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新型コロナワクチン副反応・後遺症の実態 ②今後の課題とは

新型コロナワクチン接種後の様々な体調不良(以下「ワクチン副反応・後遺症」)に関しては、以下のような病態が指摘されています。

・免疫の異常と炎症
・神経機能の異常
・血管内の微小血栓
・栄養と代謝の異常
・自然免疫力の低下

このうち、免疫異常を背景とした神経接合部の炎症と神経伝達物質の欠乏が要因となり、各種の神経機能異常が引き起こされます。この病態に対しては、免疫および炎症を制御し、神経伝達物質の原料ならびに補酵素となるアミノ酸やビタミン・ミネラルの補給が重要な治療となります。

神経以外にも心筋や肺、消化管など全身各組織で炎症が発生しますが、この場合もやはり免疫の制御と抗酸化アプローチが求められます。さらに血管内微小血栓が形成される病態に対しては、EPA(エイコサペンタエン酸)の補給などの抗血栓アプローチが重要です。

一方で、各種の漢方薬やイベルメクチンなどもワクチン副反応・後遺症の治療に臨床応用され、一定の治療成績を挙げています。ただし、実際に治療を行っているクリニックは非常に少なく、また、広く知られておりません。そのため、一般の病院で治療を受けられなかった方が、一部の診療可能なクリニックに集中しているのが現状です。

そこで筆者らは、ワクチン副反応・後遺症の診療が可能なクリニックをネット上で探し出せる検索サイト「コロワク治療ナビ※」を開発し、運用を開始しました。また、ワクチン副反応・後遺症の病態や治療に関して学術的な情報共有を行う「後遺症治療研究会」を発足し、討論を開始しました。

これらの取り組みを通して、ワクチン副反応・後遺症の病態解明や治療法の確立を図り、また、日本全国津々浦々で治療を受けられる体制づくりを目指しております。

ワクチン副反応・後遺症治療における現状の課題

前回の「新型コロナワクチン副反応・後遺症の実態①臨床症状について」では、新型コロナに対するmRNAワクチン(以下「新型コロナワクチン」)接種の普及に伴い、様々な種類の体調不良(以下「ワクチン副反応・後遺症」)に見舞われる事例が多数発生しており、重篤例や死亡例も相次いでいるとお話ししました。

また、その症状は全身倦怠感、ブレインフォグ(思考力や集中力、記憶力の低下)、動悸・息切れなど多岐にわたります。意を決して病院を受診しても、検査では異常がないため「治療法はない」という理由で、医療機関を転々とする事例が多くなっている現状についてもご説明しました。

それでは、本当にワクチン副反応・後遺症の原因は不明であり、治療法もないのでしょうか。実は少数ながら、ワクチン副反応・後遺症の診療に従事しているクリニックは存在します。筆者のクリニックもその1つですが、毎日のように診察の依頼が入っている状況です。

とはいえ、そのようなクリニックはまだまだ少ないのが現状で、名の知れた医師が在籍するクリニックには遠方からも診療に訪れる方が後を絶ちません。さらに、様々な理由で直接来院できない方に向けた「オンライン診療」を取り入れているクリニックには、各地方ばかりか海外からの診察予約も入っています。

診療可能なクリニックが希少であるという事情もあり、その存在は現時点においてほとんど知られていません。ワクチン副反応・後遺症に苦しむ方々はネット検索や口コミなどを頼りに診療可能なクリニックを探し出し、藁にもすがる思いでクリニックの門を叩くのです。

現場で実際に行われている治療のご紹介

該当クリニックでは実際にどのような治療が行われているのでしょうか。それを説明する際には、前回解説したワクチン副反応・後遺症の病態を改めて考えてみることで、それぞれの治療法の意義について理解しやすくなるかと思います。

ワクチン副反応・後遺症の病態は一見して複雑ですが、整理すると以下の要素が挙げられます。

  • 免疫の異常と炎症
  • 神経機能の異常
  • 血管内の微小血栓
  • 栄養と代謝の異常
  • 自然免疫力の低下

つまり、これらの病態の解消が治療の目標となります。

前回もご紹介しましたが、2002年から流行したSARSではME/CSF(筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群)の病態が注目を集め、その後研究が進められてきました。これは免疫異常を背景に神経組織の炎症が発生し、様々な神経機能異常を引き起こす病態です。

そして、新型コロナにおいても「ブレインフォグや歩行障害、めまい、動悸などの自律神経障害は、МE/CSFが関与しているのではないか」と多くの専門家が指摘しています。このМE/CSFをいかに制御するかが、ワクチン副反応・後遺症を克服するための大きなカギといえます。

МE/CSFでは、主として「神経接合部」が障害されやすいことが指摘されています。運動神経や自律神経などの神経伝達物質受容体に炎症が発生し、セロトニンやアドレナリンなどの神経伝達物質の欠乏を招き、様々な神経機能の異常をきたすのです。

その病態を改善させるために、1つには免疫異常と炎症を制御する治療が求められます。一方、この病態では活性酸素の増加による酸化ストレスが亢進するため、体内の「抗酸化力」を向上させる治療法が不可欠となります。

免疫を正常化して炎症を抑える治療と、抗酸化力を向上させる治療とは、実は共通点が多くあります。例えば、ビタミンCやビタミンDなどの各種ビタミン、グルタチオンなどの抗酸化成分の投与は、この2つの病態に対して改善を期待できる治療法です。

さらに神経機能回復のためには、神経伝達物質の原料となるタンパク質や各種アミノ酸、補酵素となるビタミンB群や鉄をはじめとする各種ビタミン・ミネラルなどを十分に補充する必要があります。これはオーソモレキュラー栄養療法の手法です。

なお、免疫異常および炎症は神経組織の他にも心筋や肺、内分泌組織、消化管、生殖器など全身各所で発生し得ます。こうした病態に対しては、上記のような抗炎症・抗酸化に適した栄養成分を補充することが非常に重要な治療となります。

また、血管内微小血栓の問題があります。ワクチンに含まれるスパイクタンパクの影響により、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な血栓症が発生する可能性があると言われていますが、それに対しては例えばEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3系油脂の補充が有効な治療法の1つとして挙げられます。

ワクチン副反応・後遺症治療においては、漢方薬も活用されています。漢方薬は条件を満たせば保険適応となるため、経済的な事情で高額な治療を受けられない方であっても、大きな負担なく治療を受けられるという現実的なメリットがあります。

症状や体質によって選択される漢方薬は様々ですが、例えば、めまいがある方に対しては「五苓散」など使用される場合が多いです。ただし、ワクチン副反応・後遺症の場合、免疫力を調整するなどの狙いから、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などが積極的に選択される傾向があります。

ワクチン副反応・後遺症に対する治療として特徴的なものの1つとしては「イベルメクチン」が挙げられるでしょう。元来、疥癬(かいせん:ダニが皮膚に寄生することで生じる痒みを伴う皮膚の病気)などの寄生虫に対する薬剤として使用されていましたが、此度の新型コロナウイルス感染症にも顕著な効果を現すことが判明し、世界中で広く臨床応用されています。

イベルメクチンにはそれだけでなく、ワクチン副反応・後遺症の諸症状に対しても効果を示すことが、国内外の医師から数多く報告されています。イベルメクチンの作用機序に関しては未だよくわかっていない故に賛否両論あるものの、期待を持てる治療法の1つといえます。

厳しい現状を打破するために始まった2つの取り組みと今後の展望

しかし、先ほども申し上げたように、ワクチン副反応・後遺症に対する治療を行っているクリニックは大変少なく、厳しい実情です。その上、クリニック間ではシステマティックな情報共有や患者紹介、症例検討などの活動がほとんど行われていないのも現状です。

そのため、ワクチン副反応・後遺症に苦しむ人々は、一般の病院で治療を断られ続けた挙句、ようやく数少ない診療対応のクリニックにたどり着き、順番待ちの長い列に並ぶことになるのです。何故、もっと身近なクリニックで治療を受けられないのでしょうか。

そのような厳しい現状を打破すべく、筆者らは2つのことに取り組み始めました。その1つとして、ワクチン副反応・後遺症の診療に従事するクリニックをネット上で簡単に探すことのできる検索サイト「コロワク治療ナビ」を開発し、今年3月から運用を開始しました。

この「コロワク治療ナビ」では、クリニックの所在地域や診療科、希望する治療内容などのキーワードを入力することで該当するクリニック一覧が表示され、ホームページなどの詳細な情報が閲覧可能です。5月末時点で全国の50ほどの施設が登録されています。

2つ目の取り組みとして、ワクチン副反応・後遺症の病態や治療法に関する医師間の学術的な情報共有を行う「後遺症治療研究会」が発足しました。今年3月から診療を実施している、あるいは関心のある医師100名以上が集まり、定期的なZOOM討論の場を設けています。

「後遺症治療研究会」の継続とレベルアップにより、ワクチン副反応・後遺症における病態の解明や治療法の確立を図り、また、前述の「コロワク治療ナビ」を広く普及させることで、全国の津々浦々でワクチン副反応・後遺症の治療を受けられる体制づくりを目指しております。





・「コロワク治療ナビ

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