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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

医療の改善策: 栄養素を用いた治療の併用

目次

執筆: Michael PasswaterRichard Cheng, MD, PhD
OMNS2023428日)

はじめに

最近のギャラップ調査(米国の調査会社ギャラップによる世論調査)によると、米国では成人の大半が保健医療の質を好ましくないと感じています[1]。米国での保健医療出費は1人あたり年間12,914 ドルで世界一多く、2 番目のドイツ(1人あたり7,383 ドル)との差は5,000ドル以上、富裕国での平均支出と比べても2倍以上の額です。

米国では年間4兆3,000億ドルが医療(その大半は「緩和ケア」)に使われているのです。この金額に、医療用の建物や設備、医学研究の費用は含まれていません[2,3]。米国は小売処方薬に使う一人あたりの出費額も世界トップで、年間総額は3,780億ドルにも及びます[4]

これほどの出費にもかかわらず、2022年のコモンウェルス・ファンド(米国の財団)のレポートによると、富裕国の中で米国は、乳児死亡率、出産関連の妊産婦死亡率、薬物の過剰摂取による死亡、肥満率、ならびに複数の慢性疾患を持つ患者率が最も高く、平均寿命は最も低いということです[5]。米国では、国民をはじめ多くの医療提供者が、もっと良い方法で健康を求められないか模索しています。

その答えとして、適切な栄養素を併用すれば保健医療の質を高められる可能性があります。必須栄養素のサプリメントは有効であり広く使用されていますが、保健医療支出に占める割合はごくわずかです。調査によると、米国人の7786%29,000種類を超える市販の栄養補助食品を1つ以上摂っています。

よく購入される栄養補助食品は、ビタミンD、マグネシウム、オメガ3、コエンザイムQ10、マルチビタミンのサプリメントが上位を占めます。ビタミンCのサプリメントは米国人の約3分の1が摂っています。年齢、財力、学歴が高い人ほど栄養補助食品を摂る傾向にあります。米国では栄養補助食品に年間300億ドル支出されていますが、それでも「保健医療」全体に対する年間支出の1%未満(0.7%)で、小売処方薬に対する年間支出の10%未満(7.9%)です[6]。米国の家庭医209,000人のうち、統合医療に関連のある継続教育に投資したことがある人は約40,000人でした[7]

オーソモレキュラー医学の実践例

以下に紹介する世界中からの各事例では、いくつかの疾患について他の治療法を垣間見ることができます。ここに挙げた内容はすべてを網羅したものではなく、各疾患の完全な解決策が見つかったことを暗示するものでもありません。体の自然な防御作用や代謝をサポートする栄養療法が安全かつ安価な方法で効果をもたらす可能性について考察する刺激となり励みとなることを願います。協力すれば、互いに治療法を見つけることができるでしょう。

ある母親とその幼い息子が、カザフスタン国アスタナでの旅行中、上気道感染症を患い、病院へ治療に行きました。検査でCovid-19は陰性でした。母親は、ビタミンC点滴と、ビタミンD産生を促す紫外線(UVB)療法を受け、また、ビタミンC剤、ビタミンD剤、充血除去薬(鼻詰まり用の点鼻薬)が母子ともに処方されました。[個人的伝達情報]

糖尿病患者である60歳の男性は、重度のCovid-19ならびに急速な疾患悪化が見られ、ビタミンC、ビタミンD3、グルタチオンの高用量投与を含む抗酸化物質療法を受けた結果、すぐに回復しました。http://orthomolecular.org/resources/omns/v18n03.shtml

中国の高齢女性がICUに入院し急性肝不全と診断され、その時点で命が危ないという知らせを米国人の娘は受けましたが、高用量でのビタミンC点滴とリポソーム型ビタミンC投与を行った結果、数日で回復しました。[Practice(実践活動), RZ Cheng]

中国が突然ロックダウン政策を緩和した2022年12月、5歳の男児が高熱(39.5˚C = 103˚F)を出し、Covid-19と診断されましたが、病床不足で入院できませんでした。ビタミンCを含む高用量での抗酸化物質療法を受けた結果、翌朝には回復しました。[Practice, RZ Cheng]

転移性の前立腺ガンがあった86 歳の男性が、ケトン食療法ならびに高用量ビタミンC点滴を含む栄養補給療法を続けたところ、6年間長生きしました。最終的に亡くなった時、ガンの兆候はありませんでした。[Practice, RZ Cheng]

胸部にリンパ腫があった若年ノルウェー人男性は、きびしいケトン食療法ならびに高用量ビタミンC投与を含む栄養補給療法を採用した結果、リンパ腫が消失したことがわかりました。 http://www.drwlc.com/blog/2022/11/01/2351

症候性のアテローム性動脈硬化性冠動脈狭窄症がCTA(CT血管造影法)で確認された62歳の男性は、低炭水化物食療法ならびに高用量ビタミンC投与を含む栄養療法を実践し、20カ月後には狭窄が完全に解消していました。[Practice, RZ Cheng]

ある63歳の男性は、頸動脈狭窄症、橋本病(自己抗体値の上昇を伴う甲状腺炎)を患い、胆嚢炎の悪化も超音波検査で認められ、その他にも複数の健康問題を抱えていましたが、低炭水化物/ケトン食療法、デトックス療法、そして高用量ビタミンC投与などの栄養療法を含めた統合プロトコルを受け入れ、8カ月後には頸動脈狭窄の消失がCTで確認されました。甲状腺の自己抗体値も正常化し、胆嚢の炎症悪化もなくなりました。[Practice, RZ Cheng]

橋本病、乾癬[8]、白斑、湿疹、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症性腸疾患など、自己免疫疾患を持つ患者の多くに疾患の改善や好転が見られています。http://www.drwlc.com/blog/2022/05/20/reversing-hashimotos-thyroiditis-with-orthomolecular-medicine

ベイラー医科大学からは、命に関わるほどの血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を患った44 歳の女性の症例報告がありました。彼女のADAMTS-13機能は正常値の10%より低く、ADAMTS-13インヒビター(ADAMTS-13の活性を阻害する自己抗体)を保有していて標準治療では効果がなく、12日間の集中治療後、昏睡状態が続きました。入院から13日目に、グルタチオンの前駆体であるN-アセチルシステイン(NAC)を150 mg/kgの用量で点滴投与した結果、その18 時間後には完全に意識を取り戻し、反応するようになりました。継続的な標準治療と平行してNAC点滴が10日間続けられ、入院から31日目に彼女は良好な状態で退院することができました。28日目の測定でADAMTS-13値は正常値の65%まで改善しており、退院の7日後(治療の38日目)の測定では血小板数とヘモグロビン値が正常に戻っていました[9]

リベリアでエボラ出血熱が流行していた2014年、ELWAホスピタルのDr. Jerry Brownとそのチーム「エボラファイターズ」はTime誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。Dr. Brownは医師としてその地域に一番最後まで残り、隔離、水分補給、マルチビタミン剤やセレンのサプリメントの投与を中心とした方法で、チーム員の健康を保ちながら、できるかぎり多くの人の治療に当たりました。最近の彼は、リベリアにある第14軍病院の医長として、同地域でのCovid-19発生を受けマルチビタミン剤とセレンのサプリメントの有用性を再び強調しています[10]

Dr. Marikは、敗血症に対するHAT(ヒドロコルチゾン、アスコルビン酸、チアミン)治療プロトコル、および急性COVID-19に対するMATH+(メチルプレドニゾロン、アスコルビン酸、チアミン、ヘパリン)治療プロトコルの創始者であり、彼が行った「重篤COVID-19患者の勇敢な治療、ならびに自身の有効な治療プロトコルを世界中の医師と共有するための慈善的努力」に対し、2022年にバージニア州下院から全会一致による表彰を受けています。保健医療に対する彼のビジョンがDr. Mercolaとのインタビュー(下記リンク)で語られています[11] 
https://covid19criticalcare.com/a-new-vision-for-health-care https://www.bitchute.com/video/Ygqz05H6otqj

結論

上記の各症例では、高用量での栄養素の投与を用い、重篤疾患の治療や好転に成功しています。こうした療法が命を救う理由は、重篤疾患によって体内の必須栄養素(ビタミンやミネラルなど)が消耗されているからです。

必須栄養素が枯渇すると、それに依存している体の各器官が機能できなくなるため、機能不全や死に至ることも多いのです。しかし、十分な量のビタミンとミネラルを与えれば、体は驚異的な回復力を発揮します。軽症で命にかかわらない場合でも、ビタミンとミネラルを最低推奨量(最小1日必要量など)より多く摂れば、最適な健康状態の維持に役立ちます。

適切な用量と投与期間を個別に考慮した栄養素の投与を、医療専門家が行う「標準治療」に含めることにより、米国の保健医療を大いに改善できる可能性があります。

「真理は偉大であり、それ自体に任せればすべてのものに勝るだろう。真理は誤りに対する、正しく申し分のない敵であり、その自然な武器である自由な議論が奪われた人間の介入によらないかぎり、誤りと対立しても何も恐れることはない。誤りに対する自由な反論が認められていれば、誤りは危険でなくなる」 - トーマス・ジェファーソン

誤った情報に対抗する手段は、教育および言論の自由であり、抑圧ではありません。

医学の進展を含む真の学びと進歩は、常に広い視野を持つこと、エビデンスを追うこと、そして成果を共有することにかかっています。体にとって自然な最適量の物質を体に提供して疾患の予防と治療を実践するのがオーソモレキュラー医学であり、これが世界中で健康と治癒をもたらす堅実な基盤となることに変わりはありません[12]

<参考文献>

 

  1. McPhillips D (2023) New poll shows jump in adults who rate the quality of US health care as 'poor'. (米国の保険医療の質を「悪い」と評価している成人の急増を示す新しい世論調査) CNN https://www.cnn.com/2023/01/19/health/us-health-care-poll-gallup/index.html

  2. Centers for Medicare and Medicaid, National Health Expenditure data fact sheet. (メディケア、メディケイド、国民医療支出の各センターによるデータファクトシート) (2021) https://www.cms.gov/research-statistics-data-and-systems/statistics-trends-and-reports/nationalhealthexpenddata/nhe-fact-sheet
  1. McGouth M, Telesford I, Rakshit S, et al. (2023) "How does health spending in the U.S. compare to other countries? " (「米国の保健支出を他の国と比べると?」) Health System Tracker. Peterson Center on Healthcare and KFF. https://www.healthsystemtracker.org/chart-collection/health-spending-u-s-compare-countries
  1. Prescription drug expenditure in the United States from 1960 to 2021. (米国における1960~2021年の処方薬支出) Statista, accessed 4/10/2023. https://www.statista.com/statistics/184914/prescription-drug-expenditures-in-the-us-since-1960
  1. S. Health Care from a Global Perspective, 2022: Accelerating Spending, Worsening Outcomes. (世界的視点から見た米国の保険医療 2022 : 出費は加速し転機は悪化) https://www.commonwealthfund.org/publications/issue-briefs/2023/jan/us-health-care-global-perspective-2022

  2. (2023) 25 Fascinating Supplements Industry Statistics (2023) Data + Trends. (25の魅力的なサプリメント業界統計(2023) データと傾向) Zippia.com. https://www.zippia.com/advice/supplements-industry-statistics

  3. Ventola CL (2010) Current Issues Regarding Complementary and Alternative Medicine (CAM) in the United States Part 1: The Widespread Use of CAM and the Need for Better-Informed Health Care Professionals to Provide Patient Counseling. (米国での補完代替医療(CAM)に関する現在の問題 パート1: CAMの普及、ならびに患者のカウンセリングを行う見識の広い医療専門家の必要性) P T. 35:461-468. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20844696

  4. McCullough PJ, McCullough WP, Lehrer D, et al. (2021) Oral and Topical Vitamin D, Sunshine, and UVB Phototherapy Safely Control Psoriasis in Patients with Normal Pretreatment Serum 25-Hydroxyvitamin D Concentrations: A Literature Review and Discussion of Health Implications. (治療前の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が正常値であった乾癬患者にビタミンDの経口投与ならびに日光とUVBの局所照射を行うことで乾癬を安全に抑制: 健康への影響に関する文献レビューと考察)Nutrients 13:1511. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33947070

  5. Tokpah WN (2020) Liberia: COVID-19 Cases Decline, Dr. Jerry Brown Discloses As Insurance Company of Africa Donates Supplement to Battle the Virus. (リベリア: COVID-19ウイルスと闘うためのサプリメントをアフリカの保険会社が寄贈したことによるCOVID-19患者の減少を Jerry Brownが公表) Front Page Africa. https://frontpageafricaonline.com/news/liberia-covid-19-cases-decline-dr-jerry-brown-discloses-as-insurance-company-of-africa-donates-supplement-to-battle-the-virus

  6. Li GW, Rombally S, Kamboj J, et al. (2014) Treatment of refractory thrombotic thrombocytopenic purpura with N-acetylcysteine: a case report.(難治性の血栓性血小板減少性紫斑病に対するN-アセチルシステインを用いた治療: 症例報告) Transfusion 54:1221-1224. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24117464

  7. Front Line COVID-19 Critical Care Alliance (FLCCC) https://covid19criticalcare.com/experts/paul-e-marik

  8. Orthomolecular.org Therapeutic Nutrition Based Upon Biochemical Individuality. (生化学的な個別性に基づく栄養療法) Accessed 4/10/2023. http://orthomolecular.org/library/definition/index.shtml