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若い頃に曝露した農薬がアルツハイマー病の原因に?

この記事の執筆者

SPIC Clinic

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会代表理事。スピッククリニック名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育セン ... [続きを見る]

目次

    高齢者におけるアルツハイマー病の発症機序はまだまだわかっておらず、「環境」「ライフスタイル」「遺伝的要素」など多くの因子が考えられています。米国ロバートウッドジョンソン医科大学環境職業医学科のリチャードソン博士のグループは土壌・重金属・水質汚染などの環境因子と、アルツハイマー病の発症に関連する研究を続けてきました。

    2014年、リチャードソン博士は過去に盛んに使用され、現在では使用が禁じられている有機塩素系農薬がアルツハイマー病の発症に関わっていることを明らかにし、この内容を米国医師会雑誌に発表しました。この有機塩素系農薬は農業用害虫駆除を目的に、1960年をピークに日本でも広く使用されていました。そのため、今日における日本国内の高齢者のアルツハイマー病に何らかの影響を与えている可能性があります。

    アルツハイマー病と有機塩素系農薬の関連性

    <画像1>ジェイスン・リチャードソン博士
    (掲載元:https://newsatjama.jama.com/2014/01/27/author-insights-ddt-byproduct-is-associated-with-increased-alzheimer-risk/)

    2014年、米国ロバートウッドジョンソン医科大学環境職業医学科のリチャードソン博士は過去に盛んに使用され、現在では使用が禁じられている有機塩素系農薬がアルツハイマー病の発症に関わっていることを明らかにし、この内容を米国医師会雑誌に発表しました。

    2002年〜2008年にテキサス大学サウスウエスタンメディカルセンターのアルツハイマー病研究センターで診断された(1)アルツハイマー病患者86名と(2)健常対照群79名を対象にした研究が行われました。リチャードソン博士は、当時に採血し現在まで冷凍保存されていた患者血清について、安定型有機塩素系農薬DDTの代謝産物であるDDEを測定しました。

    その結果は驚くべきものでした。なんと、(1)アルツハイマー病患者群は(2)健常者の3.8倍も血清DDEが高かったのです(p<0.001)。血清DDEが最も高い群のアルツハイマー病発症リスクは、健常者と比べると4.2倍も高くなりました。また、アルツハイマー病発症と関連する対立遺伝子のApoE4遺伝子型発現が低く、アルツハイマー病リスクの亢進も明らかになりました。さらに、リチャードソン博士は、脳腫瘍培養細胞に有機塩素系農薬DDTやDDEを添加することで、アルツハイマー病の脳組織に沈着するアミロイド前駆タンパク質が増加することを発見しました。すなわち、DDTやDDEはアルツハイマー病の発症病理に直接関連しているのです。

    リチャードソン博士の論文が発表された半年後、韓国の国立慶北大学校医科大学が米国と共同研究を行いました。彼らは、1999年から2002年に60~85歳の計644名の患者を調査しました。調査方法は、当時の保存血液で有機塩素系農薬を測定するというものです。そして、DDEが高値になる場合、痴呆症状が出現する確率が2~3倍高くなると、国際環境医学誌(Environment International)誌に発表しました。その翌年、同じく慶北大学校研究グループは高血圧が痴呆症のリスクを1.7倍高めるが、有機塩素系農薬のDDTやDDEはさらにそのリスクを2.5~3.5倍も高めると『PLos ONE』誌に発表しています。

    有機塩素系農薬のDDTは農業用害虫駆除を目的に、1960年をピークに日本でも広く使用されてきました。しかし、DDTに代表される有機塩素系農薬は化学的に非常に安定しており、農作物への残留や環境汚染が問題視されました。特に食物連鎖により魚類、鳥類さらには人体への汚染が指摘されています。そういうことから、先進国では1960年代後半から有機塩素系農薬の使用を規制、日本でも1975年より輸入・製造・販売が制限されるようになりました。

    前述の研究から考察すると、現在(2019年)より45年以前に有機塩素系農薬に曝露した可能性のある日本人にアルツハイマー病のリスクが高いことになります。すでに忘れ去られたこの農薬が、現在の高齢者のアルツハイマー病の発症に関わっている可能性があるのです。

    オーソモレキュラー医学の立場から

    オーソモレキュラー医学では、必要な栄養素を必要なだけ体に取り入れるだけでなく、有害なものを体内に入れず、有害なものを体外に排出することを目的としています。有機塩素系農薬は体に蓄積しやすいだけでなく、分解されずに土壌に長い間残留します。日本の多くの農地にも相当量の農薬が残留している可能性があり、また海外の一部の国では未だにこの農薬を使用しています。

    現在使用されていて“安全”とされる農薬も遺伝子発現に影響する可能性などを考えると、次世代への安全性について、「100%問題ない」とは言い切れないのではないでしょうか。そうなると、農薬の汚染と残留農薬の蓄積がないオーガニック農産物が安全性という意味で理想的であると言えます。さらに、海外の穀物を食餌として使用する食肉類についても考えていかなければなりません。

    日本オーソモレキュラー医学会は、農薬で100%安全なものはないと考えています。国の施策として、オーガニック農産物の保護と普及が未来の国民の健康を守ることを考えれば、まさに待ったなしの状況です。学会として、安全性の高いオーガニック農産物・畜産物の普及を推奨します。





    <参考文献>