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“forgotten electrolyte(忘れられた電解質)” マグネシウムが足りなくなると起きること

体内には様々なミネラルが存在していて、その中の1つに「マグネシウム」があります。

なぜここでマグネシウムを取り上げるのか、疑問に思う方もおられるかもしれません。確かに、職場で行われる健康診断では血中マグネシウム濃度は測定すらされません。一般的な血液検査で最も頻回に測定されるのは、ナトリウム、カリウム、塩素です。次いでカルシウムとリン、その次がやっとマグネシウムといった具合です。

では、そんなマグネシウムを取り上げる価値はあるのでしょうか?しかし、実はマグネシウムは600以上の体内の代謝に関わっていて、なんと既知の代謝のうち80%に関係しているとも言われています。

ですから、マグネシウムが足りなくなると体の様々な部分、例えば心臓、呼吸器、脳、内分泌などに不具合が起こります。マグネシウムは“forgotten electrolyte(忘れられた電解質)”と呼ばれており、重要度が低いミネラルと誤解されているようです。

低マグネシウム血症になるとあらわれる症状

マグネシウムが足りなくなった状況でまず思い浮かぶのが教科書にも載っている「低マグネシウム血症」です。低マグネシウム血症は、マグネシウム不足の状態を指します。これは血清マグネシウム濃度が下がってしまう状態ですが、症状として傾眠、ふるえ、手足や全身の筋肉のけいれん、不整脈などがあげられます。

※傾眠とは、意識状態が下がり眠ってばかりいる状態のこと。強い刺激によって目を覚ますもののまたすぐ眠りについてしまう。短時間ならば合目的的な行動も可能である。もっと強ければ嗜眠(しみん)、さらに強くなると昏睡となる。

以上が「低マグネシウム血症」で起こる症状です。

マグネシウム不足が様々な症状を誘発する可能性

上記以外に、体内のマグネシウムが不足している場合に起こり得る症状の例を列挙します。

  1. 心冠動脈疾患
    :マグネシウム欠乏が冠動脈疾患とアテローム性動脈硬化のリスク増加に関連していることが多数の研究により示されています。

  2. 不整脈
    :上室性期外収縮(心房起源)・心室性期外収縮(心室起源)の発生頻度は、30日間のマグネシウム経口投与で明らかに減少します。

  3. うっ血性心不全
    :血清マグネシウム濃度の低値はうっ血性心不全のリスクを独立して高めることが示されています。

  4. 高血圧
    :マグネシウムは多数の高血圧のリスクファクターを調節する重要な役割を果たしています。

  5. 糖尿病
    :日本とアメリカにおいて、食物からマグネシウムを多量に摂取することで糖尿病になるリスクが減少することが示唆されています。

  6. メタボリック症候群
    :低マグネシウム食はメタボリック症候群の発生を増やし、高マグネシウム食はメタボリック症候群の発生を減らすことがわかっています。

  7. 偏頭痛
    :頭痛に加えて視覚あるいは聴覚の異常、一時的な神経学的な障害がみられる場合があります。これは慢性的に高まった血管の緊張が急激に弛緩した際に生じるウォッシュアウトによる症状と考えられます。マグネシウムは自然に収縮していた血管をリラックス(血管拡張)させ、酸化ストレスを減少させます。

  8. うつ
    :成人の軽度から中等度のうつ病に対して、マグネシウム投与は明らかに有益であることが示されています。

  9. てんかん
    :痙攣発作活動の誘発を観察する細胞モデル・組織モデルにおいて、確実に発作活動を誘発する1つの方法は、細胞・組織を低マグネシウム状態に暴露することです。(てんかん発作を起こしやすいモデルでは、低マグネシウム状態になるとてんかんの発作を誘発することができるということ)

  10. 気管支喘息
    :血清マグネシウムが低値の気管支喘息患者は、正常のマグネシウム濃度の患者に比べて肺機能が大きく劣っています。また、マグネシウム濃度が高ければ喘息は進展しにくく、発症しても症状が出にくくなります。

  11. 骨粗鬆症
    :食物によるマグネシウムの摂取量が非常に多い人は、非常に少ない人と比較して事実上骨折が少ないことが示されています。また、閉経から2年以上経つ女性にマグネシウムを投与した群では、骨折の減少と著明な骨密度の上昇の双方が観察されています。

  12. 生殖
    :妊娠高血圧腎症(妊娠20週以降に発症した高血圧で蛋白尿を伴うもの)、下肢痙攣、早産はマグネシウム減少群に明らかに多くみられます。

 

先に述べたように、マグネシウムは既知の代謝のうち80%に関与しているため、不足に伴って非常に多彩な症状が起こり得ます。血清マグネシウム濃度の正常値は0.7〜1.05 mMの範囲とされていますが、そもそも血液中のマグネシウムは体内の総量の1%と言われており、全体のごくごく一部分しか血中には存在しません。

最初にあげた低マグネシウム血症の症状は「明らかなマグネシウム欠乏状態」です。しかしながらその局在を考えると、血清マグネシウム濃度は正常なのに体内のマグネシウムは不足している状態、いわば「潜在的な欠乏状態」が起こり得ます。当然ながらこうした「潜在的な欠乏状態」も、上に列挙した症状のリスクとなることが予想されます。