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漢方と生活習慣改善

この記事の執筆者

氣生薬局

漢方歴27年! 豊島区南大塚で漢方の氣生(きお)という薬局を経営。 私の家は医療一家です。私は三女として産まれ、父(他界)は日本赤十字乳児院の院長、母は薬剤師。長女は歯科医。次女は、眼科医(専門医) ... [続きを見る]

漢方薬が現代でも未だに保険適応処方として根付いているということは、どれほどのことでしょうか。

その答えは「東洋医学と西洋医学の違い」、そして「東洋医学が得意とするところ(未病の概念)」にあると考えます。幾千もの時代を超えて来た東洋医学はいつの時代にも取り沙汰されており、時代背景や環境とともに我が国においても日本漢方として鎮座しています。

東洋医学と西洋医学の違いから学ぶ

西洋医学的な考えでは、その「部分的症状」や「数値」のみに注目します。一方、東洋医学的な考えでは、その「原因」や「もたらされる不調和」に注目するという違いが見て取れます。下の表は、様々な角度から両者を捉えた上でまとめたものです。

<表>西洋医学と東洋医学の特徴


これまで私が漢方に携わってきた27年の間、しばしば処方の添付文書を読み返すことがありますが、症状の羅列はさることながら、その前置きには一癖あります。例えば皆さんもご存じの、風邪を引きそうで背中がゾクゾクした時に用いる処方として有名な葛根湯の添付文書を参考にみると、下記の記載がされています。

自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:

感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中 耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、 じんましん》(以上、葛根湯添付文書(株式会社ツムラより引用))

このように「証」を謳ってから症状が書かれているのです。そもそも“風邪を引く”といいますが、これは風の氣が身体に悪影響を及ぼす邪に変化し、その邪を身体に引き入れるところからきています。つまり、素因となる事柄がストーリーを持っているということです。

ところが、西洋医学で風邪を引いたといえば「あなたの風邪はどこから?喉?鼻?熱?」といった区分けがされ、各々に奏功する成分でシリーズ化されたセルフメディケーションとしてのOTC医薬品に辿り着きます。

葛根湯のように、身体を温めて熱を発散することで邪を身体の深いところまで引き込まずに症状を緩和していく根治治療の使い方と、いわゆる風邪薬と呼ばれている対症療法の西洋薬とでは、使い方や考え方が全く異なります。漢方では、その人のその時・その症状に合わせての処方が体質の不調和を改善していくという見方をするのです。

食事と生活環境から考える食養生

「成人病」と呼ばれていた病気が時代の移ろいとともに「生活習慣病」へ呼び名が変わったのは、記憶に新しいかもしれません。当初、成人病と呼ばれた所以は、加齢に伴い発症・進行すると考えられていたところにあります。

しかし、その後の研究から、成人病の要因には食生活・飲酒・喫煙・運動習慣・休養習慣などが大きく影響していることが判明し、「生活習慣病」と言われるようになりました。とりわけ幼少期からの生活習慣の基盤が要因となり発症するケースが多いように見受けられます。

日本人の肥満の基準で判定すると、アメリカなどでは成人の約2/3が肥満となり、さらに両親が肥満の場合には子どもは80%の確率で肥満になるとも言われています。ありがたいことに日本は食文化に優れており、薬膳の概念はそこかしこにあります。また、発酵という技術が根付いていることもあり、農耕民族で腸の長い日本人にとって、今や流行りの「菌活」はなくてはならない食習慣と言えます。

今日ではバイオなどの多大なる研究により1年を通してあらゆる野菜を味わえるようになりましたが、その季節にとれる土の付いた野菜には身土不二(しんどふに)の考えのもと、地元の旬の食品や伝統食が身体に良いという意味で健康を養うための理論も展開されてきました。

つまり、生活習慣における食習慣には四季を持つ日本で季節のモノを口に運ぶことも重要な点なのです。食習慣が理由で発症する疾患は、糖尿病・肥満症・高脂血症・高血圧症・大腸ガン・歯周病など多岐にわたります。コンビニ食においても添加物等の改善はなされるものの、自然界から頂くエネルギーを持つ食べ物には到底及ばないと言わざるを得ません。

 “未病”と“体質改善” は漢方が得意とするところ

日本の西洋医学では、病院での診察で病名が定まらないと薬の処方は出ません。ところが、東洋医学には“未病”という概念が存在します。この未病については、2000年ほど前の中国最古の医学書の一つ『黄帝内経』に記載があり、未病とは病気に向かう状態をあらわします。書物には「未病を捉えて治すことが出来る人物が医療者として最高の聖人である」と記されています。

<画像>古典書『黄帝内経』


日本未病学会では、 (1)自覚症状はないが検査では異常がある状態 と (2)自覚症状はあるが検査では異常がない状態 を合わせて“未病”としています。自覚はないのに定期健診などの数値から病を疑い、再検査を行うなどして病名が付き病気が発見される訳ですが、その逆で怠さや煩わしさを感じる場合でも検査値の異常がなければ病気として扱われないということになります。

「このまま放置していればいずれ病気になる」という時点で予防することへの意識付けができていれば、病気にならずに済むことも十分に考えられます。この部分に東洋医学は精通しており、食事や生活習慣を見直すことが可能です。

体質の改善をするということは、その未病の状態が長く続き麻痺しているために「怠い煩わしい」が当たり前の症状だと誤認識している状態を改善することにあると考えています。

これはつまり、体質は習慣によって作られている可能性が否めず、習慣を変えることこそが体質改善の第一歩になるということです。