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ビタミンC点滴と、ともに歩む【前編】

目次

    近年においては、多くの医療機関が導入しているビタミンC点滴。今回は、ビタミンC点滴が日本で広く知れ渡る前より注目し、実施されてきた健康増進クリニック院長・水上 治医師にお話を伺いました。
    前編では、水上医師の考えるビタミンC点滴の有効性と限界、そして理想的ながん治療についてお伝えします。




    編集部:いつ頃からビタミンC(VC)点滴を導入されているのですか?

    水上:かれこれ40年以上前からクリニックでがん患者さんを中心にVC点滴を行っています。また、自分自身も12年ほど前から行っています。


    編集部:がん治療におけるVC点滴の有効性について、水上先生はどのようにお考えですか?

    水上:VC点滴は抗がん剤のような標準治療と同時に行えます。抗がん剤治療の副作用で苦しんでいる方がVCを併用することで、QOL (生活の質)がほぼ全員良くなります。進行がんであればあるほど、抗がん剤中心の医療となりますが、抗がん剤の多くが細胞障害性なので、副作用が相当強いです。免疫も下がり、嘔吐などの消化器症状や白血球数の低下を引き起こすこともあります。怖い副作用と戦いながら、低いQOLで闘っているわけです。
    ですが、そこにビタミンC点滴を導入することでQOLが改善するので、元気に闘えるようになります。そういった意味で、VC点滴との併用によりベストコンディションでがんと闘えるのは間違いないです。それから白血球数の急激な低下の防止、感染症予防も期待できます。

    患者さんからこんなことを聞いたことがあります。
    「孫と同居しています。ある日、孫がインフルエンザを持ち帰ってきました。ですが、VC点滴を受けている祖父母だけはうつされずに済んだのです。インフルエンザをうつされた他の家族は『これがビタミンC点滴の力か』と話していました。」
    こういった話は他にも多く伺っています。

    ビタミンCと抗がん剤の併用については、症例報告や医学論文も出ており、「ビタミンCは抗がん剤の効果をより強める」ということもわかっています。ビタミンC単独でも、弱いものの抗がん作用があります。そのため、併用することで全体としての抗がん作用の増加、ひいては患者さんの満足度にもつながるのだと思います。

    主治医がCT検査結果を見て、「標準治療だけなら、3ヶ月後のCT検査でこんなに小さくなるのは稀なことです」と驚いたという報告も少なくありません。

    当然ながら、患者さんの病状は1人1人違います。目の前で患者さんを診るまでは、何がその方にとって最善の治療法か判断できません。ですが、長年の経験から抗がん剤単独とビタミンC併用でどのくらい治療効果が期待できるかでは、後者の方がより勝っていると思います。

    また、手術後の再発・転移の防止、すでに転移をしている場合でも新たな転移を抑えることが期待できます。進行がんでも、どのくらいの期間の延命につながるかは人それぞれです。しかし、VC点滴はほぼ100%、生活の質を保ったままの延命が可能だと私は考えています。


    編集部:それでは、VC点滴の限界についてはいかがでしょう。

    水上:やはり、ビタミンC単独の治療では、数cmにもなる固形がんを消すのは難しいです。ですので、先ほどもお話ししたように抗がん剤との併用、放射線治療や外科手術後の仕上げとして主治医と相談しながらVC点滴を継続することをおすすめします。標準治療のサポート役と考えていただくのがよろしいかと思います。

    ビタミンC点滴を行う医師の中には、標準治療を否定する医師もいます。その気持ちもわかります。ですが、私のスタンスは、「標準治療の後にVC点滴を継続すると病状が安定しやすい」ということです。標準治療を行う医師の方々にこのスタンスを理解してもらえれば、VC点滴の有用性をわかっていただけると思います。これはがん治療以外にも言えることですが、白黒だけではなく、時には中間の灰色が存在していいと思います。患者さん一人ひとりの置かれた状況によって、最善の組み合わせを考えることが私たち医師の使命ですから。

    <写真>インタビューを受ける水上医師


    編集部:水上先生からみた「理想的ながん治療」とはどのようなものですか?

    水上:私は標準治療を受けながら苦しんでいる患者さんとお会いする機会が多いですが、やはりQOLの高い状態でがんと闘うのが理想的だと考えます。水上式の文学的表現を用いて、患者さんに次のようなお話をすることがあります。

    「血を吐いてのたうち回って、心臓だけ1週間もしくは1ヵ月間長く動いてくれました。これはあなたが望んでいる結果ですか?」

    抗がん剤治療とは、極端な言い方をすればこういった治療になりがちです。標準治療の考えは、延命日数に重点を置きます。つまり、1日でも長く生きられることが善とされます。
    ですが、それはひとつの考えだと思っています。今まで多くの患者さんとお話をしてきました。すると、ほとんどの患者さんが私と同様に延命日数ではなく、自分らしく過ごせる期間(健康寿命)を大事にしたいとおっしゃいます。

    話を戻しますが、私はこれまで理想的ながん医療を追求してきました。やはり元気に闘うためにビタミンCを上手く導入することがポイントになると思います。

    西洋医学では、勝つか負けるかのみで中間は存在しません。スポーツの試合にしても、基本的には勝敗を決めることが前提になっていますよね。がん治療においては、この「勝敗」だけでなく「共存」状態が存在してもいいと考えます。いわゆるがんを休眠状態のまま維持するということです。そのため、生活の質が高い状態で休眠状態に持っていくことは、新しいタイプのがん治療と呼べると思います。

    もちろん、治せるのならば完全に治したいです。当たり前です。全ての患者さんとご家族、そして医師が思っていることでしょう。ですが、現実としてステージⅣで全身に転移し、完治は困難かもしれない場合、「私にはまだやりたいこと、やらなければいけないことがあります。だからまだ死ぬ訳にはいかない。休眠状態が続いてくれれば、やりたいことだってできる。」とおっしゃる患者さんがほとんどです。

    私は、がんは存在しているけれど落ち着いた状態を目指す医療があってもいいと考えます。標準治療においては「生きるか死ぬか」のみで、この選択肢はありません。

    余談ですが、日本人は、はっきり言うことは避ける傾向にありますよね。一方で、欧米諸国は自分の意見を述べ、討論できるのがエリートとされる社会です。共存し協調性を大事にする日本とはそもそも基盤が違います。

    がん医療でも、西洋思想は「生きるか死ぬか」に焦点を当てます。敵(この場合はがん細胞)を殱滅するか負けるか、ひと言で言うならば、これが西洋医学です。けれど、私は日本人ですので、時には曖昧なものも認めたい。共存も好きなのです。穏やかな毎日を大切にしたいと思っています。
    ですので、海外の文化や哲学を尊重しつつも、そのまま丸ごと日本国内に取り入れる必要はないと考えます。「生きるか死ぬか」の次に第三の選択肢として「共存」を加えてもいいのではないでしょうか。がん細胞をひたすら敵対視するのではなく、「暴れないなら、いてもいいよ。」と協定を結ぶ状況下では、ビタミンCは非常に有効な選択肢となります。

    ステージⅣでがんの塊(かたまり)は存在しても、VC点滴によって共存しながら元気に過ごされている方はたくさんいらっしゃいます。例えば、「このままでは余命半年」と告知されたある肺がん患者さんは、その後数年がんとの共存を続け、天寿をまっとうされました。
    こういった事例は他にもあります。以上の点を踏まえて、私はVC点滴が理想的ながん治療と思っています。



    <後編では、国内におけるがん治療の現状と水上医師が日頃から行っているがん予防をメインにお届けします>

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