経営者もいます。

そして「SNSを駆使しなければ商品が売れない」と考えるほど、自然とスマホやパソコン、タブレットを見る時間も長くなります。そうなると結局、目も頭も疲労してしまうわけです。その結果、メラトニンの量も減っていくので睡眠時間が削られ、悪循環が生まれてしまいます。

SNSは現代の私たちにとって身近な存在です。しかし同時に、いかにデジタルツールを活用しつつ自分の体を守るのか。今後はこうした意識が今まで以上に必要になってくるでしょう。

柳澤:今の時代、デジタル抜きの生活は想像できないほど暮らしに深く根付いています。だからこそ姫野先生がおっしゃるように、デジタルデトックスについては私たち一人ひとりが考えていかなければいけませんね。

姫野:私の患者さんの話を例に挙げると、ご本人としては良かれと思って投稿した内容を違った意味で捉えられてしまい、それが原因で病んでしまった方がいらっしゃいました。この方の場合、「相手を傷付けてしまったのだろうか」と不安になられたのです。

柳澤:表情が見えない“文字だけのコミュニケーション”だとお互いに誤解を生みやすくなる部分もあるのでしょうか。SNSでの誹謗中傷も社会問題化していますね。

姫野:Twitterを見ることで自分が辛くなるなら、開かなければいいのです。面と向かって思い切り誹謗中傷する人はなかなかいないと思いますが、ことSNSとなると相手との間に一枚の壁ができ、何でも書き込めるようになってしまう。書き込んだところで、自分が何かの被害を被る訳ではないですからね。しかし裏を返せば、こうしたSNSはいつでもシャットダウンすることができるということです。

自分の心を守るためにも「きついな」と思った時には、思い切って離れる決断をする必要があります。SNSはコミュニケーションの手段の1つですが、それに振り回されるのでしたら、その方法はマイナスにしかなりません。今もしSNS上のやり取りで不安を抱えてしまったり、傷付いている方がいたとしたら、離れどきを見極める必要があります。

柳澤:私は過去にコーチングを学びましたが、自分のメンタルが削られるような対人関係は、遠ざかるなりしていかにその相手と関わらないようにするかというスキルが重要であることを知りました。

姫野:それこそ「言いたいやつには言わせておけ」くらいの心持ちがメンタル維持のためにもちょうどいいと思っています。

柳澤:自分の心をいかに守っていくか、ですね。

姫野:実は、パソコンが普及してきた頃、心理士と「これからニューナルシスティックパーソナリティディスオーダー(新しい自己愛性パーソナリティ障害)が増えてきそうだね」と話していました。これは “新しい自己愛性格”とでもいうものでしょうか。

その時代、引きこもりが社会問題となりましたが、たとえ引きこもっていてもネット社会とは常につながっていられます。ただ、対面コミュニケーションと大きく異なるのは「つながり方」で、(ネットでのコミュニケーションは)一方通行のつながりということです。

SNSにおいては、実際に相手と会う必要はありませんし、嫌な情報や自分と異なる意見などは無視し好きなものだけを取り入れられる世界で生きることができます。このような状況が自己愛的な性格の形成に関与していると考えています。相手の気持ちは考えず、好き勝手に発言する。SNSで散見される誹謗中傷も、こうした問題の延長線上にあるのではないでしょうか。

これからの医療としてのオーソモレキュラー

姫野:オーソモレキュラー療法について、患者さんだけではなく一般の方にもっと知ってほしいという気持ちが強くあります。

柳澤:私としても「健康維持・健康増進のためにも、日頃から栄養素を補給していこう」といった考え方が日本でも根付いてくれることを願っています。

姫野:最近ではオキシトシンの重要性についても言及されるようになってきました。健康寿命に及ぼす影響の中でも、「ふれあい」や「つながり」といったコミュニケーション的要素が最重要項目であることが、研究によって明らかになってきました。

オキシトシンは誰かと一緒に食事をするだけでも分泌されます。食べることの重要性というのは、ドーパミンやセロトニンの分泌促進も然り、脳の機能を維持するためにもみんなで仲良く食卓を囲めるのが理想的ですね。

柳澤:一緒に食べることでオキシトシンも増えるというのは朗報ですね。

姫野:幸いなことにテレビ出演の機会をいただき、番組主治医を担当している『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京)では、近頃オーソモレキュラー的な話題が増えてきています。多くの方にオーソモレキュラー療法について知ってもらい、少しでも興味を持ってもらえるように、マスメディアの力もお借りしながら今後も世間に広めていけたらと思っています。

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