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食べ過ぎない味付け

この記事の執筆者

デンタルスタジオ・ラグフォーム新百合ヶ丘

大学卒業後、高齢者医療と美容医療を平行して取り組むことで、加齢による顎顔面の機能・形態変化の若返りを主眼とした治療を行う様になる。

自己紹介

寒いのが苦手です。

腹筋との出会い

数年前の出来事ですが、とある高齢の方のお宅に往診した際にそれは起きたのです。

訪問診療というものは、治療が終わるまでは毎週患者さんのお宅にお伺いします。大抵は同じ曜日の同じ時間に訪問しますので、かなりの確率で皆さん同じドラマを見ていらっしゃるのですよね。人気のあるドラマだと次のお宅でもその番組の続きが流れています。そのため、診療しながらドラマの筋がわかってしまうこともしばしば。やはり根強い人気を誇るのは刑事物ですね。これでもかというほど多くの方が毎週ご覧になっています。

そして、同じくらい人気があるのが韓流ドラマです。これも果てしなく永続的に皆さんご覧になっております。そうです、まさに数年前のあの日も患者さんはいつもの韓流ドラマを見ている最中だったのです。私が部屋に入ると、韓国俳優がちょうど着替えているシーンで、サラっとシャツを格好良く羽織る所でした。その時の彼の綺麗に割れた腹筋を見て、『これだ!』と私は心の中で叫びました。

(当時の私は、西洋人のような筋肉質な体型に憧れ、増量しながらの筋トレに励んでいました。)
この瞬間にアジア人の特性を活かした“細く引き締まった筋肉質な身体”に作り変えようと固く決意したのです。

(「そんなことよりも診療に集中しなさい」という声が聞こえてきそうです。)

迎えた転換期、そして減量計画

元々、増量しながら筋トレをしておりましたので、かなりの大食です。例えば友人と焼肉の食べ放題に行った際には、1人で同じ肉を28皿食べ続けた時点でお店から「食べ放題時間の終了です!」と宣言されるなど、さながらフードファイターのような生活を送っていました。そんな私が、筋肉量はなるべく落とさず20kg減量するといった目標を立てることは、これまで行ってきた身体作りとは真逆とも言えるため、かなり難しい取り組みでした。

一筋縄ではいかない理由としては、肥満体型による減量ではないので食べなければ良いという訳でもなく、食事メニューも“高タンパク低糖質食”を既に取り入れ、十分な運動も行っていたからです。そのため、まずは綿密な身体作りのスケジュールを長期に渡って組みましたが、これは大変時間のかかる作業でした。そこで、私はこの計画を『盆栽づくり」と呼んでおります。私自身は盆栽を育てた経験はありませんが、盆栽は「大変な手間と時間をかけて形を作っていく」という話を聞いたことがあります。それからは腹筋も盆栽のようなものか、と毎日腹筋をなでています。

減量計画の中で一番苦労したのは、大食いと早食いを止めることです。この2つをやめるために数多くの試みを行いましたが、それは各食材についての別記事にてお話しさせて頂きます。本日は実践して一番効果があった食べ過ぎない味付けについてお話しいたします。

なぜ食べ過ぎるのか

少し話が逸れますが、今日ではインターネットの動画投稿サイトというものがありますよね。多くの方が、ご自身の動画を投稿することで様々なジャンルの映像が日々生み出されています。私も時々こういった動画サイトを見るのですが、ある日たまたま目に留まった動画がありました。その内容は、「ファストフード店のハンバーガーのパテ(肉や魚等のハンバーガーのメインとなる具材)なしで食べた場合の味を評価する」というものです。

この動画の結果として注目したのは、高評価を獲得した“具なしハンバーガー”は共通してソースの味が濃かったという点です。逆に低評価をつけられたハンバーガーはソースが少ないタイプのハンバーガーでした。興味深いのは、同じパテでもソースの味が濃いハンバーガーほど高評価であったことです。つまり“パテ本体の味よりもソースの味が美味しさの決め手になっている”ということです。

この動画を見てハッとしたのですが、そもそも私たちは食材が持つ本来の味を味わっているのでしょうか。改めて日常的に口にする食材を思い浮かべてみますと、料理や加工品と名のつくものに味付けが施されていないものはありません。逆に言えば、味付けが加えられて初めて食材から料理へと呼び名が変わります。つまり私たちは、どのようなジャンルのものであれ料理を口にする度に調味料を口にし、その味を楽しむことで食事をしたと認識していることになります。

一般的に「甘いものは別腹」という言葉もあるように美味しいものはいくらでも食べられますが、苦手な食べ物にはなかなか箸が進みません。私も同じく美味しいものから沢山食べてしまうので、そもそも味に依存するほど美味しいと感じさえしなければ早食いや大食いには歯止めがかけられそうです。例えば、舌についてお話しすると、味覚を感じる舌の表面の細胞は3週間から4週間で生まれ変わります。

この時、口腔内に存在する味覚は濃い味に慣れていれば薄味に対しては鈍くなります。ということは、少しずつ薄味にしていけば次第に濃い味を好まなくなり、味に依存しない食生活を送ることができるのではないかと考え、今では可能な限り調味料を減らしたメニューに置き換えています。

次に早食いを改善する必要があります。短時間で食事をすると血糖値も急激に上昇します。早食いを抑えるには、咀嚼に時間をかけることがポイントになります。日常の診療においても患者さんから「歯が悪いので柔らかいものを食べた方が良いですか?」と聞かれることがあります。その度に「現代食は不必要に柔らかいものが多いです。現代食が噛めなくなるというのは、かなり深刻な状態ですので治療が必要というサインですよ。」とアドバイスをしています。

ここでいう不必要な柔らかさとは”食べた時に歯に付着する”柔らかさです。自然界に生きる動物は当然歯磨きを行いませんが、虫歯や歯周病にはなりません。また、古代人や伝統食を主食とする民族は、虫歯や歯周病とは縁遠いことが史実や統計学からも証明されています。ところが、現代食を食べるペットや人間は食後に食べたものが歯に付着します。歯を磨く必要性はそのために生まれたのです。

つまり、自然界に存在するオリジナルの食材は歯につかない硬さということになります。そのような硬さの食材を口にすれば自ずから早食いはなくなると推察されます。これまでお伝えしたことをまとめると、“味が薄く、日本の古来からある硬さの食材で手軽に手に入るもの”を探す必要があります。

減量食としてのキャベツ

“味が薄く、日本の古来からある硬さの食材で手軽に手に入るもの”。やはり最初に思い浮かべるのは野菜です。もちろん、生もしくは蒸し野菜で味付けは行いません。食べ始めこそ慣れませんでしたが、今ではその野菜本来の甘みを感じられるようになり、毎食必ず季節の野菜を素材のまま数種類味わっています。

中でも私が一番食べているのはキャベツです。キャベツはカロリーが低く手頃な価格であるのに加え、栄養面ではビタミンやミネラルを豊富に含んでいます。また、外食する場合でも大抵のお店で取り扱いがあります。外来種ではありますが日本古来からあるアブラナ科の野菜です。食感もしっかりしていて、大食漢の私でも流石にキャベツを一度に何玉も大量に食べることはありません。

キャベツに含まれる不溶性繊維質は腸内細菌の働きを助けますし、LDLと呼ばれるいわゆる「悪玉コレステロール」との腸内結合により、悪玉コレステロールが血中に入り体内の隅々へ運ばれるのを防いでくれます。さらにキャベツにはLDLに似た植物ステロールが多く含まれています。本来であればLDLを吸収するところで、身体がLDLの代わりに植物ステロールを吸収します。その結果、体内でのLDLの吸収を更に抑えてくれますから減量の効率も上がります。

そう考えるとトンカツの付け合わせのキャベツやロールキャベツは理にかなった食べ合わせと言えます。しかもアブラナ科であるキャベツには不溶性繊維質だけでなく抗炎症作用や抗酸化作用も豊富で、発癌物質を解毒する酵素の働きを助ける物質と言われる辛味成分のグルコシノレートも含まれています。

さらに、キャベツにはビタミンCや骨の形成に必要となるビタミンKも豊富です。カップ1杯の刻んだキャベツを食べるだけでビタミンCやビタミンKの1日の必要量の85%が摂れます。ちなみにタンパク質は、キャベツ1玉を芯まで丸ごと食べることで約13g摂取可能です。タンパク質13gというのは、鶏胸肉量で示すならば60g程ですから、もしキャベツのみからタンパク質を得ようとするとかなりの量を食べる必要があり現実的ではありません。私の場合はタンパク質の摂取というよりは減量後のメンテナンスという意味合いで1日200g程のキャベツを食べ体型を安定させています。

アンチエイジング食としてのキャベツ

キャベツの魅力についてお話ししてきましたが、私は紫キャベツも好んで食べています。見た目の鮮やかさもさることながら中身も素晴らしく、紫キャベツには強力な抗酸化物質であるポリフェノールの1種アントシアニンがキャベツの倍以上含まれています。紫キャベツに多く含まれるアントシアニンは細胞内の酸化ストレスを著しく低下させ、細胞死であるアポトーシスの頻度を減らし細胞の生存率の改善に貢献します。しかも、アントシアニンは胃酸によって分解されることなく安定した状態を保ったまま体内に吸収されます。

米国ではアントシアニンの摂取により血圧が下がり心臓病のリスクが低下することが確認されています。さらに体の代謝や肝機能の改善にも効果が認められており、II型糖尿病由来の肝臓の合併症である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防にもなると言われています。また、紫キャベツは通常のキャベツよりもビタミンCが30%以上豊富ですから、まさに天然の”食べられる美のパッケージ商品”とも言えるでしょう。

私はこの美の源であるキャベツを主菜や他の副菜と一緒にサラダ感覚で食べています。そうすることで、主菜や副菜の味も自然に薄くなりますし食べ過ぎも防げます。また、調味料を一切使用しない野菜スープを毎日食べていますが、ここでもキャベツは登場します。キャベツを用いることで、食べ過ぎない味付けの料理を手軽に作れます。

食べ過ぎない味付けとは、「食べ合わせを工夫して薄味にしていく」ということです。私の場合、朝はキャベツをベースにした野菜の煮込みスープ、夜は朝と同じスープに加え、副菜の一品としてお皿いっぱいのキャベツを食べています。(キャベツに限らず、生野菜を食べる時には食中毒にならないように良く洗い流してから召し上がってください。ジョージア大学の研究では、キャベツについたサルモネラ菌や大腸菌は3週間以上経っても毒性を失わないことが証明されています。リスクを避けるためにもキャベツの表面の葉は食べずに捨てるもしくは蒸す等して食べるのが安心です。)

まとめ

減量後、野菜生活ならぬ“キャベツスープ生活”を2年間続けました。その間、体重を記録していましたが、満足感を得られるまで食べても体重が増えることはありませんでした。食欲は以前とさほど変わらないものの濃い味を好まなくなったので、無性に何かを食べたくなる衝動に駆られることはなくなりました。そして、今でも菜食中心の生活を送ることができています。

毎週の筋力トレーニングに関しても、以前と変わらず問題なくこなせておりますので、減量による筋力低下の影響も少ないことが伺われます。身体作りを行う上で大切なことは、ストレスになるような急激な食事制限は行わないことです。食事量を減らす前にまずは自分がつい食べ過ぎてしまう嗜好品をピックアップしてみましょう。食事の内容を変えていくことが、ストレスレベルを上げずに身体作りを継続できる効果的な方法だと私は思っています。





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