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どうする?医者が脳卒中になった時

薮から棒ですが、私は3年前に脳出血になり、利き腕を含む右半身に麻痺が残りました。一般的に、脳出血による麻痺は「発症後半年で改善は止まり、その後は症状が固定する」と言われています。実際に私もそのように主治医から説明を受けました。

でもそれ、本当でしょうか?

私は脳・神経は専門外ですが、自分の経験から「半年以上経過しても改善が続く人もいる」と信じています。なぜなら、そう、私自身が発症から3年経った今でも改善し続けているからです。

本稿では“栄養素人”だった(である?)私が、入院以後採用した様々な方法を紹介し、素人臭くレビューしてみたいと思います。第1回はツカミを兼ねて、入院当初の話と栄養療法の基礎とも言える「リーキーガット」を皆様と一緒に見てみたいと思います。

入院して気付いたこと

さてさて、病気を患って入院し驚いたのが、病院食の栄養素の偏り具合です。というのも見事に炭水化物ばかりで、それこそスパゲティのおかずで白いごはんを食べさせられそうな勢いです。これはヤバい。

心の声 :「オイ!本当にカロリー計算しかしてないだろ?! 」(※個人の感想)

これでは絶対に良くならない。「俺の片麻痺、治るのだろうか」と不安に思いました。そして予感は見事的中し、現在も不自由しています(身体障害者です)。もちろん、食事だけが原因ではないと思いますが。

そんな私が入院当初からとった対策の1つが“小麦抜き”を病院に依頼することでした。

医師として独立し25年、その間、病院に行ったことなどありませんでした。メニューの偏り具合には閉口しましたが、一方で今時はこんなことまで頼めるのかと感心しました。

「小麦抜き(=グルテンフリー)」はなぜ良いのか?

病院にお願いしたのは小麦抜きですが、それはグルテンを体内に入れないようにするためです。グルテンは「リーキーガット(=腸の透過性の亢進)」を引き起こす原因になります。

リーキーガットによって起きる症状は以下のようなものです。

  • 肩凝りなど、筋肉の緊張
  • 逆に力が入らないといった脱力系の症状
  • 鼻炎や目のかゆみ、アレルギー
  • 眠気
  • 思考が暗くなる

人によっては、これらの症状を「ホンマカイナ」と思っておられるようですが、これらは全て私自身がかつて経験した症状です。そしてグルテンフリーの実践によって、私はこれらの症状からも解放されました。

ですから、「ホンマカイナ」と思っているそこのあなたも、一度チャレンジなさってみてはどうでしょうか?自分で当たり前と思っている体調が、実はグルテンフリーで楽になるかもしれませんよ。

なぜ、グルテンでリーキーガットが起こるのか

グルテンによってリーキーガット(=腸の透過性の亢進)が起こる仕組みは、以下のように説明されています。

腸粘膜表面の細胞の間隙は、タイトジャンクションと呼ばれる構造をしています。これは読んで字の如し、細胞と細胞が“タイト”に“ジャンクション”(結合)し、外部からの異物の侵入をコントロールしているということです。

タイトジャンクションは腸粘膜・皮膚・血液脳関門に存在しますが、これはつまり異物の侵入をコントロールしなければいけない場所に存在するわけです。

グルテンはグリアジンとグルテニンからなる分子です。グルテンが腸透過性を更新させる仕組みですが、グルテンを摂取するとグルテンに含まれるグリアジンが細胞表面のCXCR3という受容体と結合します。

これにより、細胞はMYD88(シグナル伝達に関与するタンパク質)を介してゾヌリンというタンパク質を産生し、細胞内外に放出します。さらにゾヌリンはPAR2とEGFRを介してタイトジャンクションを変化させます。

ジャンクションが「タイト」ではなくなるわけです。すると当然、その隙間から高分子が流入し、様々な症状を引き起こしていくのです。

グルテンフリーへの挑戦

自分自身がグルテンフリーによって恩恵を受ける体質かどうかを知るための方法があります。それはズバリ2週間のグルテンフリーを厳密に実践した後、グルテンを再び摂取してみることです。

この場合、「厳密に」実践する必要があります。小麦を減らしてみた、程度ではほぼ何もわからないと思います。そして2週間後に食べてみることこそ、最も重要な実験なのです。

グルテンフリー実践後の私を襲った悲劇

さて、何を言っているのかよくわからないという方のために、文字通りの実験例を挙げてみましょう。私の場合は、こんな感じでした。

今から約10年前(脳出血を起こすよりもずっと前、健康な頃)のこと。妻は「明日から一緒にやるで!」と、嫌がる私にも2週間のグルテンフリーを強要してきました。抵抗することも許されず敢えなく陥落、チャレンジすることになりました。

私自身は我慢しただけでたいした努力はしていませんが、食事を準備する側は大変です。当時、妻は家庭内の醤油まで変えて厳密に行ったようです。(注)

そして2週間後。妻は、当時大好物だった近くのパン屋さんのパンを買ってきました。喜んでムシャムシャ食べた約30分後、エラいことになりました。

  • 肩や首の強烈な凝り
  • 目を開けていられないほどの眠気
  • 凄まじい量の鼻水
  • 手から力が抜けた感じ・脱力感

これらの症状が一気に私に襲いかかってきたのです。パンを食べるまで全く感じていなかったのに、です。同時に、以前から悩まされていたこれらの症状が、小麦をやめてからいつの間にかなくなっていたことにも気付きました。

「肩こりも花粉症も、食後に眠くなるのも、小麦のせいだったのか・・・」

ショックでした。そうしてこの日から、私はパンが大嫌いになりました。妻も同様にショックを受けていましたが、当時花粉症がなかった彼女は、私ほどグルテンフリーによる恩恵は受けなかったようです。

ですので、花粉症に悩んでいてグルテンフリーを試したことのない方には是非チャレンジしてみていただきたいです。




(注)

厳密に言うと、醤油の中の小麦グルテンは分解されているので、醤油は構わないとする意見もあります。しかし、私は醤油まで変えた方が良いと思っています。その理由は、グルテン以外の悪いものの問題です。

特に外国産の小麦にリスクが高いのですが、例えば農薬・遺伝子組み換えのために体調に悪影響を及ぼす可能性があります。グルテンフリーにチャレンジする最大の目的は「体調を良くすること」のはずですから、とりあえず小麦を全部抜いてみることで付随する問題まで全て除去できます。

そして体調が良くなりさえすれば、自分に合わない要素は何か、少しずつ探していくことも可能です(体調が悪いままだと不可能です)。こういった理由から、厳密にはフリーになったのはグルテンでなかったとしても、完全な“小麦抜き”が良いと考えています。

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