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本当に問題ないのか?新型コロナワクチン接種後の心筋炎―心臓病専門医が感じる疑問

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学医学部内科助教授を経て、2000年〜2008年同大学保健学部救 ... [続きを見る]

2021年2月、我が国では医療従事者を対象として新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの先行接種が開始しました。続いて高齢者への優先接種、その後全ての成人を対象に接種が行われています。

さらに2021年10月から12〜19歳の若年層、2022年3月からは5〜11歳の小児、同年10月からは6ヶ月〜4歳の乳幼児まで接種対象年齢が引き下げられました。そして、日本では2023年2月までに延べ約3億8千万回の接種が行われたのです。

このような接種事業が国策として進められている一方で、様々なワクチン副反応や後遺症が報告されています。本稿では特に若者に多くみられるワクチン接種後の心膜心筋炎について、心臓病専門医である筆者の立場から述べたいと思います。

心膜心筋炎を引き起こす原因

心膜心筋炎の原因は①感染性の場合 と、②非感染性 の場合があります。

先進国における感染性心膜心筋炎に関しては、その大半がウイルス性です。最も一般的なウイルス性の原因は、パルボウイルスB19とヒトヘルペスウイルス6型です。

非感染性の原因としては心毒性物質、特定の薬剤、一部の全身性疾患などがあります。薬剤によって引き起こされる心筋炎は過敏性心筋炎と呼ばれます(画像1)。

新型コロナワクチンによる心筋炎のメカニズムについては、ワクチンに含まれる脂質ナノ粒子とRNA成分双方による過剰な自然免疫の活性化により引き起こされる可能性が示唆されているものの、明確にはわかっていないのが現状です。

<画像1>心筋炎では心臓に局所あるいはびまん性の炎症を生じる


ワクチン接種後の心膜心筋炎は、主に10代の男性でワクチン接種後1週間以内、典型的には2回目接種で発症し、入院後1〜5週間ほどで心機能が回復します。

心臓病の専門医が集まる日本循環器学会では「ワクチン接種後の心膜心筋炎の大半は軽症である」「ワクチンを接種することの利益は危険性を上回る」と声明を出し、新型コロナワクチンの接種を推奨しています。筆者はこの考えに疑問を持っています。

接種後の胸痛は心膜心筋炎の可能性も?認定事例件数と今後の懸念点

ワクチン接種後の心膜心筋炎の診断は、以下によって確定されます。

  1. 胸痛や息切れなどの症状
  2. 心筋の炎症を特異的に検出する血中トロポニンTの測定
  3. 心臓超音波検査や核磁気共鳴画像法(MRI)による形態ならびに機能異常の検出

厚生労働省(以下厚労省)は、新型コロナワクチン接種後の健康被害について調査を行っています。厚労省の審査会では2023年1月23日までに約6000件の申請を受理し、1459件の健康被害を認定、そのうち37件の認定事例は若年男性の急性心筋炎・心膜炎でした。

強い胸痛や息切れが生じた際、心臓専門医であれば心膜心筋炎の発見は容易いですが、軽度の胸の症状で心臓専門医を受診する方は多くはないでしょう。また、現在の集団接種会場において積極的に心膜心筋炎を発見・診断する体制があるとは思えません。

申請件数の70%が未審査であること、さらに今後も申請数が蓄積されていくことを考慮すると、実際の心膜心筋炎の発症数は報告された数よりもはるかに多く、数百倍以上にも及ぶ可能性があります。そして、海外ではこうしたリスクを示唆する論文が報告されています。

中高生の接種後心膜心筋炎を調査(タイの論文より)

2022年8月、タイの国立マヒドン大学医学部の研究チームから一石を投じる論文が発表されました(写真1)。

<写真1>研究を実施したタイの国立マヒドン大学医学部附属病院

対象者と調査内容

同研究チームは、2つの学校(中高一貫校)の13〜18歳の健康な学生301人(男性202人、女性99人)を対象に、新型コロナワクチン2回目の接種前・3日後・7日後・14日後における自覚症状、血圧、 脈拍、心電図、心臓超音波検査、心臓バイオマーカー(トロポニンT、CPK-MB、CRP、血沈)などのデータを収集しました。

心血管系症状の中でも発症率が高い症状

収集データを解析したところ、ワクチン接種後に生じた心血管系の症状は頻脈・動悸から心筋炎など301人中88人(29.24%)の学生に認められました(表1)。

<表1>中高生のワクチン接種における心血管症状の発症率

そして、7人(2.33%)の学生が少なくとも1つの心臓バイオマーカーの上昇あるいは心電図、心臓超音波検査で異常所見を示しました。さらに5人の学生は心筋の炎症に特異性のあるトロポニンTが上昇していました。

最も多くみられた症状は胸痛、次いで胸部不快感、発熱、頭痛でした。胸痛とバイオマーカーの上昇を呈した13〜18歳の3人の学生は、接種24〜48時間後に症状が表れていました。4名の学生はトロポニンTが上昇(ピーク値15.44-38.68 ng/L,正常値<14 ng/L)していたものの無症状でした。

心筋炎は接種後に1人発症し、集中治療室で加療を受けました。この学生は亜急性心筋炎に一致する所見(心臓の側壁で非虚血性遅延増強、下側壁で心膜増強が認められるが心筋浮腫は認めない)が得られました。

接種5ヶ月後の心臓のMRI検査では、心筋浮腫、心筋遅延性増強、心筋線維化を認めませんでした。心膜炎が疑われた学生は2人、潜在性心筋炎が疑われた学生は4人いました。3人には非ステロイド系抗炎症薬が投与され、全例とも14日以内に異常所見が消失しました。

激しい運動は厳禁、ワクチン接種後の注意点

先に述べた研究結果をまとめると、中高生301人が2回目のワクチン接種を受けたことで心筋炎1人、不顕性心筋炎4人、心膜炎2人の合計7人に認められています。少数の母集団の観察研究とはいえ、2.3%(7/301)というのは余りにも高い頻度です。

集団接種後、積極的に追跡調査を行っていない日本では、多くの見逃し事例が発生している可能性が否めません。

私はアメリカ心臓病学会のフェロー(専門医)で、長年に渡り心臓病の臨床と研究に携わってきました。そして、今回のワクチン接種後に発症する心筋炎については、危険性が潜んでいると考えています。

心膜心筋炎は発症後に軽快しても、将来的に心不全や不整脈、突然死のリスクを抱える重大な疾患です。軽症だからといって漫然と放置していい病気ではないことは、心臓病専門医からみれば常識です。

2000年から2009年にかけて行われたデンマークの調査では、14294例に及ぶ突然死のうち6%が心筋炎による死亡であったと報告されています。私は若年者に新型コロナワクチン接種を推奨していませんが、接種した場合には十分に注意する必要があります。

  1. ワクチン接種後2週間は、激しい運動は禁止しましょう。もし心膜心筋炎を起こしていた場合、運動することで悪化する可能性があります。
  2. 接種後2〜3日以内に血液中のトロポニンTの測定を推奨します。そしてトロポニンTが増加した場合には、3回目以降のブースター接種は禁忌です。ワクチンを繰り返すことでより酷い心筋の障害を引き起こす恐れがあります。この点に関しては、国の施策として実施してほしいと考えています。
  3. 仮に心膜心筋炎を起こしても、多くの場合は軽症で回復します。しかし、心筋のダメージによる不整脈の誘発を考え、数年単位での定期検査を推奨します。

新型コロナワクチンによる顕性あるいは潜在性心膜心筋炎は若者の2%、100万人を超えているのではないかと考えています。私は日本の心臓専門医がこの事実を正視し、若者の未来を守る対策を始めていただきたいと願っています。





<参考文献>

・Mansanguan S et al. Cardiovascular Manifestation of the BNT162b2 mRNA COVID-19 Vaccine in Adolescents. Trop.Med.Infect.Dis.2022,7(8),196;https://www.mdpi.com/2414-6366/7/8/196

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