新型コロナウイルスの流行が始まってから、まもなく4年目を迎えようとしています。最近では、バイデン大統領がインタビューで「新型コロナウイルスのパンデミックは『終わった』」との見解を示しました。また、アメリカでは市民レベルでもマスク着用者はほぼおらず、もはやコロナは話題にさえ挙がらないほどの“アフターコロナ”状態になりつつあります。
- 悩み・目的
- 個別の病気
- 治療法・栄養
感染症から身を守るための免疫強化術【第3弾】
「第7波」が落ち着いたのも束の間、早くも「第8波」が到来したという報道が目立ってきました。その上、今冬は第8波とインフルエンザの流行が重なることが懸念されています。
こうした状況下、ウイルスによる感染の可能性が高まる時期に免疫を適切に高めておくことは、感染リスクを減らすだけでなく、感染した場合の重症度と後遺症リスクを減らすためにも重要です。
食事・運動・睡眠・ストレス対策や社会とのつながりといったライフスタイルを工夫することで、健康的な反応性と回復力を備えた免疫システムを構築することができます。
この土台があることで、感染症対策、病気の予防、そして心身の健康の達成・維持に近付けるでしょう。
ウイルスから自分の体を守るには
一方、日本においては、おそらく世界中で最もマスク着用や手指消毒をまめに行い、至るところにパーテーションを置くなどの努力をしているにも関わらず、「第7波」の最中である9月始めには6週連続で感染者数が世界最多となりました。
新型コロナウイルスに対するワクチン接種の間隔も「第8波」の到来に備えて3か月に短縮されるなど、アフターコロナの“ア”の字も見えない状況です。
そうした中でウイルスから自分の体を守るためには、日頃から免疫力を高く維持し、ウイルスに負けない体作りを目指すことが重要です。以下のような生活習慣の改善を意識し、免疫力アップを図りましょう。
免疫強化対策(1)食事で意識したいポイント
野菜が豊富な食事では植物性栄養素やビタミン、そのほかの抗酸化物質や食物繊維などを十分摂取することができ、過剰な免疫反応をダウンレギュレート(下方制御)するのに役立つことが多くの研究によって示されています。
そのため、第一に果物や野菜をたくさん食べるように心がけ、腸内微生物叢を強化するためにも様々な色の野菜を摂りましょう。カラフルな野菜は多様な植物性栄養素を含み、炎症のバランスを整え、酸化ストレスを軽減したり、抗酸化レベルを高めるのに役立ちます。
具体的にまとめると、
- 毎日最低28~35gの食物繊維を、できれば野菜や果物から摂取しましょう。
- 発酵させた野菜やそのほかのプロバイオティクスを含む食品で、腸のバリア機能を維持しましょう。
- 精製された砂糖や塩、あるいは加工食品のように血糖値を乱高下させる食品、飽和脂肪が過剰な食品などの摂取頻度を減らしましょう。
免疫強化対策(2)良質な睡眠の重要性
睡眠は回復力と免疫調節力の基盤となり、免疫機能と炎症シグナルに大きな影響を与えます。十分なレム睡眠を伴った、質が高く十分な時間 (7~8時間)の睡眠を取ることは、免疫維持の一環として、また、病気からの回復時にも最も重要なポイントになります。
睡眠の質が悪かったり、不眠症などで睡眠時間が短いと(多くの研究で1晩あたり5~6時間だと)、炎症性サイトカインが増加したり、概日リズムが乱れることによって自然免疫の働きが悪くなることが研究によりわかっています。
- 多くの研究で、免疫システムや抗炎症に最も良いとされる睡眠時間は7~8時間です。
- 睡眠不足が続いた際は、1~3晩、8~10時間ほどの十分な睡眠を取ることで、低下していた免疫細胞の活動を回復させることができます。その際、概日リズムを狂わせないために、朝起きる時間は一定にし、寝る時間を早めに設定するように心がけましょう。
- ベッドに入る前には、スマートフォンやパソコンの画面をなるべく見ないようにしましょう。ブルーライトは、睡眠の質を高めるメラトニンの分泌を抑えてしまいます。
- 寝室は涼しく、静かで真っ暗な状態にしてお休みになって下さい。
免疫強化対策(3)運動とのスマートな付き合い方
中程度の強度の定期的な運動は、感染症と闘う白血球と抗体のレベルを上げることができます。また、循環を良くすること、コルチゾールなどのストレスホルモンを減少させることにより、免疫システムの働きを改善します。
「ソーシャルディスタンス」や「ステイホーム」は、往々にして座りがちな生活につながる可能性が高いことから、免疫活動にさらなる悪影響を与える可能性があります。
ただし、強度の強すぎる運動は健康な人であっても免疫抑制の原因となる恐れがあります。一度の激しい運動よりも、定期的で穏やかな運動を心がけて下さい。
- 自然の中で心を落ち着かせながらのウォーキングが理想的ですが、自宅にいてもストレッチや階段の上り下り、椅子を使ったスクワットやヨガなど、できる運動はたくさんあります。
- 運動に経験や自信がない場合は、自宅環境でもアプリやインターネットを利用して、オンラインのエクササイズ教室やプログラムに参加するのがおすすめです。
免疫強化対策(4)ストレス管理が重症化リスク軽減の「かなめ」に
ある程度のストレスは、正常な身体機能を維持するために必要であり、免疫を高める効果もあります。一方、解決できない慢性ストレスは、低レベルであっても免疫機能を抑制する可能性があります。
なぜなら、こうしたストレスは創傷治癒を大幅に遅延させるだけでなく、自己免疫疾患・喘息・アレルギーなどを引き起こし、悪化させる原因になることが多くの研究で示されているためです。
また、ストレスはがんやHIV、炎症性腸疾患などの免疫の調節不全による疾患の罹患率と死亡率にも関連しています。さらに風邪のようなウイルス感染症の発症や重症化の両方に、慢性的なストレスは関連しています。
ストレスの軽減や管理は、これらの病気の重症度を軽減することが示されています。分子レベルでは、ストレスの解消が免疫調節に有益な好ましい遺伝子発現のパターンをもたらし、NF-kBをダウンレギュレートすることが明らかになっています。
- ヨガ・瞑想・マインドフルネス・太極拳・気功・ゆっくりとした呼吸など、ご自身が実践しやすい方法を試してみて下さい。
- ガーデニングも気分を改善し、ストレスを軽減するだけでなく、精神的あるいは肉体的な幸福感をもたらすことが複数の研究でわかっています。
おわりに
今回ご紹介したライフスタイルの改善は、新型コロナウイルスのパンデミックで経験したような病気の不安から解放してくれるだけでなく、自分自身の居場所を取り戻すためにも効果的な手段です。
免疫システムをサポートするライフスタイルを実践し、感染症の発症リスクや重症化、後遺症のリスクを減らすと同時に、がんや生活習慣病といった慢性疾患の長期的なリスクも軽減していきましょう。
前田 陽子 (マエダ ヨウコ)先生の関連動画
同じタグの記事を読む