<画像>粘膜上皮細胞における細胞間接着とビタミンC・ビタミンD・亜鉛の関与(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2020.606398/full)
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体内への新型コロナの侵入を防ぐ“三銃士”、ビタミンC・D・亜鉛
2022年3月に出版された統合医療の専門誌「Townsend Letter」の4月号で、新型コロナウイルスと栄養療法について、アラン・ガビー氏(アメリカで最も著名な栄養療法医)が総説を書いています。その中で、ガビー氏は次のように述べています。
「これまでの長い歴史の中で、ウイルス疾患にビタミンCなどの栄養素が有効であるエビデンスをいくら示しても、メインストリームの医師たちは無視し続けました。今回の新型コロナウイルス感染に高濃度ビタミンC点滴やビタミンD、亜鉛などが有効であると結論付ける研究結果は多数出ています。
しかし、製薬会社や政治的な巨大な力とマネーによって現実の医療は間違った方向に向かっています。ここで人間が本来持っている能力を高める自然療法に目を向けるべきです」
そして、彼はこう断じました。
「国がビタミンC、ビタミンD、亜鉛の研究に対して資金を投じていれば、コロナによる死亡者を減らし、医療費を節約することもできたでしょう」。
ウイルスなどの侵入から体を守るバリア「細胞間接着装置」
人間の気道、口腔から腸の表面にある粘膜上皮は、毒物・細菌・ウイルスが侵入する際の最初の物理的なバリア(障壁)となります。新型コロナウイルスはエアロゾルで空気中から口腔内や鼻粘膜の上皮細胞表面のACE2受容体から侵入します。コロナウイルスによって汚染された食べ物についても同様であり、口腔粘膜や腸管の粘膜組織のバリアが脆弱だと粘膜上皮細胞の間隙から血液中に侵入します(画像―右)。
このバリアを構成しているのが隣同士の粘膜上皮細胞を強固に接着する細胞間接着装置で、健常であればウイルスの侵入を許しません(画像―左)。
この細胞間接着装置は、
1.細胞同士が接着する表面のシールの役割を担っている「タイトジャンクション(密着結合装置)」
2.アクチンフィラメントで細胞同士を結合させる「アドへレンスジャンクション(接着結合装置)」
3.さらに強固に機械的な結合をさせる「デスモゾーム(接着結班装置)」
という3つの接着装置から構成されています(画像―中央)。
ウイルス侵入を防ぐ粘膜細胞のバリア強化にビタミンC・ビタミンD・亜鉛が果たす役割
3つの接着装置は、お互いに協同して働いています。そして、これらの細胞間接着装置のバリア機能を維持するためには、栄養素が十分に保たれていることが必要です。もし、必要な栄養素の欠乏が生じると構造が脆弱となり、バリア機能が低下してしまいます。
その中でもビタミンC・ビタミンD・亜鉛は、相乗効果により接合部複合タンパク質の構造や機能を維持しています。それでは各栄養素の役割をみていきましょう。
亜鉛の役割
ウイルス性腸炎で下痢を起こすと、粘膜上皮の亜鉛の欠乏が生じ、タイトジャンクションの機能を低下させてバリアの透過性を高めてしまいます。この場合、亜鉛を投与することでタイトジャンクションの接着分子タンパクであるクローディンの機能と構造を改善させ、透過性を改善します。
亜鉛の低下は気管支粘膜上皮のアドへレンスジャンクションの細胞骨格を脆弱にし、好中球などの炎症性細胞の通過を容易にし、炎症を拡大させてしまいます。
このように、感染に伴う炎症初期の段階において、亜鉛は細胞間接着機能に大きく関わっています。
ビタミンCの役割
ビタミンCも亜鉛と同様に、細胞同士を結合するシール機能の維持に必要です。
炎症性のフリーラジカルはバリア機能の低下を起こしますが、ビタミンCはフリーラジカルを消去し、タイトジャンクションの細胞骨格を形成する蛋白質を保護します。結果として、過剰な電解質イオンの透過性を修復します。
ビタミンDの役割
ビタミンDは、タイトジャンクションとアドへレンスジャンクションの接着分子タンパクのクローディンやオクルーディンの発現により、過剰な電解質イオンの透過性から保護しています。
バリア機能を高めてウイルスの侵入を防ぐ
このようにビタミンC・ビタミンD・亜鉛は、細胞同士の接着を維持するために大切な役割を担っています。3つの栄養素が相乗的に粘膜上皮細胞のバリア機能を高めており、これらの欠乏はバリア機能を低下させてウイルスの侵入を容易にしてしまいます。
ビタミンC・ビタミンD・亜鉛は日本人に不足気味であり、ビタミンDに至っては約70%の人が低下〜欠乏状態となっています。日常的にこの3つの栄養素を補給することで、新型コロナウイルスをはじめとする様々なウイルスや細菌の侵入から体を守ることが期待されます。
2020年1月、中国の武漢で新型コロナウイルス感染が明らかになってから1ヶ月後という早い段階で、国際オーソモレキュラー医学会は「新型コロナ感染および重症化の予防には、ビタミンC・ビタミンD・亜鉛・セレン・マグネシウムの摂取を推奨する」と発表しました(表)。
この時、日本はまだダイヤモンドプリンセス号の一件が起きる前で、ニューヨークでパンデミックが起きたのはそれから1ヶ月後のことです。新型コロナウイルスのみならず、様々なウイルスや細菌の侵入から守るためのビタミンC、D、亜鉛の摂取量に関しては、この時の推奨量に準じて良いと考えます。
摂取量の目安をお伝えすると、私は日本人の成人であれば1日量として、
- ビタミンC:2g
- ビタミンD:2,000 IU (50µg)
- 亜鉛:20mg
を推奨しています。
<表>国際オーソモレキュラー医学会が推奨する新型コロナウイルスの感染予防の栄養素
<写真>アラン・ガビー医師
(Alan G. Gaby: Editorial-The silver lining that could have been. Townsend Letter 2022: April:80.)
<参考文献>
・Alan G. Gaby: Editorial-The silver lining that could have been. Townsend Letter 2022: April:80.
・Name JJ et al. Zinc, Vitamin D and Vitamin C: Perspectives for COVID-19 With a Focus on Physical Tissue Barrier Integrity. Front. Nutr., 07 December 2020 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2020.606398/full
・Zihni C, Mills C, Matter K, Balda MS. Tight junctions: from simple barriers to multifunctional molecular gates. Nat Rev Mol Cell Biol. (2016) 17:564– 80. doi: 10.1038/nrm.2016.80 https://www.nature.com/articles/nrm.2016.80
・Asakura K et al: Vitamin D status in Japanese adults: Relationship of serum 25-hydroxyvitamin D with simultaneously measured dietary vitamin D intake and ultraviolet ray exposure Nutrients. 2020 Mar; 12(3): 743https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32168939/
・駒井三千夫: 日本人における亜鉛摂取量の現状と摂取基準. 亜鉛栄養治療6巻1号, 4-11, 2015 https://kenkyuukai.m3.com/journal/FilePreview_Journal.asp?path=sys%5Cjournal%5C20151207173919-4306467A888B69D8387AD0D2EE8FDDB85F741EAD08EB0816B27C73198F6F377C.pdf&sid=738&id=2091&sub_id=35763&cid=471
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