ログイン 会員登録
おすすめ!

感染対策・免疫強化【各論編】

ー免疫A to Z

前回記事『感染対策・免疫強化 総論編』では、免疫に対する考え方や「免疫を上げる」ことの意味についてお話ししました。今回は、各論編として「免疫A to Z(感染対策のA to Z)」と題し、私が常々SNSやセミナーで発信している、免疫を上げる具体的方法論をお伝えします。

「免疫A to Z」では免疫を上げる方法をA〜Zまでに分類し示しています。しかしながら紙面の都合上、その全てをお伝えすることは難しいため、ここではA to ZのうちA、B、Cの一部分をご紹介したいと思います。

「免疫A to Z

すでに多くの先生がCOVID-19に対する栄養素の重要性や摂取量について書かれていますが、ここで私の解釈も含めて簡単にまとめると、各栄養素をサプリメントとして摂取する場合は以下の容量が推奨されます。

  1. ビタミンCを1日3g(1g✕3回)
  2. ビタミンD3を1日2,000~5,000 I.U.(初期には10,000IU):25OHVD(25-ヒドロキシビタミンD)血中濃度で30ng/mLを下回らないように、40~60ng/mL(医師の管理下では〜80ng/mL程度まで)を維持する。
  3. 亜鉛を1日20〜30mg
  4. マグネシウムを1日400~500mg(数回に分割して摂取)
  5. セレンを1日100〜200μg

上記栄養素の摂取によって、新型コロナウイルス感染のみならず複数の感染症に対しても、ある程度の対応が可能と考えられます。とはいえ、各個人の身体状態に合わせて調整することが大切です。

さて、これらを踏まえた上で「免疫A to Z」各論の一部をご紹介していきます。

(A)-1:ビタミンA

感染に対する第一のバリアとして粘膜があり、ビタミンAはこの粘膜免疫における主役を演じています。というのも、ビタミンAには粘膜細胞を正常に成長させる役割があるためです。

粘膜は目や鼻、呼吸器、口から腸、生殖器に至るまで、生物における一つの大きな臓器を形成しています。言い換えると、ビタミンAはその広い範囲をカバーしなければならないわけです。この点からもビタミンAを摂取する必要性はお分かりいただけると思います。

また、ビタミンAはBリンパ球を刺激し、粘膜や血中でウイルスや病原体を排除するために重要なIgA抗体やIgG抗体などの産生を促します。加えてNK細胞、マクロファージ、Tリンパ球の機能にも大きな影響を及ぼしますので、しっかり摂取することにより感染対策・がん対策にも有益です。

ビタミンAが豊富に含まれるのはレバーやうなぎ、肝油などです。プロビタミンAと呼ばれるβカロテンを野菜などから摂取する方法もあります。

さらに強化したい場合は、サプリメントで補うのも選択肢の一つです。その場合は、天然型サプリメントのビタミンA(レチノール型)を摂るようにしてください。目的や状況によりますが、過剰症に注意しながら1日5000〜30000IU程度を食後に摂取することをおすすめします。サプリメント補給時は、栄養療法に詳しい医師と相談して摂取されるのが良いかと思います。

天然型以外にも活性型ビタミンA(レチノイン酸)がありますが、こちらは薬剤であるため、大量に摂取すると催奇形性※1などの副作用が懸念されます。

また、ビタミンAは単独のみの摂取では効果が不十分です。ビタミンAと同時にビタミンD、亜鉛、タンパク質などがしっかりと体内に存在する必要があります。


※1:妊娠中の女性において、薬物を使用したことにより胎児の奇形が生じる危険性があること。

(A)-2IgA抗体

前項でも書きましたが、IgA抗体は粘膜を中心として免疫を担う重要な物質です。粘膜からウイルスや細菌などの異物が侵入するのを防いだり、病原菌から出た毒素を中和したり、必要な菌を定着させるといった重要な役割を担っています。

血液中やその他の組織にもIgA抗体は存在しますが、粘膜免疫を担当するのは特別に分泌型IgA抗体(sIgA)と呼ばれます。

分泌型IgA抗体は、一般的には獲得免疫に分類されます。病原性細菌やウイルスが粘膜に付着すると、他の免疫細胞からの刺激によりBリンパ球が活性化し、抗体産生細胞(形質細胞)に転換して分泌型IgA抗体を産生します。

産生された分泌型IgA抗体はウイルスや細菌、その他の異物にくっつき、これらを排泄するように働きます。そして次回以降、同じ病原体(抗原)が粘膜にやってきた際、反応して分泌型IgA抗体の産生を増やし、排泄していきます。

しかし、上記のメカニズムに従うと、ウイルスなどが入ってきてから分泌型IgA抗体が反応できるまでにタイムラグが生じます。そしてここが分泌型IgA抗体のすごいところなのですが、非特異的に(一つの特定の抗原に対してだけではなく)多種類の病原体(抗原)に反応できる「poly-reactive IgA(多反応性IgA)」というものを常に分泌し、いつでも異物に対応できるようになっています。ですから、初めて経験するウイルスや異物にも対応できるのです。

この抗体産生B細胞は、粘膜に存在するある種の常在菌との共同作業で、分泌型IgA抗体の産生量を増やすことも知られてきています。そのため食物繊維などをしっかりと摂取し、良い腸内細菌を育てることが重要です。抗生剤やストレス、あるいは悪い食事などで腸内細菌を減らさないように心がけることも大切です。

なお、IgAを減らしてしまう要因としては以下が挙げられます。

  • ストレス
  • 過度な運動
  • ネガティブな感情
  • ビタミンA不足 など

逆によく噛んで食べることが唾液中のIgAを増やすことがわかっており、ビタミンAの摂取、アミノ酸であるL-グルタミンの摂取がIgA抗体の産生を促進します。

(B)Bath(入浴)

日本のお風呂文化が、実は日本人の免疫に大きく貢献しています。その理由は、まず第一に浴槽に浸かることで体温を上昇させるからです。

細菌などの病原体に感染した時、白血球の一つである好中球がその病原体を取り込み(貪食)、活性酸素を作って病原体を殺します。その際、体温が37℃になると、水素イオンを放出することで過酸化水素などの活性酸素の産生を維持し、免疫力・殺菌力を維持できることが研究により解明されています。

つまり、体温上昇で免疫力(少なくとも好中球機能)が上がるのです。そして別の免疫細胞であるマクロファージも、過酸化水素などの活性酸素の存在下で温度センサーが働くようになり、体温が37℃〜38.5℃になるにつれて温度依存性にマクロファージが活性化し、ウイルスなどの異物を食べる(貪食)能力が上がることも確認されています。

このように体温を上げることで、もしくは感染時に発熱することで、白血球による免疫が高まることがわかってきています。また、別の研究では、温泉に入浴中は唾液の分泌量や粘膜免疫に重要な分泌型IgA抗体(IgAの項参照)の分泌速度が上昇することが報告されています。

これは蒸気による物理的刺激や温浴による心理的効果、副交感神経刺激作用によりリンパ球活性が上昇するためと推定されます。

その他のメカニズムでも、入浴による免疫力増強作用が期待されていますが、最近では浴槽に入らずシャワーだけで済ませる人が増えています。できるだけ浴槽に浸かって、熱すぎない温度でゆっくりと温まりましょう。特に重炭酸温浴はおすすめです。

ドイツにおいては、自然炭酸泉温浴として医療応用されるなど健康効果が確認されていますが、同様に重炭酸温浴を行うことで、重炭酸イオン(HCO3)により血管内で一酸化窒素(NO)が産生されます。その結果として体温上昇、血流改善、睡眠改善などが確認されています。私自身も重炭酸温浴を数年来続けており、患者さんにもおすすめしています。

また、入浴によって一度体を芯から温めた後、2時間ほどで深部体温が下がります。そのタイミングでメラトニンが出やすくなり、睡眠に入りやすくなります。メラトニンには抗ウイルス作用、免疫強化作用、ミトコンドリア保護作用などがあります。

お風呂文化のメリットは、これだけではありません。家族風呂や銭湯・温泉など、みんなでお風呂に入る習慣は腸内細菌を共有することを意味します。これが外国人にはない、日本人独自の豊かな腸内細菌叢を形成する要因となっています。

腸内細菌は様々な種類いた方が良いのです(多様性)。できれば子どもの頃に、家族や地域の人々と一緒にお風呂に入り、多くの菌を体内に入れるのが理想的です。ただ、こうした伝統が昨今失われつつあるのも事実です。

(C)CBD(カンナビジオール)

CBD(カンナビジオール)というのは大麻草から抽出される天然成分、カンナビノイドの一種です。大麻と聞くと「えっ!?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、CBDはTHC(テトラヒドロカンナビノール)という、いわゆるマリファナに含まれる違法成分ではないので、問題ありません。れっきとした健康食品もしくは医療目的で使われる薬用成分(医療大麻)です。

大麻は日本の歴史の最初期、1万年以上前の縄文時代ではすでに食料や繊維として栽培・使用されていました。また、カンナビノイドという薬用成分は、インドのアーユルヴェーダや中国の漢方薬として数千年前から使用されています。

カンナビノイドは不安を鎮め、緊張を和らげ、免疫力の強化にも役立ちます。一部を除き、人のほぼ全ての細胞にカンナビノイドの受容体がありますが、特に中枢神経系と免疫細胞に多いことが明らかになっています。

カンナビノイドの中でもカンナビジオール=CBDは、国連やWHOによって医療価値があると認められた有効成分であり、危険性が少ないこともわかっております。

免疫細胞を活性化し、ウイルスの増殖抑制への効果が期待される成分ですが、CBDやカンナビノイドの作用はそれだけに留まりません。人全体・生命体全体のホメオスタシス(恒常性)の維持に中心的役割を果たしている重要成分なのです。

実は、人間の体内ではCBDと同類の成分が生成されていて、これはエンドカンナビノイド(内因性マリファナ)と呼ばれています。マラソン選手がランナーズハイという状態になるそうですが、その際に分泌されているのがエンドカンナビノイド(内因性マリファナ)と呼ばれる、人が元々持っているCBDと同類の物質なのです。

これらの物質は、生体防御とホメオスタシスの維持に重要な役割を果たしています。

しかし、現代のストレス社会および汚染された環境に生きる人間は、自ら産生できるはずの内因性カンナビノイドが消耗・減少しているため、無自覚のまま「カンナビノイド欠乏症」に陥っている可能性があります。

カンナビノイド欠乏症によってホメオスタシスが崩れ、その結果、免疫が低下している可能性もあります。そこへ外的にCBDを補い、内因性カンナビノイドシステムを活性化させることが、ホメオスタシスや免疫向上の一助となります。

コロナ禍において、新型コロナウイルスに対するCBDの有効性を指摘している研究もあります。カンナビノイドの受容体は免疫細胞に多く、またCBDがウイルスの増殖を抑制するメカニズムを有しているので、有効性は期待できると思います。

ヒトでの臨床研究でも、前もってCBDや大麻などのカンナビノイドを摂取していた人は、感染率が低下したり重症化が抑制できたことが調査で示されました。

とはいえ研究のエビデンスレベルとしてはまだ不十分な面もあるため、さらにエビデンスレベルの高い臨床研究が行われることを期待しています。

CBD活用法と使用時の注意点

CBDの可能性についてお伝えしてきましたが、現時点ではCBDを健康食品として予防的に使用するか、感染症状が出た場合には軽症例への使用に留めるのが良いと個人的には考えています。

ここでは詳細は割愛しますが、コロナ感染ですでに重症に陥ってサイトカインストームを起こしている場合、あるいはその一歩手前の病態である場合、CBDの使用は逆効果になる可能性があるからです。

また、CBDの適切な使用量は個人差がかなり大きくなります。使用目的にもよりますが、成人でCBDの1日量として10〜200mgを分割して使用します。CBDオイルの場合は舌下に滴下し、1〜2分保持したまま粘膜から吸収させたのち飲み込みます。がんや特別な疾患の場合には、医師の指示でさらに多くの量を使用することもあります。

先ほども書いたように、現代人は「カンナビノイド欠乏症」である人が多いと思われます。ですから、摂取後に何らかの体感が得られなかったとしても根気よく続けてみて下さい。継続することで内因性カンナビノイドが満たされ、ホメオスタシス・免疫が整っていきます。

副作用を感じることは少ないですが、眠気やフラつき、薬剤との相互作用にはご注意下さい。特にご高齢の方は注意が必要です。最近はオイル以外にも様々なタイプのCBD製品が作られ、使用用途も広がってきています。何らかの疾患の治療に使用される場合は、CBDを扱う専門医に相談されることをおすすめいたします。

CBDとの出会いと夢の実現

ちなみに私は、このCBDを自費診療の医療として2014年から使用しています。2014年、医療大麻の解禁が直前だったオーストラリアまで赴き、医療大麻の視察・勉強に行って以来、患者さんにも自分にも使い続けております。

おそらく、戦後日本で初めて医療大麻を臨床応用した最古参に入るのだと思います。ただ、当時は「医療大麻」や「CBD」などという言葉は公言できない、もしくは全員が全く知らないという状況で、肩身の狭い思いをしておりました。

しかし、日本を医療大麻・CBDが使用できる国にしたいという私の夢が叶い、近年このように公の場で医療大麻やCBDの可能性について論じることができるようになったことは嬉しい限りです。

同じタグの記事を読む