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新型コロナとアーユルヴェーダ〜Timeless Science of Life〜【前編】

アーユルヴェーダは、5,000年以上の歴史を持つインド発祥の伝承医学です。

チャラカサンヒタ、スシュルタ、アシュタンガフリダヤなどのアーユルヴェーダ古典医学書には伝染病やパンデミックの貴重な経験、治療法、予防法、食事療法や過ごし方が記録され、それを「ジャナパドワムサ」と呼んでいます。

「ジャナパドワムサ」とはコミュニティや集落の破壊・消滅を意味し、それを機に伝染性の高い病気が発生し、太古の昔から人類を荒廃させてきました。特にチャラカやスシュルタのような古代著名なアーユルヴェーダ医は「ジャナパドワムサ」について明確に説明しています。

<目次>

1.はじめに
2.アーユルヴェーダによるパンデミックの原因
3.新型コロナに対するアーユルヴェーダ的視点
4.アーユルヴェーダハーブの役割とエビデンス
5.家庭でカダ煎じ薬を作る方法
6.サマリー

前編となる今回は上記目次13まで、アーユルヴェーダ的観点からみたCOVID-19パンデミックについてお話しします。

はじめに

WHO(世界保健機関)によって世界的なパンデミックに指定されてからおよそ3年が経ちます。その間ウイルスは変異を繰り返し、弱毒化が報告されています。

しかし、現在もその原因物質、病因のメカニズム、解決策を追求することを余儀なくされています。新薬やワクチンが多く開発される中、アーユルヴェーダガイドラインも現存する伝統医療の1つとして重要な役割を果たしています。

アーユルヴェーダ(1)は、5,000年以上の歴史を持つインド発祥の伝承医学です。

アーユルヴェーダにおける主な2つの目的は、「swasthasya swastya rakshanam(健康な人の健康を維持すること)」と「aaturasya vikar prashamanam(病気の人を治療し、健康を維持できるようにすること)」です。

『チャラカサンヒタ』『スシュルタサンヒタ』『アシュタンガフリダヤ』などのアーユルヴェーダ古典医学書には、伝染病やパンデミックの貴重な経験・治療法・予防法・食事療法や過ごし方などが記録されており、それを「ジャナパドワムサ」と呼んでいます。

「ジャナパドワムサ」とはコミュニティや集落の破壊・消滅を意味し、それを機に伝染性の高い病気が発生し、太古の昔から人類を荒廃させてきました。特にチャラカやスシュルタのような古代著名なアーユルヴェーダ医は、この「ジャナパドワムサ」について明確に説明しています。


(1)アーユルヴェーダ:インド発祥の伝承医学です。5,000 年以上の歴史を持つこの由緒ある癒しの伝統は、体の生来の知性と修復メカニズムを目覚めさせます。実用的なレベルでは、毎日の簡単な儀式、個別の食事計画、強力なハーブを通じてバランスを見つけるのに役立ちます。

アーユルヴェーダによるパンデミックの概念

『チャラカサンヒタ』と『スシュルタサンヒタ』の両方が、伝染病の一般的な病態生理学を説明し、それによるとCOVID-19によるパンデミックの概念は次のように理解されます。

原因の根元は「アダルマ」

「アダルマ」とは不道徳・不義・不均衡・不当という意味で、空気・水・土地などの破壊に関する行為、気流空気の乱れ、電力(熱)、産業公害、軍事活動関連の公害、戦争、自動車・航空部門関連の公害、政治・権力の乱れを指します。

  • 河床からの砂の採掘、ダムなどの無秩序なせき止め
  • 海底の汚染による水域生態系の撹乱
  • 急速で大規模な都市化
  • 環境を害する材料やプラスチック・殺虫剤・人工肥料などの非分解性有毒物質の使用
  • 公害による山・森林・生態系の破壊
  • 生態系の破壊による動物・植物・鳥などの生命体の破壊
  • 鳥動植物達を自然の生息地から追いやる行為

人類によるこうした行為は、自然のバランス力を乱し、異常な気流、サイクロン、洪水、季節外れの雨などといった極端な気象条件を引き起こします。

パンデミック以前からみられたアマゾン(野生)の森林の破壊、山火事によるオーストラリアやアメリカ西海岸の森林の破壊、世界で観測される異常気象、多発する地震、季節外れの豪雨は「警告 」として捉えることができます。

気流・季節の不規則性や土地および水の生態系の悪化は、人間の「ドーシャ」の悪化を誘発し、同じ病気に対する集団感染を引き起こし、食用植物にも影響を与えます。したがって栄養価が低下し、栄養不足につながるということです。

これが代謝の鈍化を引き起こす原因因子と組み合わさると、新型コロナのような感染症につながります。このまま是正措置が取られない場合、将来的にこのような伝染病が繰り返され、パンデミックが長引くことが懸念されます。

3つの「ドーシャ」

ドーシャとは、身体を流れるエネルギーで、全ての人の構成は「ヴァータ(3)」「ピッタ(4)」「カパ(5)」という3つのエネルギーによって定義付けられます。ドーシャを通じて全ての生物にみられる5つの生命の構成要素(空・風・火・水・土)が現れ、私たちの様々な体質が生まれると説いています。

3つのドーシャがどのように、また、どのような割合で現れるかによって私たちはそれぞれの個性を持ちます。各ドーシャそれぞれの特徴を解説いたします。

<図>3つのドーシャ

ヴァータ

空気と空間を結び付け、エーテルとも呼ばれている身体エネルギーです。 変化・可動性・運動へのリンクがあります。結腸、骨盤内臓器、大腿、皮膚、耳、神経系、肺などを支配し、心と体の動きを司っています。 感覚インパルス、呼吸、排泄、発話および血液循環が主な機能の一部です。また、体内の消化の「火」であるアグニを点火します。

ピッタ

主に火と僅かな水で構成される身体のエネルギーで、消化の調節・免疫・代謝・体温に関連しています。小腸、胃、肝臓、脾臓、胆嚢、血液、汗腺、皮下脂肪、目、皮膚を支配しています。心と体の安定、体温調節、消化、食欲減退、吸収、同化、活力、理解力などが主な機能です。食物の消化に重要なアミノ酸や酵素を運ぶことで体に栄養を与え、思考に関与する神経伝達物質と神経ペプチドも保持します。

カパ

水と土を含む身体エネルギーです。凝集・構造および潤滑へリンクし、骨、筋肉、腱にあります。細胞を保つ「結合剤」として機能し、体の潤いを保ち関節を滑らかにします。また、皮膚に潤いを与え、免疫力を維持して体を安定させます。

新型コロナに対するアーユルヴェーダ的視点

アーユルヴェーダでは、ウイルスや細菌が存在したとしても、主に体内のドーシャが損なわれない限り、人間のシステムに病気として発現することはないと考えます。

現代医学では新型コロナがウイルスによって引き起こされると考えられていますが、アーユルヴェーダの文献にある観点からみると、それは“二次的なもの”と捉え、病気の発現は宿主因子または不均衡ドーシャが増加した時のみと考えます。

これは同じウイルスが全ての病気を引き起こしているにも関わらず、人により症状が異なることにみられます。病気を発症しても一部は無症状、ほとんどは軽度の症状で、重度の症状にいたるのはごく僅かであるという事実によって実証されています。

私たちが強く感じているのは、それらの違いは不均衡ドーシャの状態によるということです。

新型コロナの場合、ヴァータドーシャとカパドーシャの不均衡が原因と考え、特にヴァータ−カパを誘発する食生活・年齢(高齢者)・高血圧・Pedophilia obsessive-compulsive disorder(POCD)・糖尿病・気管支喘息・免疫不全のような基礎疾患がある場合はより多くのリスクがあり、予防の重要性を強調しています。



『新型コロナとアーユルヴェーダ〜Timeless Science of Life〜【後編】』は、1月20日(金)に配信予定となっております。お楽しみに!





<参考文献・ウェブサイト>
・https://www.who.int/health-topics/coronavirus
・https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/specific-groups/high-risk-complications.html
・https://www.sinobiological.com/resource/cytokines/cytokine-storm
・https://www.newscientist.com/article/2236846-coronavirus-risk-of-death-rises-with-age-diabetes-and-heart-disease/#ixzz6GfBjpJh1
・https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30566-3/fulltext
・https://healthykidshappykids.com/2020/02/27/coronavirus-covid-19/
・Pediatrics International Volume 42 Issue 2 Page 197 - April 2000.
・Charaka Samhita, - (Ca. Ci. 3/), (Ca. Ci. 18/), (Ca. Ci. 17), (Ca. Vi. 3/5 ), (Ca. Sa. 1/101), (Ca. Su. 27/311), (Ca. Ni. 1/28), (Ca.Vi. 7/9), (Ca. Su. 11/45), (Ca.Vi. 7/9), (Ca. Su. 11/45) Su. Su. 46/126), Susuruta Sanhita (Su. Sa. 46/127-128), (Su. Ni. 6/33-34)
・Karta Purkh Singh Khalsa & Michael Tierra.: the way of Ayurvedic Herbs. First Edition 2008; 978-0-9409-8598-8
・Pole, Sebastian.: Ayurvedic medicine: the principles of traditional practice / Sebastian Pole.
・Originally published: Edinburgh : Churchill Livingstone/ Elsevier, 2006; 978-1-84819-113-6 (alk. paper)

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