「薬は少ないと効かない。かといって、多すぎては危険だから、ちょうど最適な量の薬を用いるべきである」というのは、主流派の医学でも適用されている原則です。しかしながら、主流派医学はこの原則を「栄養」や「サプリメント」には適用していません。そして、「欠乏症を防ぐ程度の、ごく少量で良い」ということになっています。こうした認識が誤りであることは、多くの研究や症例報告が示しています。
- 治療法・栄養
オーソモレキュラー医学入門【第2章】栄養補助食品の利用
「オーソモレキュラー医学」。それは、ビタミン、ミネラルといった栄養素を補充することで、疾病の予防および治療を行う医療です。
エイブラム・ホッファーとアンドリュー・W・ソールが記した『Orthomolecular Medicine For Everyone』は、発売年から今日に至るまで、医師等専門家をはじめとする多くの人々の医学書・指南書として支持されています。そして2019年10月、ついに『Orthomolecular Medicine For Everyone』の日本語版『オーソモレキュラー医学入門』が発売されました。
今回、『オーソモレキュラー医学入門』を翻訳された中村 篤史先生(ナカムラクリニック)が、全18章400ページにわたる本編から、改めて各章毎のポイントをまとめて下さいました。
・すでに『Orthomolecular Medicine For Everyone』『オーソモレキュラー医学入門』を読破された方
・興味はあるものの、まだ読めていない方
・「そもそも、オーソモレキュラー医学とは?」という方
全ての方に読んでいただきたい情報を連載でお送りします。是非、お見逃しなくご覧ください。
主流派医学の盲点
アメリカにおいては脚気やペラグラの予防のために精白小麦にビタミンが加えられているように、少量の栄養素の必要性については、医師も反論していません。しかし、主流派医学は、人間には“個体差”があり、栄養素の必要量にも違いがあるという肝心な点を見落としています。重度の栄養不良の人々には、食事の改善に加え、不足した栄養素のサプリメントの摂取が必要となります。重度の栄養欠乏の場合、食事のみで必要量の栄養素を摂ることは難しいためです。
また、アメリカでは25歳以上の成人の実に80%が体重過多もしくは肥満と言われています。彼らの食生活の特徴として、⑴タンパク質と糖質の摂取量が多いこと (2)果物と野菜の摂取量が少ないこと が挙げられます。仮に栄養士の指示通りに食事をしても、十分量のビタミンを摂取できていないケースも決して珍しくありません。例えば、経口避妊薬を飲んでいる人であれば、血中のビタミンB群(特にB6)、葉酸、ビタミンCが通常時よりも低くなっているので、特にビタミン摂取を心がけておく必要があります。
推奨摂取量は欠乏予防量
そもそも、政府の推奨するビタミン摂取量は非常に低く設定されています。この値は、あくまで“欠乏症に陥らない程度の最小限の基準”でしかありません。一つ、例を挙げましょう。ビタミンEの食事摂取基準(DRI)は15 IUですが、心血管系その他の疾患の予防には、少なくとも100 IUのビタミンEが必要だということが広く認められています。しかし、実際にこれだけの量のビタミンEを摂取することは、どんなに完璧な食事計画を立てたとしても不可能です。ほとんどの人は、30 IUを摂ることさえできません。
不足を補うサプリメントの重要性
ビタミンEのサプリメントを摂っている人では、心血管系疾患の発症率が40%少なく、適量のビタミンC(1日500 mg)を摂っているだけでも心疾患による死亡率が42%低下し、全般的死亡率が35%低下したというデータがあります。人口の三分の二が十分な果物や野菜を食べていない現状では、栄養の不足を補う唯一の方法はサプリメントです。
曖昧な「ビタミン」の定義
ビタミンは、定義としては「体内で生合成できないが必要量はごく微量で、その微量で全身の生化学反応を触媒する働きをする物質」となります。しかし、いくつかのビタミンはこの定義を満たしていません。例えば、ビタミンCやナイアシンは脳の神経伝達物質受容体に直接的な影響を与えます。また、ビタミンCは大量に(時にはグラム単位で)必要になります。
こうした点を踏まえると、「必要量はごく微量の、触媒作用のある物質」という定義から外れています。また、ナイアシンは体内で生合成できます。60㎎のトリプトファンから1㎎のナイアシンが作られます。さらに、ビタミンD3は紫外線の影響を受けて皮膚で合成されるため、「ビタミンというよりは、むしろホルモンだ」という指摘もあります。もっとも、これらの物質は非常に長い期間にわたって「ビタミン」と考えられていたため、分類を再編成するようなことはないでしょう。
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